BYODとは? 導入される背景やメリット・デメリット、導入事例7選
- 投稿日:2019 - 12 - 2
- 更新日:2026 - 2 - 27

働き方改革の推進やテレワークの定着化に伴い、従業員が個人所有のスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスを業務用途に活用する“BYOD(Bring Your Own Device)”への関心が高まっています。
企業視点ではコストの最適化や柔軟な就業環境の構築、従業員視点では日常的に使い慣れた端末による快適な作業環境といったメリットが期待できる一方、機密情報の管理やプライバシーへの配慮といった課題もあります。
本記事では、BYODの基本的な概念から、CYOD・COPE・COBOといった関連する端末利用形態との違い、導入によって得られる効果やリスク、安全運用を実現するためのセキュリティ施策について解説します。
私物端末を業務に利用する“BYOD”とは?
BYOD(Bring Your Own Device:ビーワイオーディー)とは、直訳すると「自分のデバイスを持ち込む」という意味です。ビジネスでは、従業員が私物のパソコンやスマートフォンなどの端末を業務に利用する働き方として使われます。
近年では、モバイル端末の普及やクラウドサービスの利用拡大によって、テレワークを行う企業が増加していることから、BYODが注目されています。
従業員が私物の端末を用いて社内のサーバやシステムへアクセスして、業務に必要な情報やデータを閲覧・編集できるようになることで、働く場所を選ばないフレキシブルな働き方を実現できます。
BYODで使用する端末には、以下が挙げられます。
▼BYODで使用する端末
- パソコン
- タブレット
- スマートフォン
- SDカード
- ハードディスク
- USBメモリ など
BYODとほかの端末利用形態の違い
BYODと混同されやすいものに、CYOD・COPE・COBOがあります。これらは、デバイスの所有者と私的利用の可否で分類される、企業における端末利用形態です。それぞれの特徴と違いを理解することで、自社に最適な端末利用形態を選択できます。
▼BYOD・CYOD・COPE・COBOの違い
| 所有権 | 端末の選択 | 私的利用 | 特徴 | |
| BYOD
(Bring Your Own Device) |
従業員 | 従業員が自由に選ぶ | 可 | 私物を業務にも使用する |
| CYOD
(Choose Your Own Device) |
企業 | 会社指定リストから選択 | 可(制限ありの場合も) | 企業が候補を用意する |
| COPE
(Corporate Owned, Personally Enabled) |
企業 | 会社指定 | 可(範囲制限あり) | 企業支給端末の私的利用を許可する |
| COBO
(Corporate Owned, Business Only) |
企業 | 会社指定 | 不可 | 企業支給端末を業務のみに使用する |
BYODは、従業員が個人所有の端末を業務に使用する形態です。端末購入や運用コストを抑えられ、従業員も慣れた端末を使えます。一方で、端末やデータの管理が複雑になりやすく、情報漏えい対策とプライバシー保護の両立が課題になります。
CYOD は、企業が用意した候補端末のなかから、従業員が選んで利用する形態です。端末の所有権は企業にあり、機種が標準化されるため管理しやすいのが特徴です。BYODほど自由ではないものの、従業員は一定の選択肢から自分に合う端末を選べます。
COPEは、企業支給端末を業務用として使いながら、ルールの範囲で私的利用も認める形態です。端末の選択・所有は企業側にあり、一元管理しやすくセキュリティを強化しやすいのが特徴です。一方で、私的利用の範囲は制限される場合があります。
COBO は、企業支給端末を業務専用として使用する形態です。セキュリティ管理が容易で統制も取りやすいのが特徴です。一方、従業員の利便性や柔軟性は低くなります。
これらのうち、コスト削減効果が高いのはBYODですが、セキュリティとプライバシー保護の観点から、利用ルールや管理方法を明確に定めた運用が重要です。
BYODが注目される背景
BYODが近年注目される背景には、主に4つの要因が挙げられます。
1.働き方の多様化とテレワークの普及
新型コロナウイルス流行をきっかけに、テレワークやハイブリッド勤務が広がり、働く場所や時間の自由度が高まりました。自宅・外出先・サテライトオフィスなど、従業員が社外から業務システムへアクセスする機会が増えたことで、従来のように社内ネットワークを前提とした働き方だけでは対応が難しくなっています。
