PHSサービスの終了による病院や介護施設への影響は?代替できる6つの通信手段

  • 投稿日:2021 - 9 - 30
  • 更新日:2024 - 11 - 27
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PHSとは、“Personal Handy-phone System”の略で、無線通信を用いて移動先で通話を行うシステムおよび機器を指します。現在の携帯電話が普及する以前に広く使用されていました。

事業者が提供する公衆PHSは、20233月でサービスが終了となりました。しかし、PHSが広く定着している病院・介護施設では、公衆PHSのサービス終了後も内線としてPHSを使い続けている場合があります

病院や介護施設の担当者のなかには、「公衆PHSのサービス終了によって病院や介護施設内のPHSへ影響はあるのか」「PHSに替わる通信手段を知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、PHSサービスの状況や病院・介護施設においてPHSが利用される理由、今後の影響、PHSに替わる通信手段について解説します。

なお、PHS問題に関する課題や対応策については、こちらの資料で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

 

PHSサービスの状況

PHSには、公衆PHSと構内PHSの2つがあり、2024年現在ではどちらに該当するかによって使用できるかが異なります。

公衆PHSは2023年3月にサービス終了

公衆PHSは、事業者が提供するPHSサービスを契約して利用する方式のPHSです。個人向けは2021年1月、法人向けは2023年3月にそれぞれサービスが終了したため、現在では使用できません。

公衆PHSは持ち運びができる通信手段として1995年ごろから普及が進んだものの、2000年代以降における携帯電話・スマートフォンの普及に伴って契約数が減少し、サービスの終了に至りました。

出典:総務省 情報通信統計データベース『携帯・PHSの加入契約数の推移(単純合算)(令和5年9月末時点)

構内PHSは2024年現在も使用可能

構内PHSは、施設の拠点内に自営のPHSアンテナを設置して、内線で通話を行う方式のPHSです。事業者を介さずに利用できることから、公衆PHSのサービスが終了した2024年現在でも使用可能となっています。

しかし、PHSの無線設備が古い場合には将来的に使用できなくなる可能性があります。

PHSの無線設備に規定されている“スプリアス規格″には旧規格と新規格があり、当初は2022年11月30日までの移行が法令で義務づけられていました。

現在では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を理由に、旧規格から新規格への移行期限は“当分の間”に延長されています。ただし、将来的に再設定された期限を過ぎた場合、旧スプリアス規格で製造された無線設備の使用は法令違反となってしまいます。

出典:総務省『旧スプリアス規格の無線設備への対応について』『新スプリアス規格への移行期限の延長

PHSが病院・介護施設で利用されてきた理由

PHSは、公衆PHS・構内PHSともに病院・介護施設等で広く利用されてきました。理由としては以下が挙げられます。

▼PHSが病院・介護施設等で利用されてきた理由

  • ほかの通信による電波干渉を受けにくい
  • 電磁波の影響が少ない など

医療機関・介護施設等においては、電磁波に弱い医療機器への電波干渉を防ぐ必要があることから、強い電波を発する携帯電話の使用は制限されていました。

そのため、機器への電波干渉を起こしにくいPHSが医療機関・介護施設等においては主流となっており、公衆PHSのサービスが終了した現在でも、構内PHSを使用し続けているケースが見られます。

構内PHSを使い続けることによる病院や介護施設への影響

PHSの電波は微弱なため、電磁波に弱い医療機器への電波干渉を防ぐことが求められる病院や介護施設などで取り入れられています。

 

厚生労働省の『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き』によると、2020年度のアンケート調査で業務用端末としてPHSを導入している病院は83.9%となっています。

 

▼病院の業務用端末としてのPHSの導入状況

画像引用元:厚生労働省『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き

 

ただし、公衆PHSがサービス終了した現在では、構内PHSを使い続けることで以下のリスクが懸念されます。

 

出典:厚生労働省『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き

 

買い替えやメンテナンスが高額になる

公衆PHSのサービス終了に伴い、PHS端末やアンテナの製造規模が縮小して価格が高騰することが見込まれます。その結果、構内PHSに必要な端末や通信設備を買い替えたり、メンテナンスを行ったりする費用が高額になる可能性があります。

 

また、故障や不具合が発生した際に、修理・復旧のための設備機器が手に入らなくなるリスクも考えられます。

電波の安定性や音声品質が低下する

構内PHSを使用し続けると、電波の安定性や音声品質が低下するリスクがあります。

 

構内PHSは、公衆PHSの電波信号と同期することで音声品質を向上させていました。公衆PHSのサービスが終了すれば、電波の同期が安定しなくなり、音声品質が低下する可能性があります。

スマートフォンに比べて作業効率が悪くなる

PHSは、最新のスマートフォンと比べて多様なアプリケーションを使用することができないことから、機能面で劣ってしまうと考えられます。

現在では4G・5Gの通信規格の登場やWi-Fiの普及によって、高出力で電波干渉の少ない無線通信がスマートフォンでも可能となっています。そのため、PHSよりもスマートフォンを活用する方が効率的に作業を行いやすいといえます。

構内PHSに替わる6つの通信手段

公衆PHSのサービス終了による影響や、無線設備の新スプリアス規格への移行に対応するには、構内PHSに替わる通信手段を活用して病院・介護施設の通信環境を整備する必要があります。

①法人携帯

法人携帯としてスマートフォンを病院・介護施設で契約して、スタッフに支給する方法が考えられます。前述のとおり、4G回線・5G回線であれば医療施設・介護施設においても問題なく使用が可能です。

