【堀田秀吾 × レコモット東郷】コロナ禍で従業員が「メンタルヘルスの不調」に陥る3つの原因
- 投稿日:2022 - 9 - 28
- 更新日:2022 - 11 - 1
リモートワークが企業に浸透するなか問題視されているのが、従業員のメンタルヘルスに関する課題。
その解決は個人に任せるのではなく、企業として向き合っていく必要があるとレコモットは考えます。
今回は言語学者として多くの著書を出版し、多方面で活躍する明治大学教授、堀田秀吾さんを迎え、株式会社レコモットの代表取締役、東郷剛とともにリモートワーク環境における従業員のメンタルヘルスの変化や具体的な課題について語ります。
堀田秀吾(ほった しゅうご)
明治大学教授
1968年生まれ 埼玉県出身。専門は法言語学・心理言語学・コミュニケーション論。科学という切り口から自己啓発、ストレスコントロール、自己管理、コミュニケーション、ことわざなどの著書をこれまで37冊刊行(累積64万部)※2022年9月時点
東郷剛(とうごう つよし)
株式会社レコモット 代表取締役CEO
1969年生まれ 埼玉県出身。1996年に国産ソフトウェアベンダに入社。マーケティング職に従事した後、複数のベンチャー企業の立ち上げに参画。2006年に株式会社レコモットを設立し、2008年にリモートアクセス サービス「moconavi(モコナビ)」をリリース。業界・規模を問わず、1300社・32万ID以上の導入実績をもつ
2人の出会い
東郷
堀田さん、本日はよろしくお願いします。SNSで再会して連絡を取り合うようになって1年ほど経ちますね。
堀田
そうですね。まさか小学生の頃の幼なじみが会社の代表になっているとは…感慨深いです。1学年下の東郷さんは自分にとって可愛い存在でした。
東郷
なんだか照れますね(笑)堀田さんの活躍ぶりもテレビなどで拝見しながら、すごいなあと感心していましたよ。その半面、子どもの頃からたくさんの友達を巻き込んで遊ぶようなリーダー的存在だったので、言語学や心理学といった人との「コミュニケーション」に着目した研究や著書の出版活動はまさに堀田さんらしいなとも感じていました。
堀田
確かにそうかもしれませんね…。例えば高校生のとき、バンドに憧れてギターを始めたんですけど、いろんな友達を「バンドやろうよ!」と誘い、結局クラスメイトの半数以上をバンドマンにしてしまったこともありました(笑)当時はロックバンドって「不良がやる」というイメージがあったので、先生たちからは危険人物としてかなり警戒されていました(笑)
東郷
そんな堀田さんが大学の先生になるとは(笑)
堀田
まったく不思議ですよね。
東郷
著書も何冊か読ませていただいています。どれも非常に勉強になる内容でしたが、特に「科学的に自分を思い通りに動かすセルフコントロール大全」が面白かったです。私自身のセルフコントロールという視点でも勉強になり、早速実践したこともありましたが、経営者としては「従業員のセルフコントール」という観点で興味深かったです。ぜひ今日もそんなお話をたくさんお伺いできればと思います。
大学教授と経営者、それぞれが直面したコロナ禍による環境の変化
東郷
しばらく会わないうちに、コロナ禍で世界は激変しましたよね。堀田さんは大学教授として、どんな変化がありましたか?
堀田
1回目の緊急事態宣言が出されたときは授業が全面的にリモートになりました。自宅で講義の内容を録画・配信する…これまでに体験したことのない状況でしたね。それまでは対面授業で雑談などを通して学生とコミュニケーションを積極的にとっていた私としてはなかなか慣れず、最初は苦労しました。
東郷
テレビでは堀田さんの授業が“明大一受けたい授業”として紹介されていましたが、きっと雑談も含めて面白いという面もあると思います。だとすると、確かにオンラインのみはなかなか辛いですね…。
堀田
はい、ありがたいことに。現在は従来通りの対面授業を基本に、その様子を録画・配信するというハイブリッド型に変わってきています。教える側の難しさとは裏腹に、オンラインだとわからないところだけ何度もリピートしたり、好きな時間に視聴できたり、学生にとってのメリットも大きいこともわかりました。それでも学校側が対面授業を大切にするのは、大学が「人と人がつながる場所」であるという役割を忘れていないからです。
東郷さんは経営者として、どんな変化がありましたか?
