ニューノーマル時代のテレワークにおけるオフィスのあり方とは?【ウチダシステムズ 様インタビュー】

  • 投稿日:2021 - 2 - 15
  • 更新日:2021 - 2 - 21
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新型コロナウィルスの感染拡大によりテレワークが急速に普及するなか、オフィス縮小やオフィス不要論など、さまざまな意見が出ています。

今こそ企業はオフィスの存在意義について改めて考える時なのかもしれません。

今回はオフィスデザインの専門家である株式会社ウチダシステムズの取締役常務執行役員 田口惣一様に、ニューノーマル時代のオフィスのあり方やオフィスの可能性についてお話を伺いました。

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株式会社ウチダシステムズ 取締役常務執行役員 田口惣一様

 

リーマンショック・働き方改革・大震災・新型コロナ…社会的潮流によるオフィスの変化

──オフィス課題の解決を総合的にサポートしてきた御社の視点で、これまでの日本企業におけるオフィスの変化をどのように感じてきましたか?

当社は1967年の創業以来、さまざまなオフィスの移転やリニューアルにおいて、デザインや設計を手掛けてまいりました。特に直近の20年においては、大きく4回、オフィスのあり方が変化するポイントがあったと思います。

最初は2008年のリーマンショックです。世界規模で景気が悪化する状況下において、日本企業も生き残るためにコスト削減が急務となりました。そこで、オフィス機器は「レンタル」や「リユース」の需要が高まり、同時に海外資本や国内大手のホーム家具チェーンによるコストパフォーマンスに優れたオフィス家具の参入が注目されるようになりました。

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2回目の変換期は2011年に発生した東日本大震災です。地震以外にも台風や大雪など、自然災害が多い日本ですが、東日本大震災による被害は特に甚大で、事業活動がストップしてしまった企業も少なくありませんでした。この震災がきっかけとなり、オフィス環境においても予測不能な緊急事態に備えたBCP対策(事業継続対策)の必要性が一層強く叫ばれるようになりました。

3回目は、2019年から国が本格的に推進を始めた働き方改革による変化です。国の政策主導ではあったものの、人口減少や、世界基準における低い生産性が課題になっていました。同時に、多様化するライフスタイルに合わせた柔軟な働き方に対応するために、企業は就労規則やオフィスの在り方を見直すなど、生産性向上が共通課題として取り上げられるようになったのです。テレワーク化や、複数の事務所を1箇所に集約し、フリーアドレスで部署間の壁を取り除いた、大胆なコミュニケーションの活性化を目指すオフィス作りがトレンドになっていきました。当社も2018年にオフィスをリニューアルし、同時にテレワークを導入しています。

そして、4回目の変化のポイントが、昨年(2020年)に発生した新型コロナウイルスの感染拡大です。外出自粛が求められ、これまでテレワークを導入していなかった企業も急遽、従業員を自宅で働かせなければならない状況になりました。誰も予想できなかった事態に直面し、これからの時代、企業にとってオフィスがどうあるべきか…今まさにオフィスの新しい価値が問われているのです。

コスト削減よりも大切なこと。ニューノーマル時代におけるオフィスの価値とは

──コロナ禍により、コスト削減を目的として御社にオフィス改善を依頼する企業もありますか?

例えば2つあるフロアの片方を返却して1フロアにまとめるなど、コスト削減を目的としたご依頼もありますが、リーマンショックのときほど大きな動きではありません。

現在はテレワーク化が進むことで従業員の出勤日数が減り、同時に出張や会食なども激減するなど、企業の運営コストは下がっています。それに、コスト削減を目的にオフィスの省スペース化をした結果、人口密度が上がってウイルスの感染リスクが高まってしまっては意味がありません。

リーマンショックの時との大きな違いは、下がったコストをどのように有効な投資に使うか…これがニューノーマルのオフィス環境を考えるうえでポイントになると思います。

──それではニューノーマル時代ではオフィスにどんな価値が求められるのでしょうか?

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キーワードは「積極的分散」「コミュニケーション」「デザイン」の3つです。

まず「積極的分散」について、これは一極集中による密状態を回避し、ウイルスへの感染リスクを防ぐ目的のほかに、オフィスの中でさまざまなワークプレイスを実現するという効果もあります。

あるお客様からの依頼で、東京丸の内に構えていた大フロアのオフィスを一部返却して、東京・神奈川などの5拠点に分散した事例もありました。

テレワークではオフィス以外でどのような執務スペースを選び、環境を整えるのかを従業員に委ねる企業も少なくありませんが、それでは人によって作業効率がバラついてしまいます。また、個人が自分で執務環境を整えることが当たり前になると、企業としてオフィスをもつ意味も薄れてしまうでしょう。

オフィスは、企業とそこで働く人にとって「家」というべき場所。“我が家”の中にさまざまなロケーションを用意することで、従業員は気分やその日の仕事内容に合わせて働き方を選び、快適かつ効率的に業務に取り組めるようになります。

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次に「コミュニケーション」ですが、これはコロナ禍の昨今に限らず、以前から語られているオフィスにおける最大の課題。多くのお客様がこの課題を解決するために当社にオフィスデザインのご相談に来られました。

テレワークが主流となったニューノーマル時代においては、オフィスで顔を合わせることなく、オンラインでコミュニケーションをとる機会が増えます。相手の表情が見えにくく、空気感が伝わりにくいやり取りのなかで「自分の考えが相手に正しく伝わっていないのでは?相手の考えを正しく理解できていないのでは?」と不安を感じてしまう人は少なくありません。そうしたテレワークにおけるコミュニケーション課題を解消し、働く人の「心理的安全性」を確保するために、環境やコミュニケーションツールを整えることが大切です。従業員が自律的かつ利他的に働ける組織風土を醸成するために、どのような仕組みをつくるべきか?といったご相談も増えてきています。

