IP電話の仕組みとは? 固定電話との違いやメリット・デメリットを解説

  • 投稿日:2020 - 4 - 16
  • 更新日:2023 - 11 - 28
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情報通信技術の進展によってあらゆる場所・端末でインターネットが使用できるようになった今、テレワーク・リモートワークという新たな働き方が浸透しました。

場所や端末を選ばずに働けるようになったなかで、従来のアナログ回線の固定電話を使用している企業では、以下のような問題が生まれやすくなっています。

「電話対応のためにオフィスに出社する必要がある」
「遠方の事務所や取引先に電話をすると、通話料金が高くなってしまう」

こうした問題を解消する手段の一つに、アナログな固定電話からIP電話へと切り替える方法があります。

この記事では、IP電話の仕組みや固定電話との違い、導入するメリット・デメリットなどをまとめて解説します。

IP電話の仕組み

IP電話とは、「IP(インターネットプロトコル)」と呼ばれる通信方式を利用して通話を行う電話サービスの総称です。

IPパケット化した音声データを伝送して着信先で再度音声データに復元することで、人間が聞き取れる音声として再生します。

IP電話の歴史

日本におけるIP電話サービスの提供は、2003年から開始されました。

近年ではパソコンやスマートフォンでIP電話を利用できるサービスが登場していて、テレワーク導入企業でも広く利用されています。

▼IP電話の歴史

  • 2003年にインターネットサービスプロバイダが回線契約時のオプションとしてIP電話サービスの提供が開始された。
  • 2005年頃には、大手企業が問い合わせ窓口の電話番号にIP電話を導入するケースが登場して徐々に利用が拡大していった。
  • 近年では、アナログな固定電話における契約数の減少や交換設備の維持が限界を迎えることなどを背景に、2024年1月から廃止に向けた移行作業が開始される。

2025年1月には、アナログな固定電話が廃止されてIP電話への切り替えが完了する予定となっています。

IP電話と固定電話(アナログ電話)の違い

IP電話と固定電話には、使用する回線や利用できる端末、通話料金などに違いがあります。

▼IP電話と固定電話の違い

IP電話 固定電話
回線 インターネット回線(IP網) アナログ回線(固定電話網)
利用端末 固定電話機、スマートフォン、パソコンなど 固定電話機
通話料金 通話料金は一定となる 距離が遠くなるほど通話料金が高くなる

IP電話は、インターネット回線を使用して音声データをやりとりする仕組みとなっており、交換局は経由しません。そのため、距離による通話料金の違いがなく全国一律となります。

これに対して固定電話は、電気通信事業者が提供するアナログ回線を利用しており、アナログ電話とも呼ばれます。回線の途中で“交換局”という施設を経由するため、通話相手との距離が遠いほど通過する交換局が多くなり、それに伴って通話料金が高くなるのが特徴です。

IP電話の3つの種類

IP電話には、市外局番を使用する“0AB-J型”、上3桁に050番号を使用する“050番号型”、電話番号を使用しない“電話番号不要型”の3つの種類があります。

① 0AB-J型

0AB-J型は、従来の固定電話で使われている市外局番から始まる全10桁の電話番号を使用する形式です。総務省の電気通信番号制度において、利用者設備識別番号のうちの“固定電話番号”に該当します。

0AB-J型では、以下の並びで電話番号が構成されています。

▼0AB-J型の構成

項目 番号
基本の構成 市外局番 – 市内局番 – 加入者番号
番号の割り当て区分 0A – BCDE – FGHJ

 

市外局番は必ず0で始まる番号が使用されており、東京では“03”、大阪では“06”となります。市内局番(BCDE)については総務省が電気通信事業者に指定した番号となり、加入者番号(FGHJ)は電気通信事業者が割り振っています。

IP電話で0AB-J番号を使用するには、総務省が定める通話品質の基準を満たす必要があります。通信品質の基準には、次の4項目が定められています。

▼0AB-J番号を使用するための通信品質の基準

  • 接続品質
  • 総合品質
  • 安定品質
  • ネットワーク品質

なお、電話加入権で取得した番号を持っている場合には、IP電話に変換した場合でも同じ電話番号を引き継ぐことが可能です。

② 050番号型

050番号型は、“050”から始まる全11桁の電話番号を使用する形式です。0AB-J番号とは異なり、市外局番や市内局番は含まれておらずプロバイダによって番号が割り当てられています。

