テレワークの導入率・企業が導入するメリットとは?成功事例とともに解説

  • 投稿日:2021 - 11 - 10
  • 更新日:2022 - 12 - 28
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働き方改革や新型コロナウイルスへの対策などで導入する企業が増えた「テレワーク」。

政府も推進しているテレワークは、国内でどれくらい導入が進んでいるのでしょうか?

今回は、国内におけるテレワークの導入率や、導入した企業の成功事例などを解説します。自社のテレワークについて見直しを考える際、参考にしてみてはいかがでしょうか。

日本企業におけるテレワークの導入状況

まずは、実際にどのくらいの企業がテレワークを導入しているのかをみていきましょう。

テレワークの導入率

2022年7月に内閣府が公開した「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査」では、全国のテレワーク実施率は2022年6月時点で30.6%となっています。2019年12月時点では10.3%であったため、新型コロナウイルス感染症の流行開始以降にテレワーク実施率が伸びていることがわかります。

テレワークの普及状況

東京と地方圏でテレワークの普及状況を比較してみると、東京23区のほうが地方圏よりも実施率が高いという結果が出ています。先述の内閣府の調査では、2022年6月時点のテレワーク実施率は、東京23区が50.6%であるのに対し、地方圏は22.7%でした。

新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年12月から2022年6月までの東京と地方圏のテレワーク実施率はそれぞれ以下のようになっています。

 

地域別のテレワーク実施率

出典:内閣府「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査

コロナ渦のピークを過ぎた2022年6月も、コロナ以前に比べてテレワークを実施している企業が多いことが読み取れます。業種別でみると、特に実施率が高いのは情報通信業で、2022年6月は、全体が30.6%であるのに対して75.9%でした。

また、対面でのサービスが主流である小売業(16.2%)や医療・福祉(12.4%)などもテレワーク実施率は上昇傾向です。業界ごとにばらつきはありますが、全体としてコロナ渦以前よりも、テレワークを導入する動きが見られます。

テレワークを導入するメリットとは

テレワークを導入すると、さまざまなメリットがあります。

ここでは、テレワークを導入する4つのメリットを紹介します。

多様な働き方の実現につながる

テレワークはオフィスに出社する必要がなく、従業員が自分で働く場所を選べるようになるため、多様な働き方の実現につながります。例えば自宅で仕事ができるようになれば、保育園の送り迎えや通院といった育児や介護でイレギュラーな予定が入っても対応しやすくなります。

また、国内だけでなく海外にいても仕事ができるため、今の仕事を続けながら自分の住みたい場所・国に引越すことも可能です。このように、家庭の事情や個人の希望に合わせて柔軟に働き方を選べるのは、テレワークの大きなメリットです。

業務効率化につながる

オフィス勤務は周囲の人に話しかけられたり電話や来客があったりして、作業を中断せざるをえないシーンも少なくありません。一方、テレワークは基本的に一人で仕事をするため、集中が途切れにくく業務効率化につながるのもメリットです。

「静かな場所でないと集中できない」という人もいれば、「少し雑音があるほうが仕事がはかどる」という人もいるでしょう。テレワークならそれぞれが一番集中できる場所を選んで働けるので、生産性の向上も期待できます。

交通費などの固定費を削減できる

オフィスへの出社が不要になることで、従業員に支払う交通費を削減できます。一度に出社する人数を減らしてオフィス面積を縮小すれば、賃料のコストダウンも可能です。交通費やオフィスの賃料はオフィス勤務を続ける限り大きく削減するのは難しいため、これらの固定費を削減できるのは企業にとって大きなメリットといえます。

採用力の強化につながる

テレワークの導入によって、さまざまな事情で出社が難しい人や、離れた場所に住んでいる人も採用の対象となり、採用力の強化につながるのもメリットです。オフィス勤務が必要な場合、採用の対象は近隣に住んでいる人や転居を承諾してくれる人に限られます。しかし、それでは条件に合う人材が見つからないケースもあるでしょう。テレワークの導入で居住地を問わずに採用できるようになれば、条件にマッチする人材を見つけやすくなります。

また、テレワークの導入は「従業員を大切にしている」というイメージにつながり、ブランディングにも効果的です。自社を希望する求職者が増え、より優秀な人材を採用しやすくなる効果も期待できます。

テレワークを導入するデメリット

テレワークには多くのメリットがありますが、一部デメリットもあるため注意してください。

ここでは、テレワークを導入する3つのデメリットを紹介します。

コミュニケーションが不足する場合がある

テレワークは従業員がバラバラの場所で働くことになるため、オフィス勤務と比較してコミュニケーションが不足する場合があります。テレワークではチャットやWeb会議などオンラインでのコミュニケーションがメインとなり、直接会って会話をする機会はそれほどありません。

