中小企業は何からはじめるべき?働き方改革に必要な対策と労働環境の整備

投稿日:2019 - 8 - 19

ワーク・ライフ・バランスや生産性の向上などを目指し、国を挙げて取り組みが進められている「働き方改革」。積極的に改革を進める企業も増えており、各企業はさまざまな対策を考えなければなりません。

今回は、働き方改革の基本的な考え方や目的をはじめ、法改正の内容や中小企業における具体的な対策などを紹介していきます。

働き方改革とは

働き方改革関連法の成立により、労働に関わるさまざまな法律が改正され、順次施行されています。法律を順守した対策を立てるためにも、まずは働き方改革の考え方や目的などについて正しく理解しておきましょう。

働き方改革の基本的な考え方

働き方改革とは、働く人がそれぞれの事情に応じ、多様なワークスタイルを選択できる社会を目指すというものです。日本は少子高齢化の影響もあり、労働力が慢性的に足りなくなっています。
人手不足は生産性の低下につながるだけでなく、個人への負担が多くなりがちなので、モチベーションが下がる要因にもなります。このような状況を解消し、かつ個人の事情に応じた勤務形態に対応するために、働き方改革が本格的に推進されるようになりました。なかでも、日本の雇用の7割を占める中小企業や小規模事業者にかかる期待は大きくなっています。改革の目的を正しく理解するとともに、対応や環境整備を着実に進めていくことが重要です。

働き方改革の2つの目的

働き方改革では、2つの大きな目的が掲げられています。

1つ目は「労働時間法制の見直し」で、働きすぎを防ぎながら「ワーク・ライフ・バランス」や「多様で柔軟なワークスタイル」の実現を目指します。有給休暇を取得しやすくするとともに長時間労働をなくして心身をリフレッシュさせたり、フレックスタイム制の導入などにより個人の事情に合わせた働き方を選択したりするためのものです。

2つ目は「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」で、給与や福利厚生などにおいて正社員と非正規社員との間の不合理な差を解消させます。この2点を大きな柱として労働関係法が改正され、罰則が規定されるなど環境の整備が行われています。

働き方改革で中小企業が対策すべきこと

働き方改革は、単に企業内で対策を進めればよいというものではありません。労働関係法の改正も行われており、法律にしたがって義務や罰則などを負うこともあるのです。正しく対応するためにも、法改正の内容や中小企業がやるべきことを見ていきましょう。

残業時間の上限規制

これまでの日本では、働く上で残業をどれくらい行うか、明確なルールが定められていませんでした。企業が従業員に過度な残業を強いたとしても、行政指導が行われるのみだったのです。ところが、働き方改革にともなう労働基準法の改正により、残業時間に一定の上限が設けられることになりました。
中小企業では原則として2020年4月1日より新たな労働基準法が適用され、定められた残業の上限を超えると罰則が科せられるため注意しなければなりません。

残業時間の上限はどの中小企業も同じで、原則として1カ月あたり45時間、年間で360時間までとなっています。企業は法令遵守のためにも従業員ごとに正確な労働時間を把握し、適正に管理していかなければなりません。
定められた労働時間の中でこれまで通りの成果を上げるには、ITを活用した業務の効率化などを通して生産性向上を図ることが求められます。

年次有給休暇の確実な取得

年次有給休暇は、労働者に認められた権利の一つです。ところが、厚生労働省が2016年に公表した「就労条件総合調査の概況」によると、日本の企業における有給の取得率は48.7%しかありませんでした。
約半数において、所定の休暇を取れていないことを示しています。この現状を打開するために、国内すべての企業を対象として、2019年4月1日より年次有給休暇の確実な取得が義務化されました。10日以上の有給が付与される労働者に対し、1年間の休暇日数のうち5日に関して、企業が時期を指定した上で取得させることが義務付けられています。

従来は、従業員からの申し出がないと有給を取得できない企業が一般的でした。これでは従業員が遠慮してしまう可能性が高いため、企業側から取得をすすめる流れに改正されたのです。
企業は面談などを通して従業員に「いつ休みたいか」を聞き取り、計画的かつ確実に有給を取らせなければなりません。さらに、実際の取得状況を正確に把握し、年度の途中で有給を取った日が5日に満たない人に対しては休むように促すなどの管理が必要です。