企業側には、場所を問わず安全に業務を進められるIT環境を整備する必要が生まれ、従業員側も「移動中に確認したい」「急ぎの対応をしたい」といったニーズが増えました。
しかし、短期間で全従業員分の端末を用意するのは、コストや調達面で現実的に難しいケースもあります。そこで、すでに手元にある私物端末を業務に活用するBYODが、柔軟な働き方を支える実務的な選択肢として注目されるようになりました。
2.モバイル端末の高性能化と普及
スマートフォンやタブレットの性能は年々向上しており、メールやチャット、Web会議、クラウド上の資料確認といった業務に十分耐えうるスペックを備える端末が一般的になっています。以前は「会社支給端末のほうが高性能で、私物端末は業務向きではない」と考えられていましたが、今では私物のモバイル端末で高度な業務アプリケーション(以下、アプリ)を利用できる環境が整いました。
また、従業員が普段から使い慣れている端末をそのまま仕事にも使える点は、操作ストレスの軽減や作業のスピードアップにつながりやすく、業務効率を高める一因になると期待されています。こうした端末側の進化と普及が、BYOD導入を後押ししているといえます。
3.企業におけるコスト削減ニーズ
経済の不確実性が高まるなか、企業はIT投資の効率化や固定費の見直しを進めています。特にモバイル端末は、導入時の購入費だけでなく、更新や修理、資産管理、通信費などの維持コストも継続的に発生するため、全社員に端末を支給する運用は大きな負担になりがちです。
BYODは、企業が負担する端末購入費や通信費の一部を削減できる可能性があります。管理ツールの導入やサポート体制の整備といった運用コストは残りますが、端末配布モデルと比べて費用構造を軽くできるケースがあるため、コスト最適化の観点からも注目されています。
4.クラウドサービスの浸透
クラウドサービスやSaaSが広く普及したことで、端末の種類や場所に依存せず業務を進められる環境が整いました。
以前は社内サーバーや社内ネットワークに依存する業務が多く、端末を統一しないと運用が難しい面がありました。しかし現在は、クラウド上のファイル共有、グループウェア、プロジェクト管理ツール、Web会議などが標準化し、どの端末からでも同じように仕事が可能という前提ができています。
こうした環境変化によって、BYODへの心理的・技術的ハードルが下がり、導入を検討する企業が増えています。
BYODで企業と従業員が得られるのメリット
BYODは企業と従業員の双方にメリットがあります。企業側と従業員側のそれぞれの視点で紹介します。
企業側のメリット4つ
BYODを導入すると、企業には以下のようなメリットがあります。
▼メリット
- キャリア契約や端末購入のコストを削減できる
- 端末管理の運用コストを削減できる
- 多様な働き方を導入できる
- シャドーITを抑制できる
① キャリア契約やモバイル端末購入のコストを削減できる
BYODは企業側で端末を調達する必要がないため、端末費や通信契約費を中心にコストを削減することが可能です。
企業によっては端末の購入代や通信費を補助するケースもありますが、新たに端末を購入する場合と比べると負担を抑えやすくなります。
また、従業員それぞれが自分の使いやすい端末を選べるため、企業側が操作方法をレクチャーする必要がなく、教育にかかる時間・コストも抑えられます。
② モバイル端末管理の運用コストを削減できる
端末の調達・キッティング・修理対応などは従業員側で完結するため、企業の端末管理工数が軽くなるケースがあります。特に、端末ごとの細かい設定作業や故障対応が減る点がメリットです。
一方で、BYODでも業務アプリやデータを守るためのMDM(Mobile Device Management:モバイルデバイス管理)運用、認証・監査体制などは必要になるため、セキュリティ運用は別途必要になります。
③ 多様な働き方を導入できる
BYODを導入して、社内の業務システムを利用できる環境を整えることで、自宅や外出先などで業務を行えるようになります。
在宅勤務やサテライトオフィス勤務など、多様な働き方の制度を導入できるため、従業員満足度やモチベーションの向上につながることが期待できます。これは、育児や介護といったライフイベントと仕事の両立を目指す従業員、あるいは遠隔地に居住する優秀な人材を採用したい企業にとって、競争優位性をもたらします。
