【2021年改訂版】テレワークのガイドラインに沿った適切な環境整備のポイント
- 投稿日:2021 - 12 - 7
- 更新日:2022 - 9 - 16
多くの企業が積極的に導入を進めているテレワーク。働き方改革や新型コロナウイルスの感染症対策のために国が推進していることもあり、注目を集めています。しかし、企業によって適したテレワークの形は異なり、どのように導入すればいいのか迷っている企業も少なくありません。
日本企業がテレワーク導入を進めるうえで参考になるのが、厚生労働省が公開している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」です。この記事では2021年に公開された本ガイドラインのなかから、特に押さえておくべきポイントを解説します。
ガイドラインで押さえておくべきポイント①「導入」
ポイントの1つ目は、「3. テレワークの導入に際しての留意点」に記載の内容です。
そのなかでも特にチェックしておきたいのが、テレワーク対象者の選定時に気をつけるべき点と、テレワーク導入と同時に取り組みたい施策に関する内容です。
テレワーク対象者の選定
テレワークの対象となる従業員を選定する際、以下のポイントに注意してください。
- 従業員本人の納得のうえでテレワークを実施する
- 正規雇用・非正規雇用の間で不合理な待遇差を設けない
テレワークの実施にあたって、従業員が自らテレワークを希望する場合と、業務内容などを基準に企業側がテレワーク実施者を指示する場合があります。いずれのケースでも、従業員本人が納得したうえで実施しなければなりません。
正規雇用と非正規雇用の従業員が混在する企業では、雇用形態の違いによる待遇差にも気をつけましょう。例えば、「テレワーク対象者は正社員のみ」など、雇用形態の違いだけを理由に対象者を除外してはいけません。
業務内容の違いなどでテレワーク対象者に偏りが出てしまう場合は、従業員が納得できるよう労使間で協議することでトラブルを回避できます。
望ましい取り組み
テレワークを導入する際に同時に取り組みたいこととして、以下の3点が挙げられています。
- 既存業務の見直し
- 円滑なコミュニケーション
- 職場全体での実施の検討
押印や署名、紙資料の使用など、テレワーク導入の障壁となっている既存業務の見直しが推奨されています。ペーパーレス化や電子署名、オンライン会議などの活用を進め、テレワークに合わせた業務環境を整えることが求められます。
また、従業員同士が対面で接することのできないテレワークの状況下においても円滑なコミュニケーションが取れるような対策も必要です。オンライン会議ツールやチャットツールなど、必要に応じてソフトウェア導入も検討しましょう。
職場の雰囲気がテレワークの実施を難しくさせているケースがあるため、トップダウンで導入を進めることも大切です。企業のトップや経営層からテレワーク導入の方針を示し、グループ企業も巻き込みながら組織全体で取り組むことが理想的です。
ガイドラインで押さえておくべきポイント②「労務管理」
押さえておくべきポイントの2つ目は、労務管理についてです。ガイドラインの「4. 労務管理上の留意点」には、テレワーク実施時の人事評価や費用負担などについて記載されています。
テレワーク実施時の労務管理が不十分では従業員の不安や不満につながるため、こちらの項目もチェックしておきましょう。
人事評価
テレワーク実施時の人事評価について不安視する声もありますが、人事評価の基本は対面で働く場合と同じです。評価対象となる行動や評価の基準などをあらかじめ明確化し、従業員に示しましょう。
評価者となる社員に対しても、非対面で働く場合でも適正に評価できるように研修などを行うことが大切です。
テレワーク実施者とオフィス勤務者で評価に不当な差があると、テレワーク実施の妨げになるため注意してください。「テレワーク実施者の評価を不当に低くする」「オフィスに出勤すること自体を高く評価する」などは、適切な人事評価とはいえません。
費用負担
在宅勤務では従業員個人が契約している電気やインターネット回線などを業務に利用するため、費用負担に関しても検討が必要です。在宅勤務によって従業員が支払う通信費や電気料金が増加することが予想される場合は、費用の負担割合や請求方法などをあらかじめ労使間で話し合い、ルールを定めておくことが望ましいとされています。
例えば、実際にかかった費用のうち、勤務時間などから業務で使用した割合を算出して支給するといった方法が考えられます。
ガイドラインで押さえておくべきポイント③「労働時間管理」
押さえておくべきポイントの3つ目は、労働時間の管理についてです。テレワークはオフィス勤務に比べて労働時間の管理が難しいため、ガイドラインの「6. 様々な労働時間制度の活用」や「7-(4)オ 長時間労働対策 」で解説されています。
ここでは、テレワーク実施時の労働時間の管理についてみていきましょう。
労働時間制度の活用
テレワーク実施時には、労働時間を柔軟に管理するのも有効な手段です。オフィス勤務の場合は始業と終業の時刻や所定労働時間を一律に定めるのが一般的ですが、それぞれ異なる場所で働くテレワークでは、すべての従業員が同じ時刻に始業・終業しなくても問題ないとするケースもあります。
例えば、所定労働時間だけ定めておき、始業や終業の時間はテレワーク実施者が自由に決める形式などが考えられます。フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制なども選択肢のひとつです。
このように労働時間に自由度を持たせる場合は、あらかじめ就業規則に定めておきましょう。
長時間労働対策
テレワークでは上司の管理が行き届きにくくなることや、仕事とプライベートの境目があいまいになりやすいことなどから、長時間労働が懸念されます。長時間労働対策として、ガイドラインでは以下の方法が紹介されています。
- 業務時間外の業務連絡の抑制
- 業務時間外のシステムへのアクセス制限
- 時間外や休日の労働の申請制
- テレワーク実施者への注意喚起
- 勤務間インターバル制度の導入
長時間労働による健康障害の防止やワークライフバランスの確保などのために、できる対策を取り入れましょう。
ガイドラインで押さえておくべきポイント④「メンタルヘルス対策」
メンタルヘルス対策も、押さえておくべきポイントとして挙げられます。テレワークは上司や同僚がいない場所で働くため、周囲が従業員の心身の不調に気づきにくい点に注意しなければなりません。
ガイドラインの別紙1「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」にはメンタルヘルス対策の項目も設定されているので、活用しましょう。そのほか、従業員が心身の健康について相談できる体制や、コミュニケーションが円滑に行える環境などを整えておくことが望ましいとされています。
ガイドラインで押さえておくべきポイント⑤「セキュリティへの対応」
押さえておくべきポイントの5つ目は、セキュリティへの対応です。セキュリティを考慮してすべての業務をテレワーク対象外としている企業もあるかもしれませんが、「どうすればセキュリティの問題をクリアできるか」という観点で対応を検討することも大切です。
例えば、セキュリティ技術の向上によってテレワークが可能となる業務があるかもしれません。ガイドラインでは、一律テレワーク対象外とするのではなく、業務ごとの解決策を検討することが望ましいとされています。
また、総務省が公開している「テレワークセキュリティガイドライン」を活用して、各種対策や労働者への教育の実施も推奨されています。
企業と従業員、双方にとって良いテレワークの実現を目指して
テレワークを導入するには検討すべき項目が多く、頭を悩ませている企業も多いでしょう。対応に迷ったら、国が公開している資料を参考にしてみましょう。「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」には、テレワーク導入時の留意点や対策が詳しく記載されています。
今回紹介したポイント以外にも参考になる内容が多く記載されているので、このガイドラインを活用して自社にとってベストなテレワーク環境を模索してみてください。