▼050番号型の構成

項目 番号
基本の構成 IP回線 – プロバイダの識別番号 – 加入者番号
番号の割り当て区分 050 – ✕✕✕✕ – ✕✕✕✕

 

050番号型では地域に関する情報が含まれていないため、固定電話機だけでなくスマートフォンやパソコンで使用することも可能です。

③ 電話番号不要型

電話番号不要型は、電話番号を使用しないIP電話の形式です。

インターネット上で音声通話を行えるアプリケーションやサービスを使用して、スマートフォンまたはパソコンを用いて通話を行います。電話番号不要型のIP電話では、通話料が無料になることが一般的です。

ただし、電話の発信者・受信者の両方が同じアプリケーションやサービスを利用する必要があり、アナログ回線を利用する電話機との通話は行えません。また、050番号型と同様に緊急通報への発信はできないほか、通信環境によって通話の品質が左右されやすくなります。

IP電話のメリット

IP電話には、従来の固定電話とは異なるさまざまなメリットがあります。

① 通話料を抑えやすい

1つ目のメリットは、通話料を抑えやすいことです。

IP電話の通話料は、アナログ回線の固定電話よりも安く設定されていることが一般的です。アナログ回線の固定電話で県外に発信する場合、3分当たりの通話料が20~80円程度となりますが、IP電話の場合は8~10円程度となっています。

また、距離によって通話料が変わらないほか、通話の相手と同じプロバイダを契約している場合には通話料が無料になります。

遠方の取引先や事務所へ頻繁に電話をかけたり、長時間の通話をしたりする場合に、コストを抑えられるメリットがあります。

出典:総務省『固定電話網の円滑な移行』『主なIP電話通話料金一覧表

② 電話回線の工事をせずに利用できる

2つ目のメリットは、電話回線の工事が不要になることです。

IP電話はインターネット回線を使用するため、固定電話機を設置する場所まで電話専用の回線を引き込んだり、新たにモジュラージャック(※)を設置したりする必要がありません。

0AB-J番号または050番号の場合はそのまま固定電話機を使用できるほか、スマートフォンやパソコンであれば、電話番号不要型でも通話をすることが可能です。

また、IP電話は回線の追加・削除を手軽に行えるため、従業員の増減に応じて柔軟に対応しやすいこともメリットの一つです。

※電話線やLANなどと接続するための差し込み口

③ システムの汎用性が高い

3つ目のメリットは、システムの汎用性が高いことです。

IP電話はインターネット回線を使用する特性から、ほかのさまざまなシステムやアプリケーション、通信端末との連携がしやすくなります。

▼IP電話と連携した活用例

  • IP電話と顧客管理システムを紐づけて、着信時に発信者の情報を端末画面へ表示する
  • グループウェアに登録された電話帳から1クリックで取引先に電話をする
  • オフィスの電話機に着信があった場合に、従業員のスマートフォンへ自動で転送する

このように、IP電話とほかのシステムを連携させることで、電話対応の業務を効率化したり、使用する端末を選ばずに受信・発信ができたりするため、利便性の向上につながります。

IP電話のデメリット

IP電話にはいくつかデメリットもあります。導入する際は、発信できる範囲や通話品質を考慮したうえで、用途に応じてIP電話の種類を検討することが重要です。

① 緊急通報電話が使えない

1つ目のデメリットは、緊急通報電話が使えないことです。

050番号型や電話番号不要型のIP電話を使用する場合、市外局番や市内局番といった位置情報が含まれていないため、110番や119番の緊急通報には発信できません。

緊急通報へ発信できるようにするには、市外局番から始まる0AB-J型のIP電話を使用する必要があります。

② フリーダイヤルが使えない

2つ目のデメリットは、フリーダイヤルが使えないことです。

フリーダイヤルとは、“0120”から始まる電話番号で構成されており、発信者側に通話料金が発生しない電話サービスのことです。企業やサービスに関する問い合わせ窓口に使用されていることが一般的です。