なお、国土交通省の『テレワーク人口実態調査』によると、テレワークはコロナ前より高い水準を維持しており、出社と組み合わせる働き方が定着しつつあります。こうした環境変化とも、BYODは相性がよいといえます。
▼テレワーカーの割合

画像引用元:国土交通省『令和6年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-』
④ シャドーITを抑制できる
シャドーIT(※)の存在を抑制できることも、BYODのメリットです。
BYODを導入して、ルールに沿った端末管理を行うことで、従業員が私物端末や未承認サービスを勝手に使う状態(シャドーIT)を減らしやすくなります。例えば、SNSやチャットなどの個人アカウントで取引先と連絡をとることや、個人で利用しているクラウドストレージに業務データを保存することなどが該当します。
ただし、BYODはルールや管理が弱い面があり、シャドーITを増やす可能性もあるため、運用設計と周知が重要になります。
※シャドーITとは、企業の許可のない端末やクラウドサービスなどを従業員が独断で業務に利用すること。
従業員側のメリット2つ
BYODを導入する従業員側のメリットには、以下が挙げられます。
▼メリット
- 業務効率化につながる
- モバイル端末の2台持ちが不要になる
① 業務効率化につながる
BYODを導入することで、従業員は効率的に業務を行えます。
企業側で業務用端末を支給する場合、従業員は端末の使い方を新たに覚えたり、マニュアルを読み込んだりする必要が出てくる可能性があります。操作や設定方法に疑問があり、自己解決が難しい場合には、社内のヘルプデスクへの問い合わせが必要になり、業務が一次的にストップしてしまうことも考えられます。
BYODであれば、使い慣れた端末で業務を行うことが可能です。ノートパソコン・スマートフォンなどのモバイル端末を使用する場合は、移動中や外出先でも仕事への対応が可能になるため、業務効率化を図れます。
② モバイル端末の2台持ちが不要になる
企業がモバイル端末を従業員に支給する場合、従業員は業務用端末と私物のプライベート端末の2台を持ち歩く必要があります。
複数の端末を持ち歩くと、移動の負担になるだけでなく、OSのアップデートや充電の手間が増えたり、紛失のリスクが上がったりと管理が大変になりがちです。
BYODを導入すれば、私物の端末1台で業務とプライベートの両方に対応できるため、2台持ちが不要になり、従業員の利便性が向上します。また、2台持ちによる紛失や盗難のリスクも抑えやすくなります。
BYODで企業と従業員が注意したいデメリット
BYODは、業務上のメリットが多いですが、注意しておきたいデメリットもあります。ここでは、企業と従業員がそれぞれ注意しておくポイントを紹介します。
企業側のデメリット3つ
BYODを導入するにあたって、企業側では以下の3つに注意する必要があります。
▼デメリット
- 制度やルールが複雑化する
- 従業員のプライバシーが守られにくくなる
- 従業員のランニングコストがかかる
① 制度やルールが複雑化する
BYODは、従業員の私物の端末を業務で使用するため、公私混同しやすくなるほか、セキュリティリスクも高まると考えられます。このような問題を防ぐには、制度やルールを整備することが重要です。
ただし、BYODの制度やルールが複雑になると、従業員が利用しにくくなり、現場で浸透しない可能性もあります。導入する際は、従業員の同意を得たうえで定期的に教育や研修を行い、ルールに則った運用を定着させることが大切です。
② 従業員のプライバシーが守られにくくなる
BYODを導入すると、業務に使用するデータやアプリなどを企業側で管理するため、従業員のプライバシーが守られにくくなる可能性があります。
また、私物の端末を業務で利用できるようになると、時間・場所を問わず仕事ができるようになり、残業や長時間労働が発生しやすくなるといった懸念もあります。
企業は、業務遂行上必要なデータ取得・管理を最小限にとどめ、取得するデータの種類と利用目的を従業員に開示して同意を得るなどの対応が求められます。
③ 通信費の費用負担・精算が複雑になる
BYODでは、私物の端末を業務にも使うため、通信費のうち業務分と私用分を切り分けにくくなります。業務利用分だけを正確に把握して補助・精算するには労力がかかり、会計処理も複雑になりがちです。
さらに補助額が大きくなると課税対象になる可能性があり、反対に少なすぎると従業員の不満につながります。そのため、補助基準や精算方法をあらかじめ決めて、運用ルールとして明確にしておくことが重要です。
