360度評価とは?メリット・デメリットと運用のポイントを解説
- 投稿日:2023 - 4 - 27
- 更新日:2024 - 6 - 19
360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下なども評価に関わる人事評価制度です。本記事では360度評価の概要やメリット・デメリット、導入時の注意点などを解説します。
「人事評価の見直しの必要性を感じている」「従業員が評価内容に納得していない」など人事評価制度について課題を感じている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
360度評価とは?
はじめに、360度評価とはどのようなものなのか確認しておきましょう。
360度評価の意味
360度評価とは、対象となる従業員に対して、さまざまな立場の人が評価を行う方法です。従来の人事評価は上司のみが評価を行うのが一般的でしたが、360度評価では上司だけでなく評価される本人・部下・同僚・他部署の社員などからの意見も踏まえて多面的に評価を行います。
360度評価の目的
360度評価の主な目的は、上司からの評価だけでは把握できない部分を、他の関係者からの評価で補うことです。異なる立場の複数人が携わることで多面的な評価が可能になり、より公正で客観的な評価が実現できます。
360度評価のやり方
360度評価は、一般的に以下のような流れで実施します。
- 評価項目を記載した評価シートを作成する
- 関係者に評価シートを配布し、被評価者への評価を記入してもらう
- 関係者から集めた評価シートの内容をまとめる
- 上司や管理職から被評価者へフィードバックを行う
評価の方法は、実名評価・匿名評価・評価者の指名制など、企業によってさまざまです。
360度評価が求められる背景
360度評価が求められる背景として、評価制度の見直しを余儀なくされている現状があります。終身雇用や年功序列制度が当たり前ではなくなり、これまでの勤続年数や勤務時間を元にした単純な評価では適切な評価ができなくなってきました。
このような現状のなか、人材不足によって管理職一人あたりが評価する部下の人数が多くなっていることや、人材の流動性が増していることなどを踏まえると、上司からの一方向的な評価が困難なうえ評価者への負荷が高くなってしまいます。
また、コロナ禍によるテレワークの浸透も360度評価が求められる背景のひとつです。オフィスワークに比べ、上司が部下の業務状況や結果までのプロセスを確認する機会が減りました。そこで、より適切に評価するのに複数の関係者からの視点を取り入れる360度評価が求められています。
テレワークにおける人事評価の課題とあるべき姿について以下の記事で解説しています。
360度評価の5つのメリット
360度評価には、以下のようなメリットがあります。
- 評価に対する納得感が得られやすい
- 評価される側の振り返りの機会になる
- 自身の強みや特性に気づくきっかけとなる
- 職場の人間関係の把握につながる
- 規律を守る意識が強くなる
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
評価に対する納得感が得られやすい
複数の関係者から評価される360度評価は、一人の上司に評価される従来の人事評価よりも納得感が得られやすくなります。従来の評価制度では上司が気づいていない点や主観に基づく評価があった場合、被評価者が不満を抱く可能性が高いのがデメリットでした。
多面的に評価を行う360度評価は客観性が高く、誰か一人の主観に評価が左右されにくいため、被評価者が評価内容を飲み込みやすい点が大きなメリットとして挙げられます。
評価される側の振り返りの機会になる
360度評価は、被評価者本人も自分について評価するのが特徴です。これにより、自分自身の仕事に対する振り返りの機会を設けられるというメリットもあります。
自分が考える評価と他者からの評価を比較することで、本人が気づいていなかった改善点を把握でき、パフォーマンスやスキルを高めるきっかけになるでしょう。
自身の強みや特性に気づくきっかけとなる
自分自身への評価と他者からの評価を比較すると、自身の強みや特性に気づくきっかけになるのもメリットです。
上司だけでなく、身近な同僚や部下から自分がどのように見えているのかを知ることで、伸ばすべき長所や仕事をするうえで理解しておくべき特性などを、本人が把握できるようになります。
職場の人間関係の把握につながる
複数の関係者からの評価をまとめる際、職場の人間関係が見えてくることがあります。例えば、同じ部署内の複数人から高い評価を得ている人は、部署内で良い人間関係を築けていると判断できるでしょう。
一方、上司からの評価は高いのに複数人の部下からの評価が低い人がいる場合や、特定の人物だけ著しく低い評価がつけられている場合、パワハラやいじめが発生しているおそれがあります。
評価シートを集計する際には、単純な評価内容だけでなくそこから読み取れる人間関係にも注意を向けるようにしてください。
規律を守る意識が強くなる
自分に関係するすべての人が評価に携わる可能性があると、規律を守る意識が強く働くようになります。評価に関係しないからといって部下や他部署の人に対して横柄な態度をとることはそもそも好ましくありませんが、360度評価はこのような行動を抑止する効果も期待できます。