050番号型や電話番号不要型のIP電話では、フリーダイヤルへの発信が制限されています。0AB-J型の場合には、プロバイダによって条件が異なるケースがあるため、事前に確認しておく必要があります。

③ 通話品質が低い可能性がある

3つ目のデメリットは、通話品質が低い可能性があることです。

IP電話の通話品質は、大きく3つの段階に分けられています。

▼通話品質の段階

段階 通話品質
クラスA 固定電話と同等のレベル
クラスB 携帯回線(キャリア回線)と同等のレベル
クラスC クラスB以下

従来の固定電話や0AB-J型のIP電話の場合、クラスAの通話品質の基準を満たすことが必須条件とされており、安定した品質で通話ができます。

しかし、050番号はクラスCの基準を満たせば取得できるため、プロバイダによっては接続が不安定になるおそれがあります。

また、電話番号不要型の場合は、インターネット回線の状況によって電話がつながりにくくなったり、遅延したりするトラブルが発生するケースもあります。

通話の安定性を必要とする企業は、0AB-J型を選択するかクラスAまたはクラスBの基準を満たすサービスを選ぶことが重要です。

携帯回線を使った高品質通話なら「moconavi 050」がおすすめ!

インターネット回線を使用するIP電話のなかでも、050番号型や電話番号不要型では、プロバイダや通信環境によって通話が不安定になることがあります。

インターネットの通信環境に左右されずに安定した通話を行いたい方には、携帯回線で050番号を使用できる『moconavi 050』の活用がおすすめです。

moconavi 050は、携帯電話に050番号を付与して携帯回線によって通話を行える法人向けのサービスです。インターネット回線を使用しないため、携帯電話のキャリアが提供する通話品質を確保できます。

通話料については通常の携帯電話による通話と比較して2分の1程度となっており、コストを抑えて運用できるメリットがあります。ほかにも、moconavi 050には以下の特徴があります。

▼moconavi 050の特長

  • アプリケーションをインストールするだけで050番号を使用できる
  • 従業員のスマートフォンで仕事とプライベートの番号を使い分けられる
  • 050番号の通話料のみを会社宛てに一括で自動請求できる
  • クラウドで電話帳を一元管理するため、端末に個人情報が残らない
  • 会社宛ての電話を050番号へと転送できる

moconavi 050では、一つのスマートフォンで携帯電話番号と050番号を使い分けられるため、2台持ちをする必要がなくなります。個人の電話番号を関係者に教えなくてよくなると、プライバシーの保護にもつながります。

また、050番号による通話とプライベートの通話を公私分計できることから、経理担当者の負担も軽減できます。万が一、従業員がスマートフォンを紛失した場合でも、電話帳のデータが端末に保存されていないため、情報漏えいのトラブルを防ぐことが可能です。

固定電話からの切り替えをご検討中の方は、こちらをご確認ください。

テレワークの電話問題は050番号とクラウド電話帳で解決 moconavi050

moconavi 050でコスト削減を実現した事例

ここからは、moconavi 050を導入いただいた独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)さまの事例をご紹介します。

▼導入前の課題
外部関係者との連絡手段として社用携帯を配布していましたが、端末の購入代金や携帯電話の基本料金が発生することから、配布できる台数が限られていました。

同じ端末を複数の職員で交換しながら利用することも多く、調達手続きや物品管理に労力がかかることや、セキュリティ面でのリスクが懸念されていました。

▼導入を決めたポイント
新たに携帯電話を契約することなく、職員の私有携帯に連絡用の050番号を提供できることや、端末に連絡先の情報が残らないセキュリティ体制があることから、moconavi 050を導入されました。

▼導入後の効果
職員の人数に応じて050番号を迅速に付与することによって、外部関係者とのスムーズな連絡体制を整えられるようになりました。社用携帯を配布していたころに比べて、管理やコストの負担を大幅に軽減することに成功しました。

今後は、緊急時の連絡手段や離れた場所にいる職員との情報共有など、働き方改革を実現するための基盤づくりとしての活用も視野に入れているとのことです。

詳しい内容についてはこちらからご覧ください。

働き方大改革!moconavi&moconavi 050で事業の迅速化とコスト削減を同時に実現

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