【松永エリック・匡史 × レコモット東郷】誰もが「Your Style」を制約なく実現できる社会とは

  • 投稿日:2022 - 11 - 18
  • 更新日:2023 - 4 - 12
  •   

今から17年前の創業当時から、理想的な働き方を追い求め、自分たちを“実験台”にしながら制度の見直しや改革を続けてきた株式会社レコモット。今年(2022年)の頭には、会社の行動指針となる「ビジョン・ミッション・バリュー」をリニューアルしました。

自社サービスとしてリモートアクセスツール「moconavi」を提供し、企業のテレワーク環境を支えるレコモットが考える理想的な社会とは。レコモット代表 東郷剛が、青山学院大学の教授として、国際ビジネスやデジタルイノベーション、アーティスト思考といった領域で豊富な知見をもつ松永エリック・匡史さんをお相手に、その想いを語ります。


 

松永エリック・匡史(まつなが えりっく まさのぶ)
青山学院大学 地球社会共生学部 教授 / 株式会社アバナード デジタル最高顧問 / ビジネスコンサルタント / 音楽家
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談
1967年生まれ、東京都出身。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了。幼少期を南米(ドミニカ共和国)で過ごし、15歳からプロミュージシャンとして活動、米国バークリー音楽院でJAZZを学ぶ。大手メーカーのシステムエンジニアを経たのち、コンサル業界に。アクセンチュア、野村総合研究所、日本IBMを経て、デロイト トーマツ コンサルティングにてメディアセクターAPAC統括パートナー・執行役員に就任。その後PwCコンサルティングにてデジタルサービス日本統括パートナーに就任し、デジタル事業を立ち上げ、エクスペリエンスセンターを設立、初代センター長を務めた。2018年よりONE NATION Digital & Mediaを立ち上げ、大手企業を中心にデジタル変革(DX)のコンサルを行う。2018年アバナードのデジタル最高顧問に就任。2019年、青山学院大学 地球社会共生学部(国際ビジネス・国際経営学)教授に就任、アーティスト思考を提唱。学生と社会人の共感と創造の場「エリックゼミ」において社会課題の解決に挑む。

東郷剛(とうごう つよし)
株式会社レコモット 代表取締役CEO
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談
1969年生まれ 埼玉県出身。1996年に国産ソフトウェアベンダに入社。マーケティング職に従事した後、複数のベンチャー企業の立ち上げに参画。2005年に株式会社レコモットを設立し、2008年にリモートアクセス サービス「moconavi(モコナビ)」をリリース。業界・規模を問わず、1300社・32万ID以上の導入実績をもつ

ガラケーでビジネスチャット。エンジニア主体の発想で一歩先ゆくものづくりを続けるレコモット

東郷
エリックさん、今日はよろしくお願いします。

当社のプライベートイベントの登壇をお願いして以降、エリックさんといろいろなやりとりをするなか、お互いエンジニア経験を経て現在は経営側というビジネスキャリアにシンパシーを感じ、今回は改めて一緒にお話する時間を設けさせていただきました。

エリック
こちらこそよろしくお願いします。

そうですよね、お互い、特にモバイル関連の開発に携わってきた共通の経験がありますね。

東郷
レコモットを立ち上げた2005年は、スマホが登場する前のガラケーしかない時代でした。エリックさんはその頃どんな端末を使っていましたか?

エリック
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

通信キャリアがクライアントだったので、発売前のモノを含め様々な最先端の端末を使っていました。個人的にはシャープから発売される最先端の機種を使ってましたね。

あの頃は各社がアイデアに満ちた新しいものを作り続けていて、何かが発売されるたびにワクワクしていた記憶があります。モバイルだけでなくPCでも斬新なデザインや機能性の商品が次々に登場していたし、日本がハードウェアの分野でチャレンジし、独自の世界観をつくっていた熱い時代だったと思います。

レコモットさんは当時どんなものをつくっていたのでしょうか?

