【堀田秀吾 × レコモット東郷】リモートワークによるメンタルヘルスの課題を打破する方法とは?

  • 投稿日:2022 - 9 - 28
  • 更新日:2023 - 4 - 12
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心理言語学者であり明治大学教授の堀田秀吾さんと株式会社レコモットの代表取締役、東郷剛が、リモートワークにおける従業員の「メンタルヘルスの課題」について考える対談企画。

前編でテーマになった「メンタルヘルスの不調」に陥る3つの原因を踏まえ、後編では具体的な解決策について語ります。

たった10分の運動で心身の状態が保たれ集中力もモチベーションも向上

堀田
先ほど話したメンタルヘルスが不調になってしまう3つの原因のなかで、「仕事のON・OFFの切り替えができない」「運動不足」という2つへの対策として効果的なのは、ずばり、運動をすることです。そもそも運動が苦手な人に対して「運動が大切です」と言うのもおかしいと思われるかもしれませんが、少しハードルを下げて考えてみてください。必ずしもジムに毎日通ったり、ハードなトレーニングをしたりする必要があるという話ではありません。

心拍数を120から140くらいに上昇させるだけで、血液の循環がよくなって脳に多くの酸素が送られます。それによって集中力やモチベーションが向上し、気持ちも前向きになれるのです。例えば10分間早歩きをするだけでも心拍数は120くらいまで上がります。ハーバード大学のレイティらの研究によると、イリノイ州の高校の生徒に朝10分間運動をさせてから授業を受けさせるようにしたところ、全米の高校で平均成績が1位になったという例があるそうです。

堀田秀吾_レコモット東郷剛_対談

東郷
10分間歩くだけ…オフィスワークなら通勤で普通に誰もがやっているくらいの運動ですね。

堀田
そのちょっとした運動がとても大切なんです。それに、外に出ればそれだけで景色が変わって気分転換にもなり、ON・OFFの切り替えにもなります。

東郷
レコモットの従業員でも、コロナ禍になってから体を鍛え始めた人や、毎日ジョギングをするようになった人が結構いて、みんな生き生きと働いている印象がありますね。

別の視点で、「仕事のON・OFFの切り替えができない」従業員の傾向として、責任ある仕事を任されているリーダークラスのメンバーが多いと思います。業務を抱え込み、残業が多くなったり、休みの日でも仕事のことを考えたりしてしまいがちです。

そうした状況を改善するために、経営者である私自身が積極的に仕事を他の人に任せることで、リーダー達も下に依頼しやすい雰囲気をつくることを心がけています。逆にメンバーには、仕事が降りてくるのを待つのではなく、自分から積極的に取りにいく、もしくは生み出すマインドを持っていて欲しいと願い、レコモットの行動指針の一つに「Take initiative.(誰かではなく、自分が動く!)」という言葉を掲げています。

堀田秀吾_レコモット東郷剛_対談

リアルなコミュニケーションに近い1 on 1ミーティングが従業員のメンタルケアに最適

東郷
メンタルヘルスが不調になってしまう原因として、3つ目の「コミュニケーション不足」に対してはどのような解消策がおすすめですか?

堀田
リモートワーク環境のなかでは「1 on 1ミーティング」が有効です。コミュニケーションを活性化するために複数人でのミーティングを行なっている企業もあると思います。しかし、WEB会議ツールを用いた環境で生まれるコミュニケーションは、例えば参加者が10人だったしても、常に1人が話し、他の9人はそれに耳を傾けるという状況になってしまいます。対面の場合、多対多でさまざまな話が絡み合う複線型のコミュニケーションが生まれますが、WEB会議では、それとは異なり、一方通行のやりとりになってしまうということです。

堀田秀吾_レコモット東郷剛_対談

東郷
よくわかります。WEB会議だと10人参加していてもそのなかで発言する人って数人に限られることが多いですよね。聞き役に徹してしまう人も結構いる…。私の場合、自分が発言すると何気ない一言でも「経営者からの指摘」と重く受け止められ、変に忖度されてしまうのではないかという心配があり、うかつに話せません。対面であればこちらの温度感も伝わるのでそういう心配はいりませんが。

