閉鎖的な医療ネットワークをmoconaviを使って業務効率化を実現。複数台持ちのPHSからスマートフォン1台へ
公立西知多総合病院(病床数468床)は、東海市と知多市の2つの市民病院が統合して2015年に誕生した公立病院です。地域医療を支える中核病院として、住民の医療に対してデジタル技術を活用した業務効率化と医療の質向上を推進しています。
同院は2026年2月に「moconavi」を本格導入。ナースコール受信用と通話用で複数台持ち歩いていたPHS端末をスマートフォンに統合しました。同時に24時間稼働する病院特有のシフト勤務に対応し、共有端末のセキュアな個別ログインを職員のIDカードを使ったNFC認証で実現。
さらに、moconaviの「中継アプライアンス」を活用し、インターネット経由で閉域網となる医療情報システム(HIS)へ高画質な患者の画像データをセキュアに直接取り込める自作カメラアプリをスクラッチで開発するなど、他にはない最先端の医療DXを形にしています。同院の企画管理課DX推進室の伊藤俊輔さま、田﨑涼馬さまに、導入の背景、選定の理由、導入効果や今後の展望を伺いました。
── はじめに、西知多総合病院が「moconavi」の導入を検討するに至ったきっかけと、以前使用されていたPHS環境において、現場で発生していた課題について教えてください。

公立西知多総合病院 企画管理課 DX推進室 田崎さま
田﨑さま:当院では長年、院内連絡の手段としてPHSと固定電話を使用してきました。しかし、昨年中にPBX(電話交換機)が更新時期を迎えることになり、「これを機にスマートフォンへ移行してみてはどうか」という検討が本格的にスタートしたのが最初のきっかけです。
伊藤さま:従来のPHS運用には、いくつかの大きな課題がありました。特に看護師の負担が非常に大きかったです。というのも、当院ではPHSでナースコールを受信する設定にしていたのですが、それとは別に医師や他部署との通常連絡用に別のPHSを持たなければなりませんでした。そのため、1人の看護師がナースコール受信用と通話用、さらに別の連絡用など、2台も3台もの端末を身体にぶら下げて動き回るという状況が常態化していたのです。
しかも、「通話中にナースコールが鳴ってしまうと、通話より優先される(=結果的に会話に支障が出る)」といったシステム上の制約もあり、物理的にも業務フロー的にも非常に効率が悪く、現場の負担になっていました。スマートフォンへ移行するからには、これらの課題をクリアして何とかして1台に統合したいという現場からの強い要望がありました。
── スマートフォンへの移行プロジェクトにおいて、一般企業とは異なる「病院ならでは」の特別な要件やハードルもあったのではないでしょうか。
田﨑さま:病院特有のハードルとして立ち塞がったのが「共有端末」の運用と「マルチユーザー切り替え」の必要性でした。当院には常勤職員が1,000名弱おり、その全員に1人1台のスマートフォンを支給するのはコスト的にも管理面でも現実的ではありません。
特に病棟の看護師は、日勤や夜勤などのシフト制で働いています。そのため、昼間の最も人数が多い「最大稼働数」に合わせた数の端末を用意し、それを交代で共有して使い回すのが基本となります。また、ナースコールは端末そのものに紐づいて鳴る仕組みのため、端末を完全に個人固定にしてしまうと、その人が非番の際にもナースコールが鳴り続けてしまうといった不都合が生じます。
つまり、「端末そのものは病棟の共有物として使いながら、ログインする看護師のアカウントはシフト交代のタイミングでセキュアかつスムーズに切り替わる」という仕組みが、クリアしなければならない必須要件でした。
── スマートフォンの採用を決定した後、代替となるサービスやアプリの選定プロセスにおいて、他のシステムとの比較検討はどのように行われましたか?