東郷
社内のドキュメントをガラケーで検索できるドキュメントビューワーを中心に、ガラケーでもフルブラウザで使えるビジネスチャットなど、moconaviの元となるようなアプリケーションを開発していました。

目指していたのは、「モバイルでなんでもできる世界」。ソフトウェアの分野で技術的にとんがったチャレンジを続けてきました。
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

エリック
ガラケーでビジネスチャット…当時としてはかなり先進的な発想ですね。スマートフォンが登場するまで、携帯電話はビジネスと切り離されていましたから。

東郷
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談
販売方法に関しても、売り切りではなく、ユーザーから毎年定額の料金をいただくというサブスクリプション型のビジネスモデルを採用していました。

レコモットは、設立当初からバリバリの技術者集団だったので、エンジニアの視点で最新のテクノロジーや社会潮流をキャッチアップしながら開発してきました。発想が早すぎたせいか、なかなか広がらず苦戦しましたが、大手の銀行や通信キャリア、SIerなどのリファレンスとなる顧客やパートナーに恵まれ、順調に成長してく中で、2020年のコロナ禍をきっかけに企業の働き方が加速度的に変化し、moconaviの需要が一気に高まりましたね。

エリック
技術者がアイデアを出してモノを作るという考え方は海外だと普通ですが、日本ではあまり一般的ではないですよね。仕様書に沿ってモノを作ることがエンジニアの仕事と思っている人がほとんどだったのではないでしょうか。

ガラケーの時代から技術者主体でどんどん新しいモノを作っていくというレコモットさんのスタンスは、今現在であっても一歩先をいってるなあと驚きますね。

17年前からフルフレックス制を採用。自らを実験台に試行錯誤するレコモットの働き方

東郷
そうかもしれないですね。私たちは設立当時から、時間と場所にとらわれない働き方により社内の生産性を上げることができると提唱し、フルフレックス制を採用してきました。

社名のレコモット(recomot)も「あらゆるコミュニケーションをつなげていく(Relational Communication)」という造語をベースに、それをモバイルテクノロジー(Mobile Technology)で実現するという趣旨で、各単語の頭文字を組み合わせたものです。

エリック
17年前からフルフレックスというのは先進的ですね。リーダーの強い想いがあれば、変革は起こせるという見本です。パフォーマンスが出せればどこで働いてもいいという考え方はエンジニア的な発想かもしれないですね。

東郷
確かに、そうかもしれませんね。他にも、男性社員の育児休暇やワーケーションなども、テレワークという言葉が一般化する前から取り入れ、自分たちを実験台にしながら理想的な働き方を模索してきました。

大切にしているのは「一人ひとりが働き方や生き方を選べる」ということ。

moconaviも、まさにそれを実現させるためのツールです。

エリック
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

仕組みに縛られることから解放されて自分で選択できる社会…私も共感します。

しかし、自由の意味を履き違えている人も少なくないですよね。フレックス制度も、正しく活用できている人と、そうでない人に分かれると思います。本来は計画的に活用すべきですが、「寝坊したから出勤を遅らせる、昨日飲み過ぎて仕事にならないから早めに切り上げる」と、惰性で使っている人も多いのではないかと。

「オンライン会議でどうやってサボるか」みたいな切り口がお笑い芸人さんのネタにもなっているように…テレワーク環境によって多くの人が“サボり方”に気付いてしまったという側面もあると思います。

東郷
おっしゃる通り。自己管理ができない人に自由を認めると破綻してしまいます。また、自分の自由を手に入れるためには、周りの人の自由も尊重して守るという意識も必要不可欠です。テレワークでは特に。そのために、レコモットでは前提として、セルフコントロールができる人を選んで採用しています。

エリック
採用の時点でそこを押さえておくことは大切ですね。

もうひとつ、「会社へのロイヤリティ」がとても重要になると思っていて。会社に対して、「この経営者のために働きたい・会社の皆と一丸となってこのサービスを世の中に広めたい」という気持ちをもてないと、従業員はなかなかついてこない。

