テレワークにおける正しい勤怠管理とは?課題と対策を解説

  • 投稿日:2021 - 6 - 29
  • 更新日:2022 - 11 - 22
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テレワーク化を進めるうえで課題になるのが「勤怠管理」です。従業員にとってはオフィスワークに比べて働く時間や場所を柔軟に活用できるというメリットがある反面、労務担当者はテレワークに適した勤怠管理の仕組みを整備する必要があります。ウィズコロナ・ポストコロナのテレワーク環境に対応するために労務担当者が知っておくべき勤怠管理の課題と対策について解説します。

テレワークにおける勤怠管理の課題

テレワークは、多様な働き方を可能にする制度です。通勤が困難な状況が発生しても通常業務への支障が少なく、また育児や介護といった家庭の事情にも柔軟に対応できます。人材確保や働きやすい環境整備には、欠かせない施策の一つとなっています。

一方、オフィス以外の場所で、かつ上司など管理者とは物理的に離れて仕事をする点から、テレワークならではの勤怠管理の課題が発生します。

通常の労働時間制度では労務管理が難しい場合がある

テレワークには、自宅で勤務する「在宅勤務」、遠隔勤務用の施設を利用する「サテライトオフィス勤務」、移動しながら勤務する「モバイル勤務」の就業形態があります。

テレワークに通常の労働時間制度を当てはめることは問題ありません。始業・終業時刻を定め、1日8時間・週40時間という法定労働時間の原則に基づいた通常の労働時間制を用いた際は、労働者はオフィスに出勤していた頃と同様に、毎日決まった時間帯に働く形になります。

ただし、「会社にいる時間=勤務時間」という考え方をそのまま置き換えることは要注意です。まず、テレワークでは管理者の目が届きません。そのため、始業・終業時間を遠隔でも把握できる管理方法が必要です。さらに、子どものお迎えや被介護者の病院の付き添いなど、個人のやむを得ない事情で業務を中断するケースも考えられます。

通常の労働時間制度では自社のテレワークに馴染みにくいと判断される場合は、他の労働時間制度を検討してみましょう。

テレワーク特有の「中抜け時間」問題

テレワークの労働時間の把握で避けて通れないのが、従業員の「中抜け時間」問題です。

中抜け時間とは、従業員が業務から完全に離れ、自由にできる時間のことをいいます。テレワークの場合、在宅で勤務するなどの環境要因から、家事や育児・その他の事由でこうした中抜け時間が生じやすいことが考えられます。

中抜け時間だけではなく、部下がいま現在どのような仕事に取り組んでいるのか、業務量が見えなくなるのもテレワークの課題です。オフィスで行っていたようなちょっとした報告や相談が難しくなります。

何をしているのか見えない状況は、コミュニケーションのすれ違いが生じる一因になります。就業規則の変更等で運用とのズレを調整するだけではなく、タスクを見える化するテレワークならではの管理スタイルが求められます。

違法な長時間労働が発生してしまう可能性もある

姿が見えないため、部下が「ちゃんと仕事をしているのか」気になってしまうテレワークですが、一方で長時間労働を誘発してしまう環境である点も認識しなければいけません。

内閣府が取りまとめた資料によれば、2020年4月以降のテレワーク勤務において長時間労働になることが「ある」と答えた割合は半数に上りました(日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査」2020年6月5日~6月9日)。ほかにも、時間外・休日労働をしたにも関わらず申告していない割合が6割を超えるなど、適切な労働管理を行き届かせるのが難しいことがわかります。

企業は全労働者の実労働時間を適切に把握する義務があります。長時間労働は健康への悪影響のリスクやパフォーマンスの低下といった可能性をはらんでいます。客観的に始業・終業時間および休憩時間を把握し実労働時間を管理できる方法を用いて、現状を把握しなければいけません。