個人のスマートフォンではなく法人携帯を活用するメリット・デメリットは以下のとおりです。

▼法人携帯のメリット・デメリット

メリット
  • スタッフのプライバシーを守れる
  • セキュリティ対策がしやすい
デメリット
  • 新規購入や機種変更にコストがかかる
  • プライベートで使用されないように管理する必要がある

②スマートフォンのIP無線アプリケーション

IP無線とは、インターネット回線を使って音声通話を行う仕組みです。IP無線アプリケーションをダウンロードすることで、スマートフォンをIP無線機として使用できます。

▼IP無線アプリのメリット・デメリット

メリット
  • グループ通話機能で一度に複数人と通話ができる
  • 相手が着信を受けなくてもトランシーバーのように音声が届く
  • 電話回線と比べて、災害時でも通信制限を受けにくい
デメリット
  • 使用料やデータ通信料が発生する
  • インターネットの通信障害による影響を受ける

IP無線アプリケーションを病院・介護施設に導入することで、職員がスマートフォンを使って情報共有を円滑に行えます。

③sXGP

sXGP(エスエックスジーピー)は、構内PHSの後継として規格された通信システムです。施設内に独立したプライベートネットワークを構築することで、公衆回線が使えなくなっても通信環境を確保できるようになります。

 

▼sXGPのメリット・デメリット

メリット
  • 電波干渉が少なく、医療機器への影響がPHSと同程度
  • 災害時に公衆回線が使えなくなっても単独で動作する
  • 独立したプライベートネットワークのため、セキュリティの安全性を確保できる
デメリット
  • PHSよりも通信速度が遅い
  • sXGPに対応した端末が限られる
  • 公衆回線とは別の契約が必要

 

病院・介護施設においては、PHSの後継機としての通話だけでなく、ナースコールや電子カルテの連携にsXGPの活用が期待できます。

④クラウドPBX

クラウドPBX(ピービ―エックス)は、電話交換機の機能をクラウド上で利用できるサービスです。クラウドPBXを使うと、内線と外線を一つのスマートフォンで利用できるようになり、業務効率の向上につながります。

▼クラウドPBXのメリット・デメリット

メリット
  • 通話内容の記録やバックアップが可能
  • 拠点の外からでも内線に対応できる
デメリット
  • 110や119などの緊急通報用の番号との通話ができない
  • 毎月の利用料金が発生する
  • 音声品質がインターネット回線の状況に影響される

クラウドPBXを病院・介護施設で活用すると、職員間の情報共有や患者とのやり取りを記録できます。また、営業時間外でも緊急の対応がしやすくなることも期待できます。

なお、内線電話にスマートフォンを活用する方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

内線電話にスマホを活用できる?その仕組みやメリットを解説

⑤IP-PBX

IP-PBX(アイピーピービ―エックス)は、インターネット回線を使用した電話交換機です。

クラウドPBXがクラウド上にサーバを設置するのに対して、IP-PBXは施設内に専用の機器もしくはサーバを設置して運用します。

▼IP-PBXのメリット・デメリット

メリット
  • 月額の使用料金が発生しない
  • 通話内容の記録やバックアップが可能
デメリット
  • 機器やサーバの設置と定期的なメンテナンスが必要
  • 長時間の停電で機能が停止してしまう
  • 音声品質がインターネット回線の状況に影響される

病院・介護施設では、IP-PBXを内線通話に利用するだけでなく、ナースコールと連動させて迅速な対応を実現できます。

⑥FMC

FMC(エフエムシー)は、固定電話と携帯電話の機能を一つにまとめたサービスです。FMCサーバに固定電話と携帯電話の情報を登録すると、固定電話にかかってきた電話をスマートフォンで受けたり、スマートフォンを内線として使用したりできます。

▼FMCのメリット・デメリット

メリット
  • 固定電話と携帯電話の契約を一つにまとめられる
  • 拠点の外からでも内線に対応できる
デメリット
  • 固定電話と携帯電話のサービス事業者を統一しなければ利用できない
  • 災害の発生時には、基地局の稼働状況に左右される

FMCを病院・介護施設に導入すると、サービス事業者の携帯電話網を利用して電話番号を共有できるようになり、内線と外線を区別なく対応することが可能です。

PHSからの切り替えは音声通話・ビデオ通話が可能な『moconavi』がおすすめ

公衆PHSは既にサービスが終了しており、構内PHSについてもその影響を受けることが懸念されます。また、旧スプリアス規格の古いPHSの使用を続けることは、将来的な法令違反のリスクにもつながります。

 

構内PHSに替わる新たな通信手段をお探しの方は、機能性の高いスマートフォンがおすすめです。通話以外のコミュニケーションが可能なアプリケーションを使えば、業務効率の向上が期待できます

 

PHSからスマートフォンへと切り替える際は『moconavi』の活用が有効です。moconaviには、テキスト・音声・ビデオの3つのコミュニケーション手段を使用できる機能が備わっており、状況に応じて効率的な情報共有や伝達を行えます。

 

また、グループウェアやストレージなどの情報共有に役立つ各種ツールとも連携ができるため、病院・介護施設のIT基盤として活用できます。

なお、PHSサービス終了に伴う病院内の課題と対応策については、こちらの資料で解説しています。ぜひご活用ください。

そろそろ切り替えたいPHS問題に!病院内のコミュニケーション課題とその対応策

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PHSの公衆サービスの終了にともない、自営PHSに代わる通信システムの導入を検討する医療機関が増えています。

最たる候補はiPhoneなどのスマートフォンですが、結果的にPHSと同レベルの利用にとどまり、その多機能性を活用できていない医療機関も多いのではないでしょうか。

本書では、PHSからスマートフォンの切り替えにともなうコミュニケーション課題の整理と、その対応策をご紹介します。

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