【ベイジ枌谷 × レコモット東郷】対談前編:経営者が語るリモートワーク課題と解決の糸口
- 投稿日:2022 - 3 - 14
- 更新日:2022 - 9 - 16
2019年12月に世界で初めての感染者が報告されてから、2020年の2月頃から国内でも急激に拡大していった新型コロナウイルス。
コロナ禍によって大きな社会変動が起こり、そのうねりのなかで「雇用」や「従業員の働き方」「キャリア形成」など、企業活動におけるさまざまな課題が浮き彫りになりました。
苦戦を強いられる企業も多いなか、厳しい状況を逆手にとって積極的にイノベーションを推し進め、業績を伸ばしている企業も存在します。そうした先進企業は一体どんなマインドを胸に、どんな取り組みを行っているでしょうか。
BtoBに特化したWeb制作会社、株式会社ベイジの代表取締役である枌谷力さんをゲストに迎え、株式会社レコモットの代表取締役、東郷剛とともに、コロナ渦における働き方の変化について語りました。
枌谷力(そぎたに つとむ)
株式会社ベイジ 代表取締役
1972年生まれ 大阪府出身。1997年にNTTデータ入社。2001年にWebデザイナーに転身して2007年にフリーランスとして独立。2010年にBtoBに特化したweb制作会社、株式会社ベイジを設立。デザイナー兼経営者として、BtoBマーケティング、戦略コンサル、UXデザイン、UIデザイン、組織デザイン、コンテンツデザインなど幅広い領域で活躍している
東郷剛(とうごう つよし)
株式会社レコモット 代表取締役CEO
1969年生まれ 埼玉県出身。1996年に国産ソフトウェアベンダに入社。マーケティング職に従事した後、複数のベンチャー企業の立ち上げに参画。2006年に株式会社レコモットを設立し、2008年にリモートアクセス サービス「moconavi(モコナビ)」をリリース。業界・規模を問わず、1000社・30万ID以上の導入実績をもつ
Web制作会社ベイジとセキュリティサービス提供会社レコモットの出会い
東郷
枌谷さん、今回は対談をお引き受けくださり、ありがとうございます。
枌谷
こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。
レコモットさんと当社のお付き合いはコロナ前の2019年からになりますね。
東郷
そうですね。あの頃は自社サービス「moconavi」の管理画面のデザインをより良くしたいと考えていて、あるときGoogleで「管理画面 かっこいい デザイン」と検索したらベイジさんのサイトがトップに出てきて、問い合わせをさせていただきました。
枌谷
そうでしたか。たしかあのときはコンペもなく、スムーズに発注いただいた印象です。
東郷
他の制作会社も検討しましたが、ベイジさん一択でした。
デザインを外注するとなると、通常は依頼する側の労力も必要になるんですけど、ベイジさんの場合はまさに“痒いところに手が届く”という感じで、こちらの負担が少なくお任せできる制作体制でした。グッと懐まで入ってきてくれて柔軟に対応してくださり、とても信頼感がありましたね。最初に一度お仕事をお願いしてからは、デザインだけでなく、サービスのセールスコンサルティングや、ウェブマーケティングまでお願いするようになりました。経営者として、枌谷さんのビジネスに対する考え方にも共感する部分が多く、当社と非常に相性が良いと感じています。そこで今回も対談をお願いした次第です。
枌谷
それは嬉しいです。
逆にベイジでも、リモートワークに対応するためのDX推進の一環として、2021年の春に「moconavi RDS」を導入させていただき、安全なリモートデスクトップ環境を実現しました。軽快な動作で非常に使いやすく、フル活用しています。
東郷
moconaviを導入された理由は、やはりリモートワークでのセキュリティ対策ですか?
枌谷
そうですね。特にクライアントから要件として提示されたわけではなかったので、対策をしなくても“騙し騙し”で仕事は続けられたかもしれません。しかし、制作会社のポリシーとしてそこに甘えるのはどうなのか、と。セキュリティ対策として、VPNを使ってリモートアクセス環境を構築するという方法もあるようですが、結構コストがかかってしまうので、現実的ではありませんでした。検討を進めていた途中で、「レコモットさんのmoconaviがあるじゃないか」と気付き、ご相談させていただきました。
懐疑的な姿勢を覆して一気に推進。ベイジのリモートワーク導入
東郷
ベイジさんはいつ頃からリモートワークを導入されたのでしょうか?
枌谷
2020年の3月上旬に本格的にリモートワークを始めました。ちょうどコロナの感染拡大が進んで1回目の緊急事態宣言が出るタイミングです。
東郷
さすが、迅速な対応ですね。やはり以前から準備はされていたのですか?