長時間労働が認められる従業員に対しては、メリハリをつけた業務遂行の仕方をアドバイスしたり、業務量を調整したりするなどの対応が求められます。

快適なテレワーク環境を実現する勤怠管理のポイント

これらのテレワークの勤怠管理の課題に対しては、適切な制度や規則を導入することが、ルールと運用の乖離をなくすポイントです。

適切な労務制度の導入

テレワークの導入にあたり、一番多いケースは通常の労働時間制をそのまま用いることですが、そのほかの労働時間制度に切り替えることも可能です。

  • 変形時間労働制
    特定の期間の実労働時間を平均して、週40時間以内の範囲であれば1日及び1週間の法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて勤務ができる労働時間制度です。始業・終業時間が固定にならないため、通常の労働時間制度よりも柔軟性があります。変形労働時間制の期間は、1週間単位・1か月単位・1年単位の3パターンがあります。
  • フレックスタイム制
    従業員が始業・終業時間を自由に選択できる制度です。変形時間労働制の一種であり、同様に特定の期間(1か月)の実労働時間を平均して週40時間以内であれば、法定労働時間を超えての勤務が可能です。朝型・中抜け時間など、個人の事情に合わせて勤務時間を設定できます。コアタイムと呼ばれる必ず労働をしなければいけない時間帯を設けることもできますが、必須ではありません。コアタイムがないフレックスタイム制をスーパーフレックスタイムと呼ぶこともあります。
  • 裁量労働制
    労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種において、あらかじめ労働時間を定め、その時間分の賃金を支払う労働時間制度です。勤務時間や勤務場所を完全に従業員の自由な選択にゆだねることができますが、適用できる職種に制限があります。
  • 事業場外みなし労働時間制
    従業員が事業場外で業務を行い、労働時間の算定が困難であるときに適用される労働時間制度です。ただし、テレワークで事業場外みなし労働時間制を適用する場合は、「情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」「随時使用者の具体的な指示に基づいて業務をおこなっていないこと」の2点の要件を満たさなければいけません。テレワークの環境によっては、事業場外みなし労働時間制の適用が認められない場合もあるため注意が必要です。

これらの労働時間制の変更は、就業規則への明記や労使協定に定めることによって導入できます。なお、始業・終業時間や1日の労働時間数に柔軟性をもたせるのがこれらの労働時間の特徴です。法定労働時間を超える時間外労働や深夜・休日労働については、通常の労働時間制度を導入しているときと同様に、労働基準法が適用されます。

客観的な記録を活用した労働時間の把握

従業員の姿がみえないテレワークでは、客観的な記録が適切な勤怠管理のポイントになります。

テレワークの勤怠管理の方法は、パソコンの使用時間の記録を用いるほか、Eメールやチャットにて始業・終業時間を報告する、勤怠管理ツールを用いるといった方法があります。
労働時間をエクセル等に記録させるなど、従業員の自己申告にすることも可能です。

ただし、自己申告を用いる場合は、事前に管理者が従業員に十分な説明を行う必要があります。また、メールの送信時間などで実際の労働時間と記録に乖離が見られるようであれば、実態調査を実施します。さらに、始業・終業時間の変更や就業時間を短く申告させるなど、管理者は適切な自己申告を妨げてはいけません。

また、中抜け時間の対応については、なにが中抜け時間にあたるのかをしっかりと定義した上で、中抜けする際の対応について就業規則に明記しましょう。

長時間労働対策の整備

長時間労働への対策には、長時間労働を行う労働者や部署の管理者への注意喚起をするほか、システム制限により長時間労働を誘発しない環境整備ができます。

一定の時間帯は社内システムへのアクセスを遮断する、休日・深夜労働の時間帯にアクセスする場合は事前の承認を必要とする方法があげられます。また、就業時間外のメール送信をしないという社内ルールを徹底することも、長時間労働対策になります。

用途に合わせたツールの活用

テレワーク環境にあわせたツールを活用することで、より快適な仕事環境をつくることができます。

プライベートとの区切りが曖昧になる、メリハリがつかないといった働き方の悩みについては、時間管理やタスク管理を効率的に行えるツールを導入します。Webカレンダーで従業員のスケジュールが可視化されていれば、打ち合わせの調整の工数が減らせるほか、空き時間を確認して報告や相談もしやすい雰囲気がうまれます。

また、一人で仕事をする在宅勤務では孤独感に悩まされることも少なくありません。その場合、ビデオ通話を行うツールで雑談の時間を設けたり、ランチ会を設定したりする方法も効果的です。

3. 柔軟な規則やツール導入で労務管理者も従業員も快適なテレワークを実現

テレワーク 勤怠管理

テレワークの適切な勤怠管理には、実態にあわせた柔軟性のある規則を導入する他、ツールを用いて業務の見える化や客観的な労働時間の記録を行うことが重要です。

moconavi(モコナビ)はテレワークに必須のセキュリティを確保することはもちろん、各種勤怠ツールとの連携もスムーズに行えます。管理者・従業員など個別にツールの権限設定が可能であり、長時間労働の抑制にも役立ちます。テレワークの勤怠管理方法についてお悩みの方は、ぜひmoconaviをご検討ください。

 

 

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