東郷
レコモットは最初の緊急事態宣言が発出される前に出社制限をかけてリモートワークに移行しました。私としては家族と過ごす時間が増えて、意外と良かったなあというポジティブな印象です。
ただ、以前は「レコモット=東郷商店」みたいな感覚もあり、規模が大きくなると私自身がボトルネックになることも増えていたんです。従業員が増えたこともあり組織的に仕事を現場に任せる取り組みが功を奏し、コロナウイルスのまん延が深刻化しても、事業継続の観点でも問題なかった感じです。実際に年末年始にかけて4週間ほどお休みしていましたが、それでも問題なく会社は動いていました。
こうした経営面の成功体験とは別に、メンタルヘルスの不調を訴える従業員も出始め、リモートワーク特有の新たな課題と直面することになったんです。
リモートワークで浮き彫りになった社会問題「メンタルヘルス不調」3つの原因
堀田
東郷さんが経営者として抱えた従業員のメンタルヘルスの課題…大学もまさに同じでした。リモートの授業が中心になってから、心の病を抱える学生が急増して、なかには就職を諦めてしまうような人もいました。
東郷
リモート環境でメンタルヘルスに不調をきたしてしまうその具体的な原因はどんなところにあると、堀田さんはお考えですか?
堀田
大きく3つあげられると思います。
①仕事のON・OFFの切り替えができていない
堀田
まず、仕事のON・OFFの切り替えができていないことがメンタルヘルス不調の原因になります。リモートワークでは仕事で一日中家にいるような人が多くなります。なかには生活空間であるはずのリビングでパソコンを開いてしまう人もいるでしょう。仕事とプライベートの切り替えができないことで、気づかぬうちに脳がどんどん疲れていきます。すると業務効率も落ち、働く時間が長くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
②運動不足
堀田
運動不足も非常に重要な問題です。体と心がつながっているということは心理学において大原則。マイアミ大学のヘラーらの研究では、人にGPSをつけて移動距離と幸福度の関係を調査したところ、移動が多い人ほど心の健康が保たれているという結果が出ています。オフィスワークでは通勤だけでも体を動かしますよね。リモートワークになると満員電車に乗る大変さはなくなりますが、体を動かさずにいると心が壊れてしまうという、より深刻な問題になり兼ねないのです。
③コミュニケーション不足
堀田
リモートワークによるコミュニケーション不足。これがメンタルヘルスの不調をもたらす最も大きな原因といえるでしょう。人はコミュニケーションをとることで体内に感情のコントロールを担うセロトニンという神経伝達物質や、“幸せホルモン”と言われるオキシトシンが分泌されます。セロトニンは夜になるとメラトニンに変わり、体内時計をコントロールする役割も果たします。体内時計がずれると、良質な睡眠が取れなくなって、これもまたメンタルヘルスを害すると言われています。
人と対話する機会がなくなり、セロトニンが分泌されないと、メンタルが不安定になり感情のコントロールがうまくできなくなってしまうのです。
東郷
堀田さんがおっしゃる「コミュニケーション」とは、言葉のやり取りだけでなく、非言語も含めたコミュニケーションということですよね。
堀田
そうです。同じ部屋にいて、声のトーンや大きさ、仕草、雰囲気や熱量など、あらゆることを感じながら対話をするということです。
今まさに心理学や脳科学の観点で「人と人が対話を通してどのようにシンクロしていくか」ということを研究しています。よく「この人とは相性が合う・合わない」といった話がありますが、そうした人間同士の相性も実は自律神経の同期具合で決まっているという説もあります。
つまり、我々人間は対話を通し、自分たちが思いも及ばないような深いところで繋がっているのです。
東郷
だからこそ、リアルなコミュニケーションが欠かせないということですね。
引き続き、今お話いただいたメンタルヘルスの不調に陥る原因を踏まえて、その対策などを教えてください。