ビジネスチャットの活用で、セキュアに患者に寄り添った在宅医療を実現
愛媛県四国中央市のHITO病院。急性期病棟のほか、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟などの複数機能をもった急性期ケアミックス型病院として、地域の医療を担っています。
2017年に院内でスマートフォンを導入し、Cisco Webexのメッセージ機能や音声認識アプリのAmiVoiceを活用するなど、医療業界でDXを積極的に推進している同院。2020年にはmoconaviを導入して院内の医師と、訪問看護やケアマネジャーなど病院外の在宅スタッフとのモバイル端末によるセキュアなコミュニケーション環境を構築しました。
導入前に抱えていた訪問看護の課題や、moconaviを選んだ理由、導入後の効果について、同院、総合診療科 医長 五十野桃子さま、地域医療介護連携課 主任 遠藤健介さま、DX推進室CTO 佐伯潤さま、にお話を伺いました。
── はじめに、moconaviを使っている在宅診療のサービスの流れや組織体制について教えてください。
遠藤さま:当院で入院していた患者さんのなかで、退院後も再入院のリスクのある方、医療依存度が高いないしは介護度が高い患者さんに対しては、訪問看護や訪問介護を他の事業者に依頼する場合があります。その際は当院の主治医を中心に、外部の看護師さんやケアマネジャーさんのお力も借りながら、チームで患者さんをケアしていきます。
── 外部事業者と連携して在宅診療を行う患者さんとは、例えばどのような方でしょうか?
五十野さま:ガンの患者さんなどです。特に看取りを迎える終末期の方は症状の変化が頻回ですので、診療を行う私たち医師と、訪問看護、ケアマネジャー、介護士など在宅スタッフさんとの連携がとても重要になります。
── moconaviを導入する以前、在宅医療のサービス提供でどのような課題がありましたか?
佐伯さま:ドクターと外部スタッフとの「コミュニケーション」に課題を感じていました。以前は電話がコミュニケーション手段の中心でしたが、ドクターは診察や手術などで常に動いているので、なかなか電話に出ることができません。また、訪問看護を行う外部スタッフの方からすると、患者さんを目の前にしながら電話では話せない内容もあり、結果として情報交換にタイムラグが生じてしまう状況が常態化していました。また、コミュニケーションがうまくいかない要因として、院内のドクターと外部スタッフとの間にある“見えない壁”も影響していたと思います。
── ドクターと外部スタッフの間にあった“見えない壁”とは…?
遠藤さま:「病院のお医者さんに声をかけづらい」という雰囲気…これは当院に限ったことではなく、医療現場特有のものだと思います。特に外部スタッフの方もドクターの忙しさを知っているので、「電話をして先生の仕事に割り込んでしまわないか…」と考えてしまう人は少なくないはずです。
五十野さま:訪問看護をしている方が患者さんに一番近い存在なので、お薬の飲み方や体調の変化などについて、患者さんから直接相談を受けることも多いでしょう。本来であれば、そうした話は私たちドクターにも伝えて欲しい、訪問看護側はドクターに伝えたいところですが、以前は電話以外に手段がなく、遠慮がちなこともありました。外来のタイミングで患者さん本人やご家族から「先生、実は…」と相談を受け、もっと早く知っていれば(悪化せずに済んだのに)と思うこともありました。逆に、外来で患者さんやご家族の方に伝えたことが訪問看護のスタッフさんまで正しく伝達されず、自宅で適切なケアがされていないということもあったのかもしれません。
── 訪問看護でのコミュニケーション課題の解決に向けて、どのような策を検討しましたか?
佐伯さま:チャットツールの導入を考えました。2018年から院内のスマートフォンでチャットツールを使い始め、ドクターと看護師とのやりとりが円滑になっていたので、外部とのコミュニケーションも改善されるだろうと考えたんです。
── チャットツールの導入に向けて、仕組みを検討するうえで重視したことはありますか?