堀田
1対1のやりとりは、いわば電話と同じで、オンラインであってもリアルに比較的近いやりとりができるので、相手の雰囲気を感じながら、お互いに本音で話すことができます。

東郷
レコモットもまさにリーダーとメンバーによる1 on 1ミーティングがカルチャーとして定着しています。仕事の進捗確認や人事評価という機能とともに、個別に相談を聞き、メンタルケアに役立てています。

従業員の健康と経営の最適化を両立する理想的なワークスタイルとは

東郷
ここまでは、リモートワークで生じる従業員のメンタルヘルスにおける課題を、「リモート環境でどう解消するか」という軸で話をしてきました。堀田さんの、言語学、心理学、脳科学といったさまざまなアプローチからの知見を聞いて率直に思うのは、やはり「対面での会話に勝るコミュニケーションはない」ということです。

堀田
それは間違いない事実だと思います。一方的な情報発信をするだけなら、リモートでも問題ないでしょう。大学の場合、通常の授業はリモート配信をすることで、前半で話したような学生側にとってのメリットが多くあります。コロナ禍でリモート授業が定着した今は、課題を必ずやらなければいけないということもあり、もしかすると日本の歴史のなかでも稀に見るほど、大学生が熱心に勉強している時代かもしれません。

しかし、コミュニケーションを中心に進めていくゼミのような活動は、リモートだとかなり厳しいものがあります。企業活動に置き換えると、企画を考えるようなクリエイティブな作業や、複雑な問題解決の議論をする場合は、圧倒的に対面がいいと思いますね。

東郷
企業活動においても、リモートワークを導入することでオフィスの省スペース化や通勤代の削減、居住地に囚われない優秀な人材の採用など、経営面で多くのメリットがあったのも事実です。しかし、堀田さんがおっしゃるように質の高いコミュニケーションが必要な場面もあり、オフィスでの従業員同士のリアルな関わりも欠かせません。

レコモットでは、こうしたリモートワークとオフィスワークの特性を踏まえ、メリットを最大化してデメリットを最小化する働き方として、ハイブリッドワークを採用しています。基本はリモートワークに軸足を置きながら、原則週一で出社としていますが、そのバランスは従業員一人ひとりが選べるようにしています。ハイブリッドワークこそが従業員の健康と経営の最適化を両立する理想的なワークスタイルではないかと考えています。

堀田秀吾_レコモット東郷剛_対談

働き方を「選べる」ことが従業員の幸福につながる

堀田
従業員一人ひとりが働き方を選べるということ…とても重要ですね。

心理学の観点でも、「自己決定」できる環境が人間の幸福度を高めるという研究結果があります。リモートワークでもメンタルヘルスの不調に陥ることなく、むしろ快適で効率的に働ける人もいれば、オフィスに通勤することでON・OFFを切り替え、パフォーマンスを最大限に発揮できる人もいる。さまざまな考えがあるなかで、それらを受け入れ、選択肢を与えるのが理想的ですね。

東郷
レコモットはソフトウェアを作っている会社として、「人材こそが宝」だと思っています。従業員一人ひとりがより自分らしく働けるよう、今回堀田さんからお聞きしたことをヒントに、業務改善や従業員のメンタルケアに取り組んでいきます。堀田さん、ありがとうございました。今後の著書の出版も楽しみにしております!

堀田
こちらこそ、とても有意義な対談でした。ありがとうございました。

2022年8月26日には36冊目の著書となる『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』、2022年9月17日には37冊目の著書となる『最新研究でわかった ”他人の目”を気にせず動ける人の考え方』が発売されました。すぐに行動できない自分を変えるための習慣について、そして人目を気にして行動できない人の考え方を変える方法について、世界中の研究結果をもとに解説した内容です。多くのビジネスマンに刺さる内容だと思いますので、ぜひ読んでみてください。

世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣
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堀田秀吾_レコモット東郷剛_対談

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