「相手の立場によって態度を変えない」「誰にでも公平に接する」といった意識が根付き、職場全体に良い影響を与えるのも360度評価の大きなメリットです。
360度評価の3つのデメリット
360度評価には多くのメリットがありますが、いくつかデメリットもあるため把握しておきましょう。360度評価には、以下のようなデメリットがあります。
- 主観的な評価になる場合がある
- 評価を気にしすぎて育成や指導に影響する可能性がある
- 評価に関する工数が必要となる
上記3つのデメリットについて、詳しく解説します。
主観的な評価になる場合がある
これまで他人を評価したことがない従業員も評価に関わることになるため、主観的な評価が発生する可能性があります。好感を持っているかどうかなど、個人的な感情が評価内容を左右することがあってはなりません。
主観的な評価を行わないよう、これまで評価者の経験がない人には特に、事前に目的や評価方法の説明が必要です。
評価を気にしすぎて育成や指導に影響する可能性がある
「部下からも評価される」と意識しすぎて、育成や指導に影響する可能性がある点にも注意が必要です。評価を気にしすぎて業務上必要な指導や注意が行われなかった場合、組織力の低下を招くおそれがあります。
評価に関する工数が必要となる
360度評価は、評価に関する工数が増えるのもデメリットです。これまで評価に関わっていなかった従業員も上司や同僚に対して評価を行う必要があり、管理職や上司はそれぞれの評価シートを集計する手間がかかります。また、評価内容のチェックや管理をする人事部の負担が増える点にも注意が必要です。
360度評価を導入する際の手順と流れ
360度評価を導入する際は、以下の手順で進めるとスムーズです。
- 導入目的を明確にする
- 評価基準や評価項目を設定する
- 評価からフィードバックまで具体的なスケジュールを決める
- 目的や評価基準を従業員に周知する
- 実際に評価を行う
人事評価は従業員にとって重要な制度のため、評価方法を変更する場合は目的を明確にしたうえで評価基準や評価方法を従業員に周知することが大切です。360度評価はこれまで評価する立場になかった従業員も他人を評価するため、特に事前の周知や教育が重要になります。
スムーズに導入できるように、評価基準や評価項目、具体的なスケジュールもしっかりと固めておきましょう。
360度評価を運用する際のポイントと注意点
360度評価を運用する際には、以下の5つのポイントを押さえておいてください。
- 360度評価の目的や基準を事前に共有する
- 執務態度を中心にした評価とする
- 平均値を評価する
- 評価の匿名性を保つ
- 定期的にフィードバックとフォローを行う
それぞれのポイント・注意点について、以下で解説します。
360度評価の目的や基準を事前に共有する
人事評価は従業員にとって重要度の高い制度のため、全従業員が納得して取り組めるように目的や基準を事前に共有しておくことが大切です。
目的やルールを理解できていなかったり不満を持っていたりする従業員がいると、360度評価のメリットを十分に発揮できません。説明会などを開いて丁寧に説明し、質問や要望には真摯に対応するようにしてください。
執務態度を中心にした評価とする
360度評価の評価シートは、執務態度を中心とした項目を設定します。仕事への姿勢や日常の勤務態度を可視化できるような項目にとどめ、処遇や報酬に直接影響する成果や能力に関する評価は避けるのが一般的です。
また、被評価者との関わり方や勤務形態によっては評価が難しいケースもあるため、「わからない」「評価できない」といった回答も許容しましょう。
平均値を評価する
評価シートを集計する際、評価者によって得点にばらつきが出るケースも少なくありません。より公平な評価となるよう、最高点や最低点ではなく平均値を用いるようにしましょう。
評価の匿名性を保つ
フィードバックを行う際は、評価の匿名性を保つことが大切です。誰がどのような評価をしたのか被評価者にわかるようになっていると、評価内容によっては評価者に対して不信感を抱いたり、上司や先輩に気を使って本音より高い評価点をつけたりするケースが発生する可能性があります。
定期的にフィードバックとフォローを行う
360度評価は評価後のフィードバックとフォローが重要です。ただ評価結果を本人に伝えるだけでなく、今後の行動につなげられるようなフォローが求められます。
他者からの評価は仕事へのモチベーションアップにもつながるため、管理職が今後の評価の参考にするだけでなく、被評価者本人にもしっかりフィードバックを行いましょう。
360度評価で組織の成長を促進させよう
多面的な評価を行う360度評価は、「評価への納得感が得やすい」「自身の強みを知るきっかけになる」など、多くのメリットがあります。
従業員のモチベーションアップにもつながるため、組織の成長を促進するために360度評価の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
360度評価をスムーズに導入するには、目的の明確化と従業員への丁寧な説明が重要です。本記事で紹介した導入の流れや注意点を参考に、取り組みを進めてください。
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