ワーケーションとは?メリット・デメリット、推進する自治体や課題を解説
- 投稿日:2020 - 12 - 25
- 更新日:2022 - 9 - 16
働き方改革や新型コロナウイルスの拡大によって、テレワークをはじめとした新しいワークスタイルが広がっています。その中でも、現在注目されているのが「労働」と「休暇」を組み合わせた「ワーケーション」という概念です。
しかし、ワーケーションはまだまだ新しい考えで、企業でワーケーションを実現するにはさまざまな課題や検討事項があるため、企業での導入には慎重にならざるを得ないという担当者や経営者も多いです。
この記事では、企業の総務担当者が知っておくべき、ワーケーションの概要や、メリット・デメリット、ワーケーションを導入する際に整備すべきことについて解説します。
ワーケーションとは?
最初に「ワーケーション」という言葉の意味や、広がってきた背景について確認してみましょう。
ワーケーションという言葉の成り立ち
ワーケーション(workationまたはworkcation)とは、「ワーク(work:労働)」と「バケーション(vacation休暇)」を組み合わせた言葉で、観光地やリゾート地でテレワークを行いつつ休暇も過ごすという働き方です。
日本で生まれた言葉ではなく、2000年代初頭のアメリカではすでにワーケーションの概念があったとされており、海外のさまざまな国ですでにワーケーションは実施されています。
広まっていった背景
ワーケーションという言葉が知られるようになったのは最近ですが、以前から労働条件の改善や労働者の満足度向上を目的に行われています。海外では、有給休暇や長期休暇の取得率向上のために導入されることが多かったそうです。
日本においては、従来、企業の「研修」や「合宿」といった形で実施されるケースが多く見られました。普段と違った環境の中で仕事をしたり同僚や地域の人々と交流することによって、新しい刺激を得たり、コミュニケーションを活発にしたり、リフレッシュを促したりする効果を期待できます。
しかし、コロナ禍が長引く中、個人のテレワークが「新しい日常」における働き方として急速に注目されるようになりました。リゾート地や観光値、高級ホテルなどにパソコンを持ち込んで仕事をし、仕事と旅を同時に楽しむといったスタイルのワーケーションの考え方が少しずつ広がってきています。対象は大手だけではなく、中小企業や個人となっているのが現在のワーケーションの特徴です。
働き方改革の推進と地域創生を目的に、日本政府や各省庁、自治体でもワーケーションの促進普及に力を入れています。現在、ワーケーションはウィズコロナ時代の新しい働き方として認知されはじめてきている状況です。
ワーケーションを推進する自治体の事例
ワーケーションに対する関心の高まりを受けて、全国各地でワーケーションを推進するための取り組みが行われています。
自治体がワーケーションを推進している地域では環境が整備されはじめ、情報の開示も進んでいるのが特徴です。いくつかの自治体の例を見てみましょう。
長野県
長野県ではワーケーションを希望する企業や個人に向けた情報発信を積極的に行っています。長野県の産業労働部が運営する「信州リゾートテレワーク」では、長野県下のさまざまなワーケーション関連イベントやモデルプラン、自治体の支援制度についての情報が提供されているのが特徴です。
また、スポットで気軽に利用できるコワーキングスペースやWi-Fiやワークスペースの整った宿泊施設の整備も進めており、ワーケーションを希望する人が訪れやすい地域作りを進めています。
北海道
北海道では「北海道型ワーケーション」というWebサイトを立ち上げ、北海道でのワーケーションを希望する企業や個人に情報を発信しています。
また、市町村と協力して現地での体験や交流、視察会などのベントやプランを整備し、研修旅行や合宿など大口の需要喚起に力を入れて取り組んでいるのが特徴です。広大で特徴的な環境を持つ北海道ならではのワーケーションを行うことで、働く人の視野の拡大やモチベーションアップをサポートしています。
和歌山県
和歌山県では「WWP(WAKAYAMA WORKATION PROJECT)」と銘打って全県を挙げてワーケーション推進の取り組みを行っています。
ワーケーションを新たな価値を創造するためのツールと考え、非日常に積極的に触れることで新たな発想やイノベーションを引き出す機会にするというビジョンが特徴的です。県ではワーケーションに訪れる企業や、企業向けにサービスを提供する企業の募集・紹介などを積極的に行い、マッチングのためのイベントや企画も行っています。
沖縄県
観光業が盛んな沖縄県では、事業者がいち早くワーケーションの取り込みについて取り組んでおり、自治体が追って推進のための取り組みを行っています。
沖縄県ではワーケーションを推進する企業に交付金を支給しており、コワーキングスペースや宿泊施設の整備が進んでいるのが特徴です。現在、沖縄県では来県者からワーケーションの需要を詳しく調べ、宿泊施設や観光事業者への情報提供やワーケーション用プランやイベントの立案を行う事業が進行しています。