佐伯さま:何よりも「堅牢なセキュリティの仕組み」が約束されていることです。患者さんの個人情報を扱う医療機関として、システムの導入を進めるうえでセキュリティをどのように担保するかが大きなテーマになります。手っ取り早いという理由で、個人のスマートフォンを使ってLINEでやりとりしてしまうというケースも耳にしますが、これはシャドーITと言って、安全管理上問題があります。
病院が用意した端末を外部の事業所に支給してチャットツールを利用するという方法もありますが、これもやはりセキュリティのリスクがあり、コスト面でのハードルもあります。そこで選んだのが、外部の事業所が所有する業務用端末を持ち込みデバイスとして許容する形式での、いわゆる「BYOD」と呼ばれる手法でした。moconaviは多要素認証で端末を特定し、管理者が許可した端末だけが共有のチャットにアクセスできるので、セキュアなBYODが実現できます。
── 「多要素認証による端末の特定」の仕組みがmoconaviを選んだ決め手ということでしょうか。
佐伯さま:そうですね。moconaviのほかに、医療業界特化型のコミュニケーションツールもあり、そちらも検討しましたが、IDとパスワードでどの端末からもアクセスできるという利便性の高さが、逆にセキュリティの観点では我々が求める要件から外れてしまいました。
また、使い方が難しかったり、機能が多かったりするシステムだと、外部のスタッフさんに対して説明が必要になりますし、運用のルールも決めなければいけません。moconaviは高いセキュリティ性に加えて、ビジネスチャットツールとしてのシンプルな操作性や機能性も魅力的でした。
── 現在のmoconaviの運用方法について教えてください。
佐伯さま:まず、moconaviを使い始めるために、訪問看護を行う外部の事業所さんに説明をします。そこでご理解と許可をいただいてから、使用する業務用端末をお借りしてこちらでmoconaviをインストールし、ビジネスチャットにアクセスできるようにしてお渡しします。設定作業はすべて当院で行うので、事業者さんの手間はかかりませんし、IDやパスワードが外部に漏れる心配もありません。
同時に事業所との守秘義務契約書も交わしますし、患者さんにもしっかりと説明をして、同意書にサインをいただいたうえで使用していきます。
遠藤さま:ちなみに、すべての訪問看護の患者さんでmoconaviを使っているわけではありません。特にドクターと外部スタッフの連携が必要な患者さんに対して、ご本人やご家族から了承を得たうえで、患者さんごとにチャットのグループを作成して関わる人がやりとりしています。
── moconaviの導入により、在宅医療サービスはどのように変化しましたか?
五十野さま:医師として、外部のスタッフさんとのやりとりが圧倒的にスムーズになりました。外来や入院診療の診断や手術の合間でメッセージを確認してすぐに返事ができ、情報交換のタイムラグがなくなったと思います。特に「写真」を多用していて、とても便利です。例えば、患者さんのお家にどれくらいお薬が残っているか、口頭や文章で伝えてもらうのは一手間ですが、机の上に並べて撮影したものをチャットに添付してもらえれば一目瞭然です。皮膚の症状なども、写真で送ってもらうことでより正確な判断ができるようになりました。おかげさまで、moconaviを使い始めてから電話がかかってくるのは本当に緊急のときだけになり、かつ情報共有はmoconavi導入前よりも密になりました。
遠藤さま:外部スタッフの方からも、moconaviのビジネスチャットを使うようになってから、ドクターに相談しやすくなったという声は聞いています。些細なことでも気軽に質問できるようになり、患者さんに対してより良いケアができるようになりました。また、以前だと、訪問中にドクターに相談できない内容は、一度持ち帰って電話をするというケースがありましたが、そうしたこともなくなったと聞きます。
── moconaviのビジネスチャットで外部スタッフとの連携が密になったということは、医師の立場からすると「コミュニケーションの時間が増えた・負荷が上がった」という側面もあるのでしょうか?
五十野さま:そのような捉え方もできるかもしれませんが、医師と外部スタッフの方の連携が崩れることで患者さんが家にいたいのに再び入院してしまったり、ちょっとした情報共有ができたら未然に防げたことが起きて、状態悪化してしまうことが一番不幸なことです。特に終末期の患者さんは、入院せずになるべく家族とお家で過ごせるようにさせてあげたいというのが、私たちの想いです。
moconaviを使い始めてから、患者さんが在宅で亡くなられたときに、訪問看護の看護師さんからこんなメッセージをいただきました。
これは医療に関わる者として、本当に喜ばしい言葉でした。moconaviを導入して新しく生まれた外部の方とのコミュニケーションを、これからも大切にしていきたいです。
── ありがとうございました。最後に、HITO病院さまの今後の展望などをお聞かせください。
佐伯さま:五十野先生が話したように、患者さんにより良いケアを提供していくことが我々病院の使命です。そのためには、やはり「病院DX」が喫緊のテーマ。その第一歩として始めやすいのが、スマートフォンやチャットツールの導入だと思います。moconaviを使うことで院内と外部とのコミュニケーションが劇的に変わったことは、今日お話しした通りです。
今後はさらにmoconaviを活用してもらう外部の事業者さまを増やすとともに、クリニックなど、他の医療機関にも広げ、地域全体で「コミュニケーション」を軸に医療の質を高めていきたいです。
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