田﨑さま:代理店さんからいくつかのサービスを紹介していただくなかで、最初は病院向けに特化したシステムなども検討しました。
実際に複数のサービスを比較検討しましたが、当院で想定している予算内に収まるか、必要としている機能は含まれているか、将来の院内システムの拡張性に対応できるかを含めて総合的に検討しました。
また、導入検討の前提に端末はiPhoneを予定しておりました。iPhoneで動作するチャットアプリも検討しましたが、そちらはメッセージの文字数制限があるなど、業務用のチャットとして使うには機能的に寂しいと感じ、最終的にmoconaviが当院の要件に一番合っていると感じました。

公立西知多総合病院 企画管理課 DX推進室 伊藤さま
── 最終的に数あるサービスのなかから「moconavi」の採用に至った決め手は何だったのでしょうか?
田﨑さま:moconaviの電話帳機能「moconavi Contacts」を知り、なんと私たちが期待していた「出退勤のステータス管理機能」が標準で備わっていることが分かったのです。これは採用の大きな決め手になりましたね。
伊藤さま:他にも要件としていた「デバイスの複数人共有」と「ログインユーザーの切り替え」についても、moconaviはしっかり応えてくれる仕組みでした。病棟の共有端末では「NFC認証」を活用すればNFCカードをかざすだけで自分のアカウントに瞬時にログインできます。
一方で、1人1台を専用で持つ医師などのユーザーに対しては「顔認証」を許可するなど、利用者の職種やデバイスの持ち方に合わせて柔軟にポータルログインの方法を設定できる点が、病院の運用にベストマッチしていました。
また、医療情報を扱う以上、強固なセキュリティは譲れない要件です。moconaviは、端末内に一切のデータやファイルを残さないシンクライアント設計であるため、万が一スマートフォンを紛失してしまった場合でも、情報漏えいのリスクが大幅に軽減されるという心理的安全性も非常に高く評価しました。
── 2026年2月の本格稼働から現在に至るまで、moconaviの導入によって医師や看護師の業務やコミュニケーションにはどのような変化がありましたか?
伊藤さま:最大の成果は、懸念されていたナースコールの1本化が成功し、スマートフォンの1台持ちが実現したことです。これにより、看護師が何台もの端末を抱えて動く必要がなくなりました。
また、moconaviのビジネスチャットにより、コミュニケーションのあり方が大きく変わりました。医療現場では、看護師から医師への業務連絡が頻繁に行われますが、従来のPHSでは「終わったことをただ伝える」という一方通行の業務報告であっても、その都度、医師に直接電話をかけて口頭で伝える必要がありました。
それがチャットによりテキストベースでやり取りが行えるようになったことで、医師側は自分のタイミングでメッセージを確認でき、看護師側も「電話をかけて相手の時間を遮ってしまう」という気遣いから解放されました。不要な呼び出し電話が減少するとともに、チャットの活用が進み、双方の業務負荷やストレスの軽減にもつながっています。
また、病院は非常に多くの専門職員が働く「多職種連携」の組織です。これまでは、手書きのメモや紙の印刷物、あるいは口頭のみで引き継がれていたような業務連絡が、テキストとしてチャットに残るようになったことで、言った・言わないのトラブルや伝達ミスが減り、業務品質そのものの向上にも寄与しています。
── 中継アプライアンスを介したグループウェアとの連携について、具体的に現場でどのように活用され、どのような利便性を生んでいるのか教えてください。

田﨑さま:意思決定のスピードも飛躍的に向上しました。病院内には非常に多くの「委員会」や「検討チーム」が存在しており、会議の予定を1つ決めるだけでも、医師、看護師、事務方など全員のスケジュールをすり合わせるのが極めて困難でした。
これまでは電子カルテ用PCの前に座り、メッセージツールを開いて確認するしかありませんでしたが、moconaviの「中継アプライアンス」を経由して、会議室や移動中であっても手元のスマホから院内グループウェアのカレンダーにアクセスし、その場でカレンダーの確認や予定調整のチャットをグループに一斉送信できるようになりました。
カレンダーとグループチャットの連携により、合意形成が信じられないほどスムーズに進むようになっています。
── さらに、今回は伊藤さまがご自身で「カメラアプリ」を自作してmoconaviと連携させていると伺いました。この開発に至った経緯や、画期的な画像保存のプロセスについてお聞かせいただけますか?
