テレワークに合った人事評価とは?事例とともに人事評価制度について解説

  • 投稿日:2020 - 11 - 30
  • 更新日:2023 - 4 - 13
  •   

新型コロナウイルスの感染拡大によって急速に推進されてきたテレワークは、ライフワークバランスの実現や通勤時間のカットによる労働負荷の低減など、従業員にとっては多くのメリットがあります。

しかし、従業員の働きぶりが見えなくなり人事評価が難しくなるという課題もあり、人事部にとって悩ましい問題も。

この記事では、テレワークにおける人事評価の課題を踏まえ、企業の事例を交えながらテレワークにおける人事評価のあるべき姿について解説していきます。

人事評価とは?

人事評価とは、従業員の能力や業績を評価し、報酬や役職などに反映させることです。主に、上司からの評価や目標に対する達成度、本人が有するスキルなどが指標になります。

評価の結果は報酬や昇格を左右するため、従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。ひいては組織全体の成長や発展にも影響するため、重要なプロセスです。そのため、正しい評価方法を選定し、従業員が納得できるような人事評価の実施が求められます。

人事評価の種類

人事評価は、主に次の3つの評価方法があります。

・業績評価
・能力評価
・情意評価

3つの評価方法について解説します。

業績評価:成果やプロセスに対する評価

業績評価は、従業員の達成した成果や業績、そこに至るまでのプロセスなどを評価する方法です。
あらかじめ設定した目標に対する達成度合いや具体的な成果など、定量的な評価指標を用います。

能力評価:発揮された能力に対する評価

能力評価は、職務に取り組むうえで発揮された能力やスキルを評価する方法です。
従業員本人が持つ知識や技能、コミュニケーション能力や問題解決力など、定性的な評価指標を用います。

情意評価:態度や意欲に対する評価

情意評価は、勤務態度や職務へのモチベーション・意欲を評価する方法です。
職場での振る舞いや仕事への取り組み方、協調性など、定性的かつ本人の内面・心理的な部分を評価指標として用います。

人事評価の対象期間と評価回数

人事評価は半年に一度、対象期間を6ヶ月として実施する企業が多い傾向にあります。ただし、「成果と評価のタイミングがずれる」といった理由から、対象期間をより短く設定し、評価回数を増やしているケースもあります。

例えば、Googleなどが採用している目標管理フレームワークである「OKR」では、四半期ごとに目標設定と評価を行うのが一般的です。

テレワークにおける人事評価は難しい?代表的な3つの課題

株式会社あしたのチームが公開している「テレワークと人事評価に関する調査」によると、部下の人事評価をする管理職のうち73.7%がテレワーク時の人事評価について「オフィス出社時と比べて難しい」と回答しています。

 

その理由として、「勤務態度が見えないから」「成果につながる行動(アクション数、内容等)を細かく把握しづらいから」「勤務時間を正確に把握しづらいから」が上位となりました。

 

上位3つの要因についてそれぞれ解説します。

勤務態度が見えない

テレワークでは従業員がそれぞれ別の場所で仕事をするため、勤務態度が見えません。そのため、特に本人のモチベーションや意欲を重視する情意評価を行っている企業では、人事評価が難しくなります。

Web会議や電話、チャットなどのコミュニケーション手段はありますが、オフィスで対面しながら仕事をするケースと比較すると、どうしてもコミュニケーションは希薄になりがちです。このような環境では、成果や数字には表れない部分の評価は難しくなります。

成果につながる行動(アクション数、内容等)を細かく把握しづらい

最終的な成果が出るまでに、さまざまなプロセスがあります。しかし、成果に至るまでのアクション数や内容を把握するための環境が整っていなければ、人事評価の参考にするのは困難です。

また、業務やプロジェクトに関わる人数が多いと、テレワークでは誰が何を担当したのか把握しづらいケースもあるでしょう。このような状況では最終的な成果以外の部分を正当に評価できず、従業員からの不満が生じる可能性があります。

勤務時間を正確に把握しづらい

オフィスワークでは出勤・退勤によって勤務時間を把握できますが、テレワークでは従業員が何時から何時まで働いたのかを、評価者が目で見て確認することはできません。勤務時間を正確に把握できないと、正当な評価ができないおそれがあります。

