テレワーク導入にかかる費用、コスト削減はどう実現する?

  • 投稿日:2019 - 11 - 25
  • 更新日:2022 - 9 - 20
  •   

働き方の変革を目指す中で、コストの削減は常に目を向けなくてはならない課題の一つです。「テレワーク」の導入はコストの削減も期待できますが、実際にどのようなコストをどうやって削減していくものか、詳細が気になる人も多いのではないでしょうか。

また、テレワーク導入にともなって費用がかかるのも事実です。この記事ではテレワーク導入による企業へのメリットや、実際にどのような費用がかかるのかを紹介していきます。

テレワークを導入するとどんなメリットがある?

テレワークを導入することで得られるメリットは、企業にとっても労働者にとっても生まれます。企業にとってはコストが削減できるという最大のメリットのほか、人材確保の幅が広がるという点も挙げられます。

例えば通勤に時間がかかり過ぎる場合。どんなに優秀な人材でも、物理的に雇用するのは難しくなってしまいます。しかしテレワークを導入すれば、通勤時間がかかる遠隔地の労働者も雇用することが可能です。場所にとらわれることなく欲しい人材を確保できるのは、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

労働者にとってのメリットは、プライベートの充実を図ることができるという点です。通勤時間が減り、限定的とはいえ仕事の裁量権を得ることができるので、家族や友人との時間や趣味に費やす時間を増やすことができます。

また、介護や育児などによってフルタイムでの勤務が難しくなった人でも仕事を続けやすくなり、余計なストレスを感じることが少なくなることも期待できます。

つまり、企業にとっても必要な人材の流出を防ぐことができ、労働者も自身の事情に合わせて働きやすくなる、win-winの関係といえるでしょう。

さらに災害や交通機関のトラブルなどによって通勤が困難になった場合でも、業務を続けられることで結果的にリスクを分散させ、企業と労働者両者のメリットとなり得ます。

実際に総務省が2017年に調査した結果、通勤時間短縮をテレワーク導入目的とした企業は全体の54.1%でもっとも高く、これは2016年の結果と比較しても10%以上高い数値です。

労働者が感じるテレワーク導入のメリットでも通勤時間・移動の削減が全体の71.5%を占め、もっとも高い結果となっています。

この総務省の調査結果から見るに、労働者はより働きやすさを重視した企業を求めるようになりました。テレワーク導入による通勤時間の短縮は、労働者のワークライフバランスを保ち、結果的に企業の生産性を向上させるというメリットも生み出します。

テレワーク導入でオフィスのコンパクト化が可能

テレワーク導入によるメリットの一つが企業運営コストの削減という点ですが、実際に削減が見込めるコストを見てみましょう。

まず挙げられるのが、オフィススペースの削減です。常駐する従業員を必要最小限に抑えることができるため、人数に合わせたデスクや空間を用意する必要がなく、オフィスのスペースも必然的に最小限に抑えることができます。

広いオフィスから狭いオフィスへの移転も可能になることで、賃料や水道・光熱費などの維持費用の削減が見込めます。また従業員の交通費などの諸経費削減にもつながります。

業務拡張などで従業員を増員することになっても、オフィスを無理に広げる必要がないので最低限のコストでまかなうことができます。必要に応じて本社に出勤してもらう必要があっても、「フリーアドレス制度」を導入すれば、各従業員のデスクをそれぞれに用意する必要はありません。

フリーアドレス制度とは、デスクを一人ずつ固定せず、仕事に応じて好きな席を自由に使ってもらう制度のことです。1990年代に推進された制度ですが、当時はITがまだ発達しておらず、データでのやり取りが進んでいなかったため、あまり定着しませんでした。

しかし、データでのやり取りが当たり前になる中で、社内でのコミュニケーション方法も多種多様になったため、再度注目を集めるようになりました。オフィススペース削減のほか、さまざまな部署間でのコミュニケーション活性化、生産性の向上など多くのメリットが得られるため、大手企業もフリーアドレス制度を導入し始めています。