枌谷
いえ、むしろコロナ以前はリモートワークに対してかなり懐疑的に捉えていました。ルールをつくるのも大変ですし、評価も難しくなるだろうし、そもそもリモートワークで仕事がうまくいくとは思えないと。かなり前に一度社員から要望があってリモートワークを許可したんですけど、そのときはどんな状況でどんな仕事をしているのかが全然わからなくて、すぐにやめました。それ以降「ベイジの仕事にリモートワークは合わない」と、より一層強いバイアスがありました。
東郷
それはかなり意外です。ではコロナ対応で仕方なくリモートワーク化を進めたという感覚…?
枌谷
いや、意外とそういうわけでもありません(笑)
コロナ初期の頃、経営者のなかには不安になっている人と“ハイ”になっている人がいたと思いますが、私はどちらかというとハイになっているタイプでした。
コロナをきっかけに、業界構造の大きな変革が起きるのではないかと、ネガティブではなく割とポジティブに捉えていたんです。
そこで、自分たちも今までの考え方にとらわれず新しいことにチャレンジしてみようと、否定的なイメージをもっていたリモートワークも思いきって早期に導入しました。
東郷
ハイになっていた…私もそちら側でした。
レコモットはそもそもmoconaviというリモートワーク向けのツールをつくっている会社として、制度もインフラも整っていたので、かなりスムーズにリモートワークに移行できました。一方で、オフィスワークの重要性も理解していたので、リモートワークに懐疑的だったという枌谷さんの考えもとてもわかります。
コロナ初期の頃は「リモートワーク絶対主義」「フルリモートワーク」「脱オフィス」みたいな考え方がもてはやされましたが、個人的にはむしろそういう発想に気持ち悪さを感じていましたね。
リモートワークで浮き彫りになったメンタルヘルス問題。先進的なツール導入で一気に好転
東郷
リモートワークを始めて直面した問題などはありましたか?
枌谷
最初は営業面で、例えば1千万円を超えるような案件をオンラインで決裁していただけるのかというのが一番大きな不安でしたが、クライアントの反応をみながらすぐに問題ないことがわかりました。それよりも深刻だったのが、従業員のメンタルヘルスに関する問題です。他の経営者さんと話をしてもやはりそこが話題になりますね。
東郷
レコモットも同じく、2020年の夏くらいからリモートワークをする従業員の精神的ケアについて課題を感じ始めました。この問題は「コミュニケーション」に端を発するところですよね。特に仕事以外でコミュニティをもっていない単身者などが孤立してしまう傾向にありました。さらに、リモートワークなので異変にも気付きにくいという…。
ベイジさんは問題の解消に向けてどんな取り組みをされましたか?
レコモットの場合は、若いメンバーを中心にタスクフォースを立ち上げて現在進行形でさまざまな施策を検討し、実行しています。例えば、コミュニケーションの活性化と業務可視化を狙った「分報」の導入や、部下が上司を誘ってオンライン・オフライン問わずランチをするとその費用を会社が負担する「ボトムズアップ」制度など、画期的な仕組みを取り入れたことでいい方向に動くようになりました。
レコモット タスクフォースの取り組みについて、詳しくはこちら
枌谷
タスクフォース、おもしろいですね。
ベイジはリモートワークの課題解決のためにSaaSなどの技術導入を進めました。moconaviもまさにそのひとつです。
コミュニケーションの課題については、チャットやZOOMだけだと限界があると思い、いろいろ試行錯誤するなかでDiscordという音声チャットツールを導入したところ、働きやすさが一気に向上しました。
Discordはデスクトップアプリなので、いつ誰がパソコンを開いて仕事をしているのかが常に見える状態になります。全員で共有しているプロジェクトの中に「集中部屋」「大会議室」「小会議室」「ランチ」「BAR」といった複数の部屋(チャンネル)をつくりました。誰がどこにいるのかが全て可視化され、ミュートを外せばいつでも音声で話ができます。例えば、あるミーティングに突然参加することもできますし、個人に話しかけて相談をすることも可能です。
枌谷
また、朝礼では従業員が持ち回りで1人10分くらい好きな話をするということも始めたり、仕事の後「BAR」の部屋に集まりたい人が集まってお酒を飲みながら趣味の話をしたり、Discordを導入してからはリモート環境でも従業員同士がそばにいるような錯覚を得られるようになりました。
実は最近、組織の状態を可視化できるクラウドサービスで調べたところ、ベイジは最高ランクの組織状態という評価になっていたので、ベイジのリモートワーク対応は、ある一定の成果は出せたのではないかと考えています。
ちなみに、最近は社内のミーティングにVRが使えないか検証しました。時期尚早という結論でしたが、これからも新しい技術導入の検討を積極的に進めていきたいです。