ワーケーションのメリット・デメリット
企業や働く人にとって、ワーケーションにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。主なメリットやデメリットについて解説します。
ワーケーションのメリット
企業にとっては「採用力の強化」「従業員の満足度向上」が最も大きなメリットと言えるでしょう。従業員に高いモチベーションで仕事に取り組んでもらうことができ、生産性の向上や離職率の減少を期待することができます。
また、特徴ある企業として採用活動でプラスの効果を見込めるのもメリットです。ワーケーションを導入すると有給休暇の取得が増えるという例も多く、有給消化率の改善も期待できます。
働く人にとっては、テレワークと同様に「通勤時間の減少」や「ワークライフバランスの実現」ができることが主なメリットです。また、地域との交流を通じて新しい発想や人脈を得る機会にもなり、ビジネスパーソンとしての成長にもつながります。
現在の状況では「密を避け、コロナウイルスの感染を防げる」こともメリットでしょう。
ワーケーションの導入は地域活性化につながるため、企業のイメージアップ戦略やCSR活動としても効果的です。
ワーケーションのデメリット
ワーケーションの企業側におけるデメリットとしては、「管理・運用が難しい」「ICT環境やセキュリティ対策の整備にコストがかかる」などの点があります。
働く人にとっては、「仕事とプライベートの境目が曖昧になる」ことや、「プライバシーの侵害」や「生産性の低下リスク」といった点もデメリットです。
また、ワーケーションに向いている業種や職種があるため、ワーケーションの導入が従業員間の不平等感を生むことも懸念されます。
ワーケーションの定着に向けた課題
ワーケーションは新しい働き方としてさまざまな面で期待されていますが、定着するためにはいくつかの課題をクリアすることが必要です。ここでは主な課題やその対策案について簡単に紹介します。
勤怠管理
ワーケーションでは、仕事の時間とプライベートの時間の区別が曖昧になるため、勤怠管理が難しくなります。一日の業務が「会議のみ」の場合もありますし、勤務時間中に仕事と自由時間を頻繁に繰り返すことも多いでしょう。
企業の業務に合わせて「特定の業務(会議や資料提出など)の遂行を持ってその日の労働とみなす」「勤怠管理アプリなどで労働時間を把握」「事前に休暇先での(みなし)労働時間を申請する」などのルールを明確にすることが現実的な対応策となるでしょう。
労災の適用
ワーケーションの労災の扱いも課題です。ワーケーション中の移動や活動を業務とみなすか、休暇とみなすかによって、事故が発生した際の労災適用の可否が分かれます。
この場合、業務活動を申請させる方法が望ましいです。会社で把握し、承認している業務活動中に発生した分は労災と認定する、というような運用になるでしょう。しかしこのように状況把握が難しいことから、通常より労災の認定がされにくいリスクがあるということを従業員に説明し理解してもうら必要があります。
ワーケーションに適したICT環境の整備
最も大きな課題は業務のためのICT環境の整備です。現地の宿泊施設やコワーキングスペースでは、ワーケーション向けにネットワーク環境を提供しているケースも多くなってきています。しかし、ネットワーク環境はただ提供されていれば良いということはなく、セキュリティ面も十分に考慮する必要があります。ワーケーションでは以下のようなリスクが考えられます。
端末紛失による情報漏洩
特に注意が必要なのが端末の紛失です。対策としてはモバイルアプリケーション管理のMAMを採用する方法があります。業務用アプリ内でのみ作業をすることで端末自体に情報をダウンロードして保存する必要がありません。情報を残さずに業務を行うことができるので万が一端末を紛失したとしても情報漏洩の心配がありません。
公共Wi-Fiの利用による不正アクセス
ワーケーションではできるだけ不特定多数の人が接続する公共の無料Wi-Fiは利用しないのが理想です。対策としては以下が考えられます。
・ポケットWi-Fiの貸出
・セキュリティソフトやOSを最新の状態にアップデート
・VPNを利用して通信を暗号化
・多要素認証などで不正利用を防ぐ
企業側が環境整備をするのはもちろんのこと、従業員側もリスクの認識と対策を徹底することが大切です。
ワーケーションを実現するためには「moconavi」がおすすめ
観光地やリゾート地に業務用の端末を持ち込んでテレワークを行うワーケーションは、「仕事」と「休暇」を両立させる新しい働き方として注目が集まっています。
ワーケーションではICT環境の整備が重要で、ネットワーク環境の快適性とセキュリティの両立が大きな課題になります。moconaviを活用することで、オフィスから離れたワーケーション環境でもオフィスにいるかのように快適に仕事を進めることができます。高いセキュリティと操作性、あらゆる業務ツールへ繋がることができるテレワークプラットフォーム「moconavi」で企業の柔軟な働き方をサポートします。