例えば同程度の成果を出した従業員が2名いた場合、勤務時間が短いほうがより生産性が高いと判断でき、評価も高くなるでしょう。しかし、それぞれの勤務時間が正確に把握できなければ、生産性で人事評価を行うのは困難です。

このように、効率的に仕事をこなしている人が正当に評価されなければ、優秀な人ほどストレスを感じてしまいます。

テレワークにおける人事評価制度の見直しの重要性

多くの企業では、従業員がオフィスで勤務することを想定した人事評価制度となっています。そのため、テレワークを導入したのに従来の評価制度のままでは、従業員を正当に評価できていない可能性が高いでしょう。

企業では、「オフィスに出社しない」というテレワークの特性を踏まえた人事評価制度の見直しが求められます。

テレワークに適した人事評価制度とは?

テレワークを推進するのであれば、その働き方に適した人事評価制度を取り入れていくことが大切です。テレワークに適した人事評価制度を構築するための施策やポイントを4つ紹介します。

360度評価

360度評価とは、管理職や上司だけでなく同僚や部下など、その従業員を取り巻くさまざまな立場の人が評価に関わり、多角的に人事評価を行う制度のことです。

対面で仕事をするオフィスワークは上司が成果までのプロセスを確認できるため、主に上司からの評価が重視されていましたが、テレワークではこのような評価は通用しません。

成果やプロセス、上司部下の関係だけでは見えづらい部分を評価するために、360度評価を取り入れるのが効果的です。

明確な評価項目

成果が可視化されにくい業務では特に、成果だけを重視した人事評価では正当な評価が受けられないと感じ、従業員のモチベーション低下につながるおそれがあります。

そこで、テレワークを行う従業員に対しては、テレワークにふさわしい評価項目を明確化することが重要です。成果からは見えてこないプロセスや技能などについて、何をどのように評価するのかを明確にしたうえで、従業員と認識を共有しておきましょう。たとえば、オンライン面談でプロセスに関する聞き取りをして、取り組んでいる業務の難易度や、業務の進め方、対応のスピードなども評価対象とすることなどがあげられます。

目標管理制度の導入

目標管理制度とは、ピーター・ドラッガーが提唱した組織マネジメント手法で、従業員一人ひとりの目標と組織の経営目標を連動させて考える人事評価の仕組みです。「能力開発目標」「職務遂行目標」「業務改善目標」「業績目標」という4つ目標を設定し、期間ごとに達成度を評価していきます。

具体的には、まず従業員が自分で設定した目標に近づくための指標を設定し、上司と共有します。上司は、その内容が組織の目標と関連づいているか適正度を確認し、目標達成のためのサポートをします。こうすることで、目標に対する取組み方を評価することができるだけでなく、従業員のモチベーションやセルフマネジメント能力の向上も期待することができるのです。

評価方法の統一

テレワークに限った話ではありませんが、人事評価制度において重要なのは、評価内容について、評価される側に疑念や不公平感を抱かせないようにすることです。せっかくテレワークに適した評価制度を導入しても、「上司や人事担当者が変わったら評価の内容やプロセスも変わった」となると問題です。評価制度の変更とともに、評価方法を社内で統一するようにしましょう。

また、評価に偏りが無いかどうかを確認するプロセスを加えたり、評価のためのガイドラインを作成したりするなど、評価の質を均一にするための工夫もあわせて検討するとよいでしょう。

テレワークにおける人事評価を円滑に行うために意識したいポイント

テレワークにおける人事評価を円滑に行うために、以下の2点を意識しておきましょう。

・1on1の活用
・チームでの情報共有

2つのポイントについて解説します。

1on1の活用

1on1とは、週に1回から月に1回程度の短いサイクルで上司と部下が1対1の面談を実施することです。面談時間は長くて30分程度で、上司が部下の状況について積極的にヒアリングするために行います。

テレワークではコミュニケーションが希薄になりがちなため、1on1のように上司が部下の状況を把握しやすい仕組みを活用しましょう。定期的な面談の実施によって、テレワークでも成果だけでなくプロセスや本人の意欲なども評価しやすくなります。