最後の「デザイン」ですが、一昔前までオフィスデザインはあくまで働く場所として、機能面・生産性向上の側面が重要視される傾向がありました。しかし、人材不足が課題となっている今、採用においてもオフィスデザインはますます重要となってきています。求職者は企業のオフィスデザインから企業文化や組織風土を感じ取り、企業を選ぶポイントとして注目しているため、機能性だけでなく、その企業「らしさ」が伝わるオフィスデザインにも力を入れる必要があります。

積極的分散・コミュニケーション・デザイン。オフィスを見直すときのポイント

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──「積極的分散」「コミュニケーション」「デザイン」の3点でオフィスを見直すときの具体的なポイントを教えていただけますか?

自社のオフィスリニューアルを例にご紹介いたしますと、まず「積極的分散」の観点では本社が入居しているビルの隣にある雑居ビルの2フロアを新たに借り、2階は研修などに適した「HANARE LAB.」、3階は卓球台やカフェスペースを完備し、リラックスできるソファ席や大きなテーブル席を備えた「HANARE CUBE.」と、本社オフィスとは異なる多彩なワークプレイスを実現しました。

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HANARE LAB.

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HANARE CUBE.

また、本社オフィスの中でも、デスクの高さが可変式で立った状態でも仕事ができる個別席や、窓際の間接照明を配した席、オフィスデザインの提案をする際のモックアップを制作する作業スペースなどを用意しています。

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高さが可変できるデスク

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ホワイトボードのパーテーションで区切られたソファ席

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窓際の間接照明を配した席

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モックアップ制作用の作業スペース

──見学させていただきましたが、まるでコワーキングスペースのような雰囲気ですね。個人が自由な働き方で生産性を高めている印象を受けました。

重要情報を扱うような一部の席を除いてフリーアドレスを採用しています。ちなみに、これを機に社長や私たちなどの役員も固定席をやめ、従業員と同じ空間で働くようになりました。もちろん、フリーアドレスで利用できる席には消毒液とデスク周りを拭き取るペーパーを完備し、ウイルス感染対策もハード面・運用面で実践しています。

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続いて「コミュニケーション」について、オンライン会議の環境整備を急ピッチで進めました。広すぎる大会議室を分割し、オンライン会議の人数に適した2つの部屋に分割。そして、どの会議室にもモニターやマイク、Wi-Fi環境を完備し、持ち込んだPCで簡単にオンライン接続ができるようにしました。また、部屋ごとにしつらえを変え、大人数・少人数・社員同士・取引先・採用面談など、さまざまなオンライン会議に対応できるようにしたのもこだわったポイントです。

オンライン会議では、準備に時間がかかってしまったり、ITに詳しい人材が常勤していないと使えなかったりといった課題があります。いつでも、だれでも気軽に繋がり、快適にコミュニケーションができるICT環境を実現することで仕事がスムーズになり、従業員の心理的安全性も保つことができるのです。

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また、オンライン会議用の個別ブースの入り口には小さな鏡を用意し、身だしなみも整えたうえで打ち合わせに臨むようにするなど、運用面でも配慮しました。テレワークにおけるコミュニケーションでは、ちょっとした工夫と相手への思いやりの心で、大きなお金をかけずにより良い環境を整えるが可能です。

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最後に「デザイン」では、「会社の理念や文化が感じられるしつらえ」が理想的です。特に力を入れて欲しいのがエントランスです。企業がお客様をどう迎え、どう向き合うのか、その姿勢がエントランスに表れます。経営理念や歴史、技術など、企業の価値を多角的な視点で見つめ直し、コンセプトを熟考してデザインに落とし込むと良いでしょう。

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当社の場合、執務スペースの入り口には「Ism Wall」と名付けたモニターを設置し、タッチパネルで事業内容や経営理念を表示できるようにしました。従業員は出社するたびにIsm Walを目にするため、全員が当たり前のように経営理念を理解しています。また、ご来社いただくお客様や、採用面談に来られた求職者の方には、当社への理解を深めていただける有効な「場」となっています。

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そのほか、ウイルスの感染対策の一環として、オリジナルのキャラクターで三密回避を喚起しています。遊び心を交えたデザインで伝えることで「抑制」させるのではなく、明るい気持ちで感染対策に取り組めるようにしました。

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オフィスは集まりたくなる“我が家”。多彩な環境が従業員の帰属意識と自発性を育む

──ありがとうございました。最後にニューノーマルにおけるオフィスのあり方について、改めて御社の考えや今後の展望を教えてください。

テレワーク化が進み、オフィス不要論を唱える人もいますが、これからのオフィスに求められるのは、ワークスペースとしての機能性だけではありません。多様な働き方をする全ての従業員が一つの目標に向かうための象徴的な場として、より強い存在価値をもつと思います。

私たちが考える理想的なオフィスは、みんなが集まりたくなる“我が家”のような場所。

テレワークだからといって個人に仕事の環境整備を任せるのではなく、会社が多彩な空間を用意し、選べるようにすることで、従業員は帰属意識をもちながら安心して自発的に働くことができます。これは最終的に企業の生産性向上にもつながるでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態において、私たちも仮説を立てながら、新しいオフィスのあり方を探し続けています。今回お伝えしたことが“最適解”とは限りませんが、これからもオフィスデザインのプロとして、時代の変化に機敏に対応し、お客様と課題を共有しながら、お客様との協創を前提に最適なオフィス創りを目指していきたいと思います。

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