産後パパ育休とは?「育児休業制度」や「パパ・ママ育休プラス」との違いや取得できる給付金について解説
- 投稿日:2022 - 12 - 28
- 更新日:2023 - 5 - 9
2021年に育児・介護休業法が改正され、2022年から段階的に複数の制度が施行されています。そのうちのひとつが、「産後パパ育休」です。出生後8週間以内に従来の育児休業とは別に休業できる制度で、2022年10月1日に施行されました。
本記事では、産後パパ育休について詳しく解説します。制度の概要や、制度を活用した休暇取得の例などを紹介しているので、男性の育休取得の推進にお役立てください。
産後パパ育休とは?
産後パパ育休とは、2021年6月の「育児・介護休業法」の改正によって創設された制度です。
以下では、産後パパ育休が創設された理由や、対象者の要件や取得可能日数など制度の概要について解説します。
育児・介護休業法 改正で2022年10月1日から施行された産後パパ育休(出生時育児休業)
産後パパ育休は、2022年10月1日に施行されました。正式名称は「出生時育児休業」で、子どもの出生後8週間以内に従来の育児休業とは別に休業できる制度です。産後8週間は産後休業制度が適用され、出産後の女性が産後休業と出生時育児休業を併用することはできません。そのため、出生時育児休業は主に男性が利用する制度となり、産後パパ育休という通称が使われています。
産後パパ育休は、男女ともに仕事と育児を両立できるように創設された制度です。特に男性の育児休業の取得推進を目的としていて、男性が育児に積極的に取り組むことで、女性の雇用継続にもつながると期待されています。
産後パパ育休の概要
産後パパ育休の概要は、以下のとおりです。
対象者の要件 | 出生後8週間以内の子を養育する労働者(男女問わず) |
取得可能日数 | 子の出生後8週間以内の期間に最大4週間まで(分割して2回取得可能) |
申請期限 | 原則として休業の2週間前まで |
休業中の就業 | 事業主と労働者の間で合意された範囲内で休業中の勤務が可能 |
休業中の保障 | ・育児休業給付金の支給
・休業期間中の社会保険料免除 |
産後パパ育休の対象は、男女問わずすべての従業員です。「出生後8週間以内の子」には実子だけでなく養子も含まれ、例えば生後8週間以内の養子を養育する女性従業員も産後パパ育休を取得できます。ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は男女ともに対象外です。
- 入社1年未満
- 申し出の日から8週間以内に雇用契約の終了が決まっている
- 1週間の所定労働日数が2日以下
取得可能日数は最大4週間で、2回に分割して取得することが可能です。
例えば、出生時や妻の退院時に1回目の休業を取得し、一度復帰したのちに2回目の休業を取得できます。分割取得の際は原則としてはじめに申し出る必要がありますが、会社が認める場合は都度の申し出でも問題ありません。
通常の育児休業制度は休業中の就業が原則認められていませんが、産後パパ育休の場合は企業と従業員との間で合意した範囲内であれば休業中でも勤務できます。ただし、休業中の勤務は所定労働日・所定労働時間の半分までに抑えなければなりません。
産後パパ育休を利用した休業中は、従来の育児休業制度と同様に給付金や社会保険料の免除の対象となります。具体的には、育児休業給付金として休業開始時の賃金の67%が支給され、休業した月の社会保険料が免除されます。ただし、これらが適用されるのは以下の要件を満たしている場合のみです。
育児休業給付金の支給要件 | 休業期間中の就業日数が一定以下(休業が4週間の場合は10日以内、休業が4週間より短い場合はそれに比例した日数以内) |
社会保険料の免除要件 | 当月の末日が休業期間、もしくは当月内の休業日数が14日以上 |
「産後パパ育休」と「育児休業」「パパママ育休プラス」の違い
育児に関わる休業制度として、産後パパ育休のほかに「育児休業」や「パパママ育休プラス」があります。
育児休業は、従業員の申し出によって子どもが1歳に達するまで休業できる制度です。男女ともに取得可能で、保育所に入れないなどの事情がある場合は最長2歳まで延長できます。法改正前は休業の分割取得は原則不可となっていましたが、2022年10月1日からは分割して2回取得が可能となりました。
パパママ育休プラスは、育休取得のタイミングを調整することで育休期間を1歳2ヶ月まで延長できる制度です。通常の育児休業は保育所に入れないなどやむを得ない事情がない限り1歳までですが、パパママ育休プラスはこのような事情がなくても子どもが1歳2ヶ月になるまで休業できます。
産後パパ育休・育児休業・パパママ育休プラスの概要を、以下の表にまとめました。
産後パパ育休 | 育児休業 | パパママ育休プラス | |
対象期間 | 子の出生後8週間以内の期間に最大4週間まで | 子が1歳になるまで(やむを得ない事情がある場合は最長2歳) | 子が1歳2ヶ月になるまで |
分割取得 | 分割して2回取得可能 | 分割して2回取得可能 | 分割して2回取得可能 |
申請期限 | 原則として休業の2週間前まで | 原則として休業の1ヶ月前まで | 子が1歳に達する日までの育児休業給付金の支給対象期間内 |
これらの制度のほかに、出生後8週間以内に育休を取得した場合、特別な事情がなくても再度育休が取得できる「パパ休暇」という制度もありました。しかし、産後パパ育休の制度が施行されたことで出生後8週間以内に育休とは別に休業できるようになったため、パパ休暇は2022年10月1日に廃止されています。
「産後パパ育休」と「育児休業」「パパママ育休プラス」を活用した休暇取得の例
ここでは、各種制度を活用したときにどのように休業できるのか、例をみていきましょう。
上記は、産後パパ育休と育児休業を活用した2つの例です。
例1では、出生後8週間以内に夫(父)が2回休暇を取得し、妻(母)の育休開始後は子どもが1歳になるまで交代で育休を取得します。育休の分割取得が可能になったことで、このように育休を交代できる回数が増えました。保育所に入れなかった場合は、最長2歳まで交代で育休を取得できます。
例2は、妻の育休中に夫が分割して2回育休を取得するケースです。1歳以降は、例1と同様にやむを得ない事情がある場合に最長2歳まで途中で交代しながら育休を延長できます。
上記は、パパママ育休プラスを活用した2つの例です。
例1では、子どもが1歳になるまで妻が育休を取得し、1歳から1歳2ヶ月まで夫が育休を取得しています。このとき、保育園に入れない場合などといった特別な事情は必要ありません。
例2は、育休期間を重複させている例です。子どもが1歳になる前に夫の育休を開始し、1歳になるタイミングで妻が職場復帰したあとも、夫は子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得できます。
制度の活用を促し男性の育休を推進しよう
産後パパ育休や育休の分割取得などの活用は従業員側のメリットだけでなく、出産・育児を理由とする離職の防止や従業員満足度の向上など企業側にもメリットがあります。
従業員が1,000人を超える企業においては、2023年4月1日から男性の育休取得率などを年に1回公表することが義務付けられるため、制度を活用しやすい環境を整えていきましょう。
育休などの活用が進んでおらず、どのように推進すればいいかわからない場合は、厚生労働省が主体となって情報発信やセミナーなどを行う「イクメンプロジェクト」や、育休制度の活用を進めたい企業を支援する「仕事と過程の両立支援プランナー」といった仕組みが用意されているので、これらを活用するのもおすすめです。
企業として、従業員のワークライフバランスの実現・向上に向け、その一環として男性の育休取得を推進していきましょう。
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