〈公立西知多総合病院様におけるmoconavi環境構成図〉
伊藤さま:はい、自分でスクラッチからWebカメラアプリを開発しました。
病院の基幹情報システムである電子カルテ(HIS)は、セキュリティを担保するために、外部のインターネットとは完全に遮断された「閉域ネットワーク」内に設置されています。そのため、スマートフォンで撮影した患者さまの患部や症状の写真をHISに取り込むのは非常に面倒なプロセスが必要でした。
以前は、専用のデジカメで撮影した後、許可されたPCにUSBを接続して手動で取り込んだり、他システムの画像送信機能を使いBluetoothドングル経由で送る方法などを試していましたが、Bluetooth経由だとデータが圧縮されてしまい、30KB程度の低画質な写真しか取り込めないという物足りなさがあり、一部の診療科から改善要望がありました。
そこで、moconaviの「中継アプライアンス」の仕組みに無限の可能性を感じ、これを利用できないかと考えたのです。moconaviのセキュアなインターネットゲートウェイを通じて、中継アプライアンスを介し、閉鎖されたHISのなかに直接データを通す連携アプリを作りました。
具体的な使い方は非常にシンプルです。看護師や医師がスマホでmoconaviブラウザからこの自作アプリを起動し、患者さまの患者番号を入力するか、リストバンドのバーコードをカメラでスキャンします。そのままカメラで患部などを撮影した写真は「保存」を押すだけで、LTE回線経由で院内の閉域ネットワーク内にある病院ファイルサーバーへ、高画質な画像ファイルがセキュアに直接保存される仕組みを実現しました。
撮影した画像を確認し、患者データに紐づけて保存する画面
また、撮影機能と併せて、院内で患者単位に画像を管理する「患者アルバム」も実現しました。電子カルテシステムでカルテを開くと、患者と関連付けられた撮影画像を一覧表示する仕組みです。医療安全の向上や利便性の向上に貢献できることを期待しています。
「外部から閉域ネットワークへ、セキュリティを担保したままセキュアに入り込める」というmoconaviの特長をフルに活かした、当院独自の画期的な医療DXツールだと思っています。
撮影した画像を患者情報と紐付けて業務システムへ登録
── 素晴らしい取り組みですね。今後の課題はありますか?
田﨑さま:現在の課題は、院内チャットの普及率がまだ5割以下に留まっている点です。どうしても従来の「電話をかける文化」や「電子カルテPC内でのメールやり取り」が根強く残っているため、より多くの職員が自発的にmoconaviのビジネスチャットを活用するよう推進していく必要があります。
そのためにも、グループチャットをもっと活性化させたいと考えています。今までは管理・セキュリティ上の懸念から、グループの新規作成権限を特定の担当者のみに厳しく制限していました。しかしその状態だと、現場が「こういうグループを作って話したい」と思っても、すぐに作成できず活用が進まないというジレンマもあります。
そこで、チャットの促進・活性化を推進し、病棟の役職者や各種委員会の事務局担当者に対して、グループ作成権限を大幅に拡大する運用変更を予定しています。これにより、現場発信のコミュニケーションがさらに活発化することを期待しています。
── 最後に、今後moconaviに期待している機能や、西知多総合病院としてのさらなる医療DXのビジョンについて教えてください。

伊藤さま:今後はさらに、多職種間の連携に加え、シフト勤務を前提とした情報共有や意思疎通をより円滑に行えるような活用について、レコモットさまと相談しながら模索しています。
一般的な企業では「特定の個人」に連絡するのが当たり前ですが、病院の現場では日々変化する勤務体制の中で、必要な情報を適切に共有し、円滑なコミュニケーションを図ることが求められます。
そうした医療現場特有のコミュニケーションニーズにも対応できるようになれば、多職種間の連携がさらに強化され、医療業界におけるスマートフォン活用の可能性が一層広がると期待しています。
当院にとって「moconavi」は、単なるリモートアクセスツールではなく、閉鎖的な医療ネットワークとモバイルの世界を安全につなぎ、無限のアイデアを形にできる「医療DX推進のコアインフラ」です。これからも現場の声を大切にしながら、より革新的で、より安全な医療環境を追求していきます。
※HIS:Hospital Information System(病院情報システム)の略
※導入事例取材時期2026年6月
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