レコモットさんがビジョンとして掲げている「誰もが『Your Style』を制約なく実現できる社会」という言葉…「your style」って、言うのは簡単なのですが、うまくいっている理由は、東郷社長の想いに社員が共感し、会社に対して高いロイヤリティを感じているのではないかと思います。

きっと経営者である東郷さん自身が皆の声に耳を傾け、社員一人ひとりが積極的に発信できるカルチャーを作り出している。会社を牽引するのはトップの想いなのではないでしょうか。

「誰もが「Your Style」を制約なく実現できる社会」を実現するために

東郷
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

会社のビジョンについて触れていただきましたが、レコモットは今年(2022年)の頭に「ビジョン・ミッション・バリュー」をリニューアルしました。

コロナになってから社会が激変し、我々が考えていた未来が5年から10年くらい早く訪れたような感覚があって、次の10年を早急に考えなければという強迫観念に駆られました。企業規模も拡大して従業員も増え、さらにテレワーク中心でリアルなコミュニケーションの場も少なくなるなか、今までのビジョン・ミッション・バリューはもう古い。新しい軸が必要なんだと。

リニューアルに向けてまず考えたのが、まさに先ほどエリックさんに話していただいた「従業員のロイヤリティを高めたい」ということでした。

そのために、従業員にも参画してもらい約1年かけて新しいビジョン・ミッション・バリューをつくったんです。いろいろな人の意見をひとつも捨てず、練りに練って腹落ちするところまで議論し尽くした結果、本当に素晴らしい言葉が生まれました。

Vision:
Envision Your Style(誰もが「Your Style」を制約なく実現できる社会)

Mission:
テクノロジーによって、 あらゆるコミュニケーションの ハブとなる

Values:
・Fun to try.(変化を愉しみ、まずやってみる!)
・Take initiative.(誰かではなく、自分が動く!)
・Beyond the team.(チームを超えて、違いを生み出す!)

ビジョンとミッションには私の想いも強く入っているんですけど、バリューに関しては結果的にほとんど従業員に任せしました。それにもかかわらず、2番目の「Take initiative.」については「主体性を持って、未来像を描き、自ら課題に挑み、 プロフェッショナルとして結果と成長にコミットする。」と、かなり厳しいことが書いてあって。

経営陣が求めるような発想が、従業員からの言葉として出てきたことには感動しましたね。会社に対して、確かにロイヤリティをもってくれていると実感できました。

エリック
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

素晴らしいですね。これだけ練られたビジョン・ミッション・バリューはなかなかない…。本来、企業にとってビジョン・ミッション・バリューは事業の根幹として、経営者がコンサルタントに任せては決していけない領域なんですが、実際は…

日本では割と軽んじられていて、あまり大きな声では言えませんが、クライアントから「代わりにカッコイイのつくって」と頼まれること、結構あるんですよ。

経営者と従業員が一緒に企業の行動指針をつくるというのは、「船」に例えると、船長と船員が一緒に航路を決めていくようなもの。一歩間違えると荒波に飲まれてしまう危険もありますが、立場の壁を超えて繋がり、一人ひとりが主体となって道筋を決めたというプロセスそのものが、レコモットさんの新たなビジョン・ミッション・バリューをもっとも体現していますね。これがレコモットの企業文化を創り上げているのかなと思いました。

進化し続けるレコモットが目指す理想的な社会とは

エリック
ビジョン・ミッション・バリューは決めたらおしまいではなく、日々従業員一人ひとりが日常業務のなかでいつも意識していることが大切だと思います。レコモットさんではそれを確認するような場はつくっていますか?