実際にコスト削減を実現した事例1

テレワークを導入することでコスト削減に成功したある企業では、事業所を一部廃止し、8名の労働者を対象にテレワークを義務化しました。もともとあった営業や総務、経理などをバーチャル化することによって、年間固定費の実に約30%も削減することに成功しています。金額にして5600万円ほどの経済効果はメリットというほかありません。

さらにテレワーク導入費用削減のために、コミュニケーションツールはチャットやTwitter、Facebookなど無料ツールの利用を促進し、ソフトウエアも月額利用料1万円以下の低価格のものを使用しました。結果的に2カ月程度でテレワーク導入費用を回収しています。

労働管理はクラウドコンピューティングを導入し、出勤管理や休暇届けの提出、さらには承認までのプロセスもインターネット上で行うことができるようになりました。稟議申請や諸経費の申請もすべて、パソコンやスマートフォンなどからオンラインで行うことが可能になり、従業員の負担を減らすことに成功しています。

会議もスカイプなどを利用したWEB会議を実施することで、通常オフィスにいるときと変わりなくコミュニケーションを取ることができる環境を作っています。このようなコミュニケーションツールにより仕事以外のプライベートのやり取りも、業務に支障がない範囲で頻繁に交わされています。

社内文書も原本保存が法律的に義務付けられているもの以外は、クラウドコンピューティングで管理することによって従業員がいつでも閲覧できる環境を実現しています。購読雑誌や技術的資料も電子化してサーバーに管理することで、従業員は自身のスキルアップを好きなタイミングで行うことができます。

実際にコスト削減を実現した事例2

テレワーク導入によりコスト削減を実現した企業例はほかにもあります。ある企業ではオフィス移転の際にテレワークを導入したことで、オフィススペースの削減に成功し、結果、年間およそ1500万円のコストを削減しています。さらに残業時間が1カ月当たり1人平均8.5時間減少したため、時間外手当も年間約3000万円が削減されています。

対象労働者は、契約社員も含む経営管理本部の入社後6カ月以上の4000人。在宅勤務の上限は週に16時間で、メールでの申請・上長からの承認を必要としますが、範囲内であれば午前中のみや午後のみの在宅勤務をすることができ、労働者に裁量を一任しています。

また、コミュニケーションツールを導入することで、在宅勤務者との交流を図る工夫もしています。さらにオフィスではフリーアドレス制度を導入し、椅子や照明、キャビネットなどオフィスの中古品を在宅勤務者に提供することで、テレワーク導入費用の削減を成功させています。

通勤時の社員同士のやり取りはいつでも交わせるように、多目的スペースやグループ用のデスクは用意し、コミュニケーションを図る機会は減ってしまわないよう、あくまで在宅勤務時でもオフィス出勤時でも変わらない水準で交流の場を用意しています。

また、マネジメント視点でのテレワーク効果が有効かどうか、業務処理件数や処理にかかる時間などを定期的に測定し、企業全体のメリットであることを検証しています。導入して終わりではなく、継続的に運用するために必要不可欠な対策です。

その上で、利用者を拡大するために、対象者以外にも、関係者全員に対してテレワーク制度の目的や効果、利用事例などの説明会を実施したり、こまめにアンケートを取ったりして改善改革を図っています。

テレワーク導入でかかる費用とは何か?

テレワークを導入する上で費用が発生することは念頭に入れておかなくてはなりません。そのため、発生する費用の負担について、必要に応じて就業規則を変更したり、明確なルールを作ったりして従業員に丁寧に説明することが重要といえます。

たとえば、労働者が業務に使用するパソコンやスマートフォンなどの端末は企業が貸与する場合も多くあります。情報通信機器が業務に必要な場合は、その準備費用は企業が負担するのが一般的です。ただし、オフィスに通勤しているときでもパソコンは必要なケースが多いので、テレワークのために新たにかかる費用には含まない場合もあります。