労働時間の客観的な把握

従来は、従業員が時間外や休日などに働いた際に支払う割増賃金を適切に支払うため、労働時間を正しく把握することが求められていました。しかし、あらかじめ定められた時間内で勤務する裁量労働制の適用者に関しては、「みなし時間」によって割増賃金が計算されるため実際にどれくらい働いたか把握する義務がなかったのです。
これでは過剰な勤務を招き健康を損ないかねないため、裁量労働制で働く人なども含めたすべての労働者に対し、働いた時間を客観的に管理するよう義務付けられました。この改正は、すべての企業を対象に、2019年4月1日より施行されています。

仕事を始めた時間と終わった時間を把握することで、長時間働き続けた人に対して医師の面談指導をしっかりと行うことができます。タイムカードやパソコンの稼働状況の記録など、労働時間を正しく管理できるシステムの整備も必要です。

フレックスタイム制の拡充

すべての企業を対象として、2019年4月1日からフレックスタイム制の拡充に関する法改正も行われています。従来は、労働時間の清算期間の上限は1カ月でした。1カ月の勤務が所定の労働時間に満たなかった場合、欠勤扱いになることもあったのです。
この点が見直され、清算期間が3カ月にまで延長されました。これにより、6月に多く働いた分を8月に休んだ部分へ振り替えるなどの柔軟な対応が可能になります。なお、3カ月を平均して法定労働時間に達していれば、割増賃金の支払いは必要ありません。

このように時期を延ばすことで、子育てや介護など個人の事情に合わせて働くタイミングを決められるため、より柔軟な働き方ができるようになります。
企業にとっては割増賃金が抑制できるケースもあるというメリットの一方、長い間にわたる勤怠管理が必要になり、手間がかかるというデメリットもあるので注意が必要です。

法改正は行われたものの、フレックスタイム制の導入や清算期間の延長を行うかどうかについては、企業ごとの判断にゆだねられているので慎重に検討しましょう。

高度プロフェッショナル制度

労働基準法では、働く時間や休日、割増賃金などに関して一定の規定があります。この規定を適用しないことが認められたのが、すべての企業を対象に2019年4月1日から施行されている「高度プロフェッショナル制度」です。
高度な専門的知識やスキルを持ち、職務の範囲がはっきりしていて一定の年収要件を満たす人に対し、働いた時間ではなく成果で評価する制度として新設されました。効率よく与えられた仕事をこなせば、数時間で帰宅することも可能です。

制度の導入には決められた手順を踏む必要があり、対象となる労働者の健康確保措置も徹底しなければなりません。導入するかどうかは、本人の同意や労使委員会の決議を前提として、企業が自主的に判断することができます。

勤務間インターバル制度の普及促進

2019年4月1日から適用される法改正では、すべての企業を対象に「勤務間インターバル制度」の導入も促されています。これは、1日の勤務が終了した後、次に出社するまでの間に一定時間以上の休息を確保するというものです。これにより、残業などで帰りが遅くなった場合など、帰宅後すぐに出社しなければならないという事態を防げます。働く人のプライベートや睡眠時間をしっかりと確保することで、健康状態やモチベーションの向上につながると期待されています。

厚生労働省で行われた有識者検討会では、休息は8〜12時間ほど取ることが望ましいとされました。ただし、勤務間インターバル制度の導入はあくまでも企業の努力目標であり、どれくらい休息を取るかという点についても明確な規定はありません。

産業医・産業保健機能の強化

労働安全衛生法により、労働者数が50人以上の企業では産業医を選任することが義務付けられています。この点についても、すべての企業を対象として法改正が行われました。2019年4月1日より産業医の活動環境を整備する必要があり、従業員の業務状況を提出するなどの対応を取らなければなりません。
これにより、産業医が従業員の健康相談に乗ったり、健康管理を適切に行ったりすることが可能になります。企業側も、従業員が安心して相談などを行えるよう、健康情報を適切に管理するなどの環境づくりが必要です。

残業の割増賃金率の引上げ

本来の勤務時間を超えて残業した場合、月60時間以上となる部分については割増賃金が支払われていました。中小企業の割増率はこれまで25%だったのですが、2023年4月1日からは大企業と同じく50%へと引き上げられます。
従来通りのペースで仕事をさせていると、残業代が大幅にアップしてしまうため注意が必要です。2023年の施行に備え、業務効率化などの対策を進めていかなければなりません。