東郷

はい、前にエリックさんに「経営者はメッセージを社員に発信し続けるべき」とお話を聞いてから、毎月のオンラインミーティングで私から発信するようにしました。事業に関する話が半分、私のプライベートな話が半分。ビジョン・ミッション・バリューに関しては、表現や切り口を変えながら、毎回同じメッセージを伝えています。ほかにも事業内容や制度で変更などがあったときも、各部署の担当者が説明するのではなく、私の言葉で発信するようにしています。

エリック
いわゆるインナーPR、とても良い取り組みですね。

外部に対してのPRは売上にもつながるのでみんな意識するのですが、会社の内部に対する共有って案外少なくなりがちです。そうすると、従業員としては「経営陣が勝手に決めている…」「外向けにはいいことを言っているけど内情と違う…」といった悪印象に繋がり、ロイヤリティも下がってしまう。PRの盲点です。

従業員に向けて、東郷さんの言葉で発信しているということはとても重要で、高いロイヤリティを維持しながら“your style”を実現している要因です。多くの企業の参考になるでしょう。

あとは東郷さんの人柄もあるかと。別の経営者が同じことをやってもうまくいくという保証はありません。企業って“生き物”ですから、機械的なフレームワークがあれば動くみたいなものではなく、そこが難しいところです。

東郷
ミーティングでプライベートの話をとりいれたのはエリックさんからお聞きしたアイデアです。まさに人柄を伝えることになるので、「こんな話、してもいいのかな」と、最初は戸惑いもありました(笑)

エリック
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

社長って企業と一体だと思うので、ありのままの東郷さんを伝えていくことが大事。東郷さんのプライベートも含めてレコモットなんですよ(笑)

だから隠すべきじゃないというのが私の考え方です。そこで「この社長、嫌だ」と思って他にいくのも従業員の選択肢…“your style”だと思います。

私は大学でゼミをもちながら、学生の就活の現場にも携わっていますが、企業の文化ってなかなか外から見えないもので。だからこそ学生は知名度や年収だけで企業を選んでしまいます。

例えば東郷さんが社内向けに発信しているようなカルチャーを外にも出してくれたら、企業と学生のより良いマッチングが生まれるのではないかと思います。ぜひレコモットさんから就活の世界を変えて欲しいです!

私は逆に大学側からカルチャーを発信し、企業が学歴だけで人材を選ぶようなムードを変えていきたいです。

東郷
松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

レコモットでは、これからインターンシップもやっていきたいとまさに考えていたところです。1年生や2年生のうちから、居酒屋やコンビニではなく、ITの職業体験のような位置づけで、バイト感覚で業界に入ってもらえる世界観を目指したいなあと。そのために、ご指摘いただいたような外向けのブランディングともリンクさせながら採用を進めていきたいです。

最後にmoconaviの今後について、昨今はIT業界や金融業界の企業さまでの導入が進んでいますが、なかなかDXが進んでいないエッセンシャルワーカーの間でも浸透させていきたいというのが喫緊のテーマです。

フィジカルな仕事ではありますが、コミュニケーションの部分では大いに貢献できるはず。moconaviは個人の端末にソフトを入れてBYODが実現できるので、企業の負担も少なく、端末にデータを残さない仕組みでセキュアに利用できます。

誰もが「Your Style」を制約なく実現できる社会を目指し、コミュニケーションの変革を進めていきたいです。

エリック松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

私も、エッセンシャルワーカーの現場にこそツールが入るべきだと強く感じています。人の命に関わる彼らの貴重な「時間」を守ることこそが、すべての人の仕事や暮らしを守ることに直結します。

moconaviのソリューションも含め、新たなビジョン・ミッション・バリューで明言されたレコモットさんの取り組みは、我々のコミュニケーションに関する課題を打破し、新しい世界を切り開く鍵を握っているのかもしれません。

これからも期待しています!

松永エリック・匡史_レコモット東郷剛_対談

この記事をシェアする

関連記事

【ベイジ枌谷 × レコモット東郷】対談前編:経営者が語るリモートワーク課題と解決の糸口 【ベイジ枌谷 × レコモット東郷】対談前編:経営者が語るリモートワーク課題と解決の糸口 【堀田秀吾 × レコモット東郷】コロナ禍で従業員が「メンタルヘルスの不調」に陥る3つの原因 【堀田秀吾 × レコモット東郷】コロナ禍で従業員が「メンタルヘルスの不調」に陥る3つの原因