人によっては孤立感を感じやすく、コミュニケーション不足による進捗の遅れやトラブルを招く可能性もあるため、注意が必要です。

労務管理が難しくなる

テレワークであっても労働基準法は適用されるため、労働時間を正しく管理しなければなりません。しかし、テレワークではそれぞれが異なる場所で働くため、残業のしすぎや休日の勤務などに気付きにくく、管理者の把握していないところで長時間労働が発生してしまうおそれがあります。

このような事態を防ぐために、オフィス勤務とは異なる勤怠管理の仕組みが必要です。オンライン上で始業・終業の打刻ができる勤怠管理システムを導入し、必要に応じてパソコンのアクセスログなどを使って長時間労働が発生していないかどうかの確認が求められます。

セキュリティリスクが高まる場合がある

テレワークを行うには、オフィスの外から社内システムにアクセスする必要があります。また、パソコンを持ち歩いたりカフェなど公共の場所で仕事をしたりする従業員もいるでしょう。このような場合、セキュリティリスクが高まる点にも注意しなければなりません。

安全な通信を提供するVPNや、セキュリティが強固なクラウドサービスなど、社外でも安全に仕事ができる環境を整えることが大切です。加えて、パソコンの紛失や盗難、ウイルス感染などを防ぐため、従業員へのセキュリティ教育も行いましょう。これらのテレワークのデメリット(課題)は、「ハイブリットワーク」というテレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方で解決できます。

ハイブリットワークについて詳しくはこちら

テレワークを導入した企業の成功事例

テレワークを導入した企業は、一体どんな成果を挙げているのでしょう。実際にテレワークを導入している企業の取り組み内容と成果を見れば、テレワークがもたらす効果がいかに高いのかがイメージできるはずです。

ここからは、5団体のテレワークやハイブリッドワークの成功事例を紹介します。

ハイブリッド型勤務体制へ完全移行(株式会社メタップス)

株式会社メタップスでは、2018年から特定の職種や育児・介護を行う従業員などを対象にテレワークの導入を進めていました。その後、2020年1月から新型コロナウイルス感染症対策として全従業員に対象を拡大。2021年7月にはテレワークとオフィス勤務を従業員が自由に選べるハイブリッドワークを採用しています。

働く場所を選ばないため、地方在住者や障がい者、育児・介護者などさまざまな事情を抱える従業員も働きやすい環境の整備に成功しました。フルリモートでのインターン生の受け入れなども行い、より幅広い層の雇用を生み出しています。

テレワーク導入で育休復帰率100%を実現(株式会社インターファクトリー)

株式会社インターファクトリーは、新型コロナウイルス感染症の流行前から育児・介護者を対象としたテレワーク制度の導入や、地方へのサテライトオフィスの設置と現地採用などに積極的に取り組んでいました。2020年7月からはテレワークの対象を全従業員に拡大し、より柔軟に働けるようフレックスタイム制度のコアタイム撤廃や、時間単位の年次有給休暇制度を導入しています。

テレワークの導入によって、2021年度は育児休暇復帰率100%を達成しました。また、同社の働き方に共感した求職者が増えたことで、過去5年間で従業員数が1.84倍になるなど、人材確保にも成功しています。

さらに、テレワークや営業のオンライン商談により、通勤にかかる交通費や出張費を削減することで、年間で約1,500万円のコストダウンも実現できました。

ペーパーレス化やツール導入で建設業界のテレワーク化を推進(エクシオグループ株式会社)

エクシオグループ株式会社は、東日本大震災をきっかけに2014年からテレワークの導入に取り組んできました。在宅勤務だけでなくサテライトオフィス勤務やモバイル勤務を許可していて、DXによるペーパーレス化や業務効率化も進めています。

テレワークの導入によって現場や客先でのタイムリーな対応が可能になり、顧客満足度の向上にもつながっています。また、電気使用量や紙の購入量が減ったことで、コスト削減にも成功しました。

業務用携帯電話から自社のPCにアクセスできるリモートデスクトップを採用(株式会社かんぽ生命保険)

株式会社かんぽ生命は、2019年11月より時間制約のある従業員の働きやすさ実現や、外出や移動の多い従業員の生産性向上のために在宅勤務・モバイルワークを導入しました。その際、共用のテレワーク用モバイル端末を導入しています。

その後テレワークを全社展開するにあたり、テレワーク用モバイル端末と業務用携帯電話を貸与し、リモートデスクトップ方式で社内のパソコンに接続して業務を行う仕組みを整えました。そのほか、Web会議ツールを社内の会議だけでなくお客様とのコンタクトにも活用することで、顧客満足度も向上させています。