チームでの情報共有

成果までのプロセスや従業員のモチベーションを把握しやすくするには、チームでの情報共有も大切です。

定期的にチームで進捗を確認したり課題を共有したりする場を設けることで、従業員それぞれの調整力や課題解決力、企画提案力など、人事評価の参考になるさまざまな面が見えてきます。

1対1の面談だけでは把握しづらい部分も評価するために、チームや部署単位でのコミュニケーションも忘れず行いましょう。360度評価をしやすくするためにも必要です。

テレワークで人事評価制度を改善した企業事例

自社でのテレワーク推進や人事評価制度の改善を検討するにあたっては、先駆者の事例を参考にするのもよいでしょう。ここでは、厚生労働省が公開している「テレワーク活用の好事例集」より事例を紹介します。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社

ソフトウェアの開発・販売・保守・サービスを行うシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、米国フロリダ州に本拠地を構える親会社の日本法人として2009年よりテレワークを推進。従業員のワーク・ライフ・バランスの向上を目的として、自宅にインターネット環境があることを条件にテレワークを推奨しています。

人事評価においては裁量労働制を採用。その日の仕事の成果が評価対象となり、よりパフォーマンスを高めることが評価につながります。育児との両立のため在宅勤務を利用した例もあり、自己規律、自己管理能力が求められるといいます。

社員への満足度調査結果では非常に高い評価を得ており、「忙しいときにも、役所に行ったり病院に行ったりできるので、生活の質が向上している」といった声も上がっているそうです。さらに、2013年からはスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの利用も可能にし、より良いテレワーク環境を目指しています。

株式会社SiM24

幅広い分野や製品に関する「受託シミュレーションサービス」を提供する大阪の企業、株式会社SiM24は、雇用形態にとらわれず優秀な人材を確保し、継続雇用することを目的としてテレワークを導入。高度なシミュレーション業務を担当する従業員全員の完全在宅勤務を実現しています。

人事評価については、信頼関係をベースにしながら正社員は8時間の勤務時間内、その他の雇用形態の従業員は労働時間を報告してもらい、勤務時間に対して適正な成果物をあげているかどうかで評価をしています。正しく判断するために、本人からの週次報告、お客様への実際のアウトプットの確認まで、細く管理を行うようにしています。

テレワークにより、本社のスペースを最小限にすることが可能になり、また、遠隔地でも働けるようになったため、従業員が転居した場合も継続雇用ができるようになりました。

テレワークの特性に合わせた人事評価制度の構築が重要

テレワークには「勤務態度が見えない」「勤務時間を把握しづらい」といった特性があり、多くの企業が人事評価の課題を感じています。テレワークにおける人事評価に関する課題の解消には、360度評価の導入や評価項目の明確化、1on1の活用といった施策が効果的です。

新型コロナウイルスの流行をきっかけにテレワークを導入し、そのまま継続している企業も多いのではないでしょうか。テレワークが多くの企業に浸透しつつあるなかで、オフィスワークが前提の人事評価制度は見直しが必要です。

本記事で紹介した制度や意識しておきたいポイントを参考に、自社の人事評価制度を見直してみてください。

総務・人事担当者必見!

総務・人事担当者必見!

BYODのメリットや導入に向けたステップを解説

近年、テレワークの普及とともに注⽬されているBYOD。従業員の私物端末を利⽤することで機器コスト削減や業務効率向上につながるなど多くのメリットがあるため、関⼼を寄せる総務・⼈事担当者も多いのではないでしょうか。
BYODの運⽤前に、⽬標とする導⼊時期に向けてどういった⼿順で進めればいいか知っておく必要があります。BYODを導⼊するための⼿順とポイントについて解説しています。

この記事をシェアする

関連記事

テレワーク導入方法【完全ガイド】導入プロセスと成功のポイントまとめ テレワーク導入方法【完全ガイド】導入プロセスと成功のポイントまとめ テレワークのストレス原因とその解消法とは?総務担当者が注意すべきこと テレワークのストレス原因とその解消法とは?総務担当者が注意すべきこと