通信費用ももちろん発生しますが、在宅勤務の場合は通信回線をテレワーカーが個人的に利用することもあります。しかし、業務利用と個人利用との線引きが難しいため、一定額を企業側が負担する形をとっている例が多いようです。線引きについてはしっかりとルールを作り、両者にとって不利益にならないようにしましょう。

そのほか文具などの必要備品や宅配費用などについても、テレワーカーが一時的に立て替えをした後で企業が精算するなどの対応をとるケースがあります。その際の精算方法などもルール化しておくことが大切です。

また、通勤がないことでコミュニケーションや勤怠状況を管理するためのツールを導入する費用もかかります。ただし、前述の例のように、低コストのものや無料のツールで運営していくことは十分に可能です。低コストのツールを利用促進する際には、従業員の理解を得ることが必要不可欠です。利用する上での注意点や目的をしっかりと説明した上で、コストの削減につなげていきましょう。

小規模のサテライトオフィスを用意する場合は、建物を賃借する費用や、水道・光熱費、デスクなどの備品費用がかかります。ただし、シェアオフィスのような共用スペースを利用する場合にはコストを抑えることが可能です。外部企業などとの信頼構築が重要ではありますが、実際にオフィスを構えない企業も増えているので、テレワークを導入する上でのオフィスコストを削減する方法の一つとして考慮しておきましょう。

テレワークの助成金が活用できる!

テレワークを実施することで、国の助成金を活用することもできます。国の助成金を活用すれば、さらにコストが抑えられるので、ぜひ活用を検討してみましょう。

厚生労働省による「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」と呼ばれる助成金制度は、企業が「クラウドサービスの導入」、「就業規則または労使協定などの作成や変更」などを含む、テレワークに関わる全6項目の中から1つ以上の取り組みを実施することで助成金支給の対象になる制度です。

支給額に関しては、評価期間内に定められた成果目標に対して達成したかどうかで変動します。成果目標が期間内に達成された場合、労働者1人当たりに対して上限額20万円、企業全体の上限額としては150万円が支給されます。未達成の場合でも、労働者1人当たりに対して上限額10万円、企業全体の上限額としては100万円が支給されるので、テレワーク導入を考えている企業を後押しする制度として注目されています。

また、東京都では全国に先立ってテレワーク導入をすすめており、さまざまな助成制度を設けています。代表的なものでいうと、都内の中小企業を対象にした、在宅勤務やモバイル勤務を可能にするパソコンの購入やネットワーク環境の整備などを含むテレワーク機器の導入や、サテライトオフィス利用時に助成金利用の申請が可能な「テレワーク活用推進コース」があります。

そのほかにも、専門のコンサルタントを最大5回まで無料で派遣し、テレワーク導入における課題解決などの支援を行う「ワークスタイル変革コンサルティング」など、さまざまな制度があります。

総務省でも「ふるさとテレワーク」という働き方を推進しています。ふるさとテレワークとは、地方のサテライトオフィスなどで都心部の仕事をテレワークで行う働き方のことで、地方の活性化やより自由な働き方を促進しています。特に地方自治体や民間企業に向けて、テレワークを可能にするために、サテライトオフィスなどの環境を整備する費用の一部の補助もしています。

ほかにも、テレワークを活用して地方の課題解決を図りたい団体に対する「まちごとテレワーク調査事業」など、現状分析の手助けや、有効策の検討をしてくれる制度もあるので、自分たちの状況を鑑みて適切な制度を利用することをおすすめします。

この記事をシェアする

関連記事

テレワーク・在宅勤務の就業規則やルールはどうする?規定を検討する11のポイント テレワーク・在宅勤務の就業規則やルールはどうする?規定を検討する11のポイント テレワークの導入率・企業が導入するメリットとは?成功事例とともに解説 テレワークの導入率・企業が導入するメリットとは?成功事例とともに解説 日本でテレワークの普及が進まないのはなぜ?その理由と解決策 日本でテレワークの普及が進まないのはなぜ?その理由と解決策