働く場所は時間の選択肢を設けて従業員のライフワークバランスを向上(カンロ株式会社)

カンロ株式会社は、より柔軟な働き方を実現するためにフレックスタイム制度のコアタイムを見直しています。コアタイムを10:00〜15:00から13:30〜14:30に短縮することで、多くの従業員が家庭と仕事の両立ができるようになりました。

テレワーク対象者全員にパソコン・スマートフォン・SIMカードを貸与し、利用ルールを明確化してセキュリティ対策を実施しています。また、異動先がテレワーク可能な場合は転居を伴わない転勤を許可し、異動があっても従業員が単身赴任せずに勤務ができ、家族と離れずに暮らせる制度も整えられています。

中小企業がテレワークを導入する際に発生する3つの課題

テレワークを導入するメリットは大きいですが、東京商工会議所による「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」では2022年5月の東京23区における中小企業のテレワーク実施率は29.7%となっており、中小企業に関しては決してテレワーク導入が進んでいるとはいえません。

ここでは、中小企業への導入を阻む3つの課題と解決のヒントを紹介していきます。

初期費用とランニングコスト

テレワークを導入する場合、まず立ちはだかる課題が「コスト」です。専用のパソコンやモバイル端末の貸与、テレビ会議などのハードウェアを整備する初期費用は、1人あたり平均約10万円かかるといわれています。

さらに、それらツールのランニングコストを考えると費用の課題は大きく、なかなか導入に踏み切ることができません。そこで、国や自治体で行っている助成金を活用することをおすすめします。

いろいろな助成金がありますが、例えば厚生労働省による「時間外労働等改善助成金」は、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業を支援する助成金です。

初めてテレワークを導入する場合はもちろん、継続する場合においても支援を受けられるため、有効に活用できるでしょう。

そのほか、総務省による「ふるさとテレワーク」は、地方の過疎化を防ぐ狙いで生まれた制度です。地方の自治体や民間企業でテレワーク導入を考えているのであれば、ぜひチェックしておきましょう。

また、東京都による「テレワーク導入ハンズオン支援助成金」という仕組みもあります。東京都が実施するハンズオン支援コンサルティングを受けた場合、その提案内容に基づいたテレワーク導入にかかる経費を助成することで、テレワーク環境構築の推進を支援する制度です。

このような助成金を活用し、テレワークを実現していきましょう。

社内制度の維持や管理

社員がオフィスに出社しない働き方では、従来の社内制度が馴染まず、課題を抱えている企業も少なくありません。

代表例として、「残業や休憩、休日出勤や有給といった勤怠管理が難しくなる」「一人ひとりの仕事ぶりが把握しにくく、人事評価の基準が今までと同じでは通用しない」「社外に情報が持ち出されることが増えるので、情報漏えいのリスクが高まる」などといった問題があり、テレワーク導入にはそれなりに慎重な姿勢が必要になってきます。

実際に導入に踏み切る際は、リスクを抑えるためにも、就業規則の見直しや管理システムの導入など、専門家のサポートを受けながら進めていくことが大事です。あらゆる出来事を想定しておけば、万が一トラブルに見舞われたとしても冷静に対処ができるでしょう。

社内のコミュニケーション低下

中小企業ほど、自社の生産性を維持・向上させるためには、社内のコミュニケーションが必要不可欠です。しかし、テレワークは従業員同士が離れて仕事をするため、コミュニケーション低下の懸念が拭えません。

これを解決するためには、リアルタイムにやり取りができるチャットツール、お互いの顔が見えるテレビ電話やWEB会議の導入が必要になります。

その一方で、これらのツールにあまり過度に頼りすぎていると、ストレスを与える可能性も否定できません。利用するときは適度な使用を心がけましょう。ストレスが生まれないようにするためにも、きっちりとルールを定めておく必要があります。

テレワーク ✖️ オフィス勤務 =「ハイブリッドワーク」で多様な働き方を実現しよう

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、全国的にテレワークを導入する企業が増えています。テレワークは多様な働き方の実現や採用力の強化などメリットが多い反面、コミュニケーション不足やセキュリティリスクには注意しなければなりません。

本記事で紹介した成功事例のなかに、テレワークとオフィス勤務を組み合わせた、いわゆる「ハイブリッドワーク」の例もありました。テレワークとオフィス勤務のそれぞれのメリットを掛け合わせ、従業員が働き方を選べるハイブリッドワークは、多様なライフスタイルに馴染みます。

ハイブリットワークを実現するためには、テレワークを前提とした環境や制度を整える必要があります。助成金をうまく活用して、誰もが働きやすい環境を目指しましょう。

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