同一労働・同一賃金

働き方改革では「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」が主たる目的に掲げられており、同一企業内において正社員と非正規社員の間で格差が生じてはならないとされています。
たとえば、基本給やボーナス、福利厚生など、あらゆる面において不合理な差をつくることが禁止されるのです。中小企業では、派遣労働者に対しては2020年4月1日より、パートタイムや有期雇用の人に対しては2021年4月1日より、待遇差を禁止する法律が施行されます。雇用形態にかかわらず、すべての従業員が納得して気持ちよく働けるようにすることが目的です。

このように法改正された背景には、女性に非正規雇用者が多く、男性と比べて賃金も低いなど、女性が能力を十分に発揮できない現状があります。
不合理が是正されることで、どんな雇用形態でも多様な働き方を選べるようになります。もし、社内で格差が残っている場合は、賃金規定や人事制度の見直しなどを行って解消を目指さなければなりません。福利厚生やキャリア形成、教育環境など、幅広いところまで含めた対策が必要です。

働き方改革実現の切り札は「テレワーク」

総務省では、働き方改革実現の切り札として「テレワーク」の導入を推進しています。テレワークは労働者にとってもメリットの多い新しい働き方であり、先進的な意識を持つ企業としてブランドイメージの向上に役立つ可能性もあります。
そんなテレワークの仕組みや企業が得られるメリットについて、詳しく見ていきましょう。

働き方改革とテレワーク

テレワークとは、「ICT」とも呼ばれる情報通信技術を活用し、オフィス以外で業務を行う新たな働き方のことです。時間や場所を選ばずに柔軟に働けるため、さまざまな問題を抱えてやむなく退職していた労働者も働き続けられる可能性があります。

テレワークには主に「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」という3タイプがありますが、いずれも本来のオフィスから離れて仕事をこなすという点は同じです。
働き方改革の目的のひとつに含まれる「柔軟な働き方がしやすい環境整備」に関して、テレワークはまさに最適な働き方だといえるでしょう。育児や介護などで家を離れられない従業員の福利厚生というだけではなく、働き方改革推進にともなう企業戦略としても有効な施策です。

中小企業にもメリットが多いテレワーク

テレワークは、従業員だけでなく企業にもメリットを与えてくれます。たとえば、従業員がオフィスに出社しないことで通勤時間を業務に回したり、自分の仕事だけに集中したりできるため、生産性の向上が期待できます。
自由で新しい働き方を導入している企業は人気も高く、優秀な人材の確保に有利なだけでなく離職率の低下にもつながるでしょう。交通費を支払う必要もなく、ICTによるやり取りがメインになることでペーパーレス化が進むなど、コストの削減も見込めます。
また、従業員や設備が1カ所に集まっていないため、災害時でもリスク分散が可能です。このように多くのメリットが得られるため、人員に余裕がない中小企業こそ、テレワークを導入する効果は高いといえます。

テレワーク環境を整備するときのポイント

魅力の多いテレワークですが、導入にあたってはいろいろと環境を整備しなければなりません。
まず、遠く離れた従業員と綿密に連携を取るためにも、ICT環境の充実は必要不可欠です。勤務状況を正確に把握するための勤怠管理や在籍管理をはじめ、業務の進捗状況などを逐一把握できるツールや共有化システムを整備しましょう。
また、従業員の勤務場所が分散することで、同じチーム内でのコミュニケーションが不足するケースもあります。チームワークの低下を防ぐために、メッセージや会議、ファイル共有などをチーム内でスムーズに行えるよう、ツールを活用して環境を整えることも必要です。

さらに、外部から社内のネットワークにアクセスすることになるため、情報漏洩やウイルス感染に対するセキュリティ施策も必須です。
従業員に使用させる端末は、セキュリティが徹底されたものを貸与するとよいでしょう。導入コストが不安な場合は、BYODを活用して従業員へ貸与する端末の数を減らすというのも効果的です。

テレワークを活用して働き方改革を推進しよう!

働き方改革推進にともない、中小企業でも法令にしたがった対策が必要となります。どんな対策を実施するかは企業ごとの判断に任されるケースも多いですが、多様な働き方に柔軟に対応するにはテレワークツールの導入が効果的です。

モバイル向けリモートアクセス「moconavi」を導入し、従業員にも企業にもメリットの多いテレワークを活用していきましょう。

前の記事:女性のワークライフバランスについて考えよう!制度の利用で実現を
次の記事:働き方改革には欠かせない!業務効率化の方法と実現プロセス