従業員側のデメリット2つ
従業員側のデメリットには、以下が挙げられます。
▼デメリット
- 公私混同をしやすくなる
- セキュリティリスクがある
① 公私混同をしやすくなる
私物の端末を業務で扱うBYODは、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすいデメリットがあります。仕事で使っている端末が常に身近にあることで、仕事とプライベートの切り替えが難しいと感じる人もいます。
また、上司や顧客からの連絡が個人のスマートフォンに通知されると、休日や業務時間外での対応が求められて、精神的な負担になる可能性もあります。
便利な反面、本人の自覚がないまま作業時間が伸びたり、時間外のやりとりが習慣化したりして、ワークライフバランスを崩す原因になることもあります。そのため企業側は、業務時間外の連絡ルールや通知設定の方針を決めて、公私の線引きをしやすい運用とセットで導入することが重要です。
② セキュリティリスクがある
BYODを導入すると、業務に関する情報が保存された端末をプライベートでも持ち歩くことになり、紛失や盗難が起きたときの情報漏えいリスクが高まります。
また、企業側が端末利用状況を十分に管理できていない場合、未承認アプリや個人クラウドの利用(シャドーIT)によって情報漏えいやウイルス感染が起きてしまうことも考えられます。
企業側は、従業員のセキュリティに対する意識を高めて、より慎重に端末を取り扱うように意識づけをしていく必要があります。そのほか、ウイルス対策ソフトのインストールを従業員に徹底させるといった対策も求められます。
なお、BYODに必要なセキュリティ対策について、こちらの記事で解説しています。
併せてご覧ください。
企業が端末を支給する場合とのコスト比較
BYODを導入すると、企業が業務用端末を支給する場合と比べて、初期導入や運用にかかるコストを抑えやすくなります。社内や取引先との連絡に欠かせない“通話”を例に、コストを比較してみます。
▼端末を支給する場合とBYODを導入する場合のコスト比較
| ケース | 特徴 | 費用 |
| 企業が端末を支給 | 初期費用・端末購入費・月額固定費・通話料などが必要になる | 通信キャリアや契約プランによっては、毎月トータルで1台当たり1万円以上かかる可能性もある |
| BYOD | 新たにキャリアを契約したり、端末購入代金を支払ったりする必要がない | 業務に利用した通話料を中心に負担し、運用方針に応じてサービス利用料や補助が発生する場合がある |
実際に通話に関するBYODサービスを導入した『株式会社NTTデータCCS』では、支給していた業務用端末をBYODに切り替えたところ、コストを3分の1にまで削減できたと公表しています。
BYOD導入時の費用負担と法務・労務上の注意点
BYODを導入する際に整理しておきたいのが、通信費や端末代を誰がどの範囲で負担するか、またその運用が法務・労務にどう影響するかという点です。BYODは従業員の私物を任意で業務に使う仕組みのため、費用負担の決め方やルールの置き方によって、制度の定着度やトラブルの起きやすさが変わります。
通信費負担の考え方
BYODでは私物端末で業務を行うため、通信費の負担ルールを事前に決めておく必要があります。業務に通常必要な通信費は会社負担を前提に設計するのが一般的ですが、私用と業務用の通信が混在しやすく、業務分だけを正確に切り分けるのは簡単ではありません。
補助方法は、毎月一定額を支給する定額方式と、業務利用分を合理的に算定して精算する実費方式が中心です。どちらにするかは就業規則・BYOD規程に明記し、利用実態に併せて見直す運用が重要です。
なお、注意したいのが税務上の扱いです。国税庁では、“実費相当額を合理的に精算して支給するなら非課税、渡し切りの定額手当は給与課税”という考え方が示されています。
| 在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企 業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する 必要はありません(【問5】参照)。
なお、企業が従業員に在宅勤務手当(従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月 5,000 円を渡切りで支給するもの))を支給した場合は、従業員に対する給与として課税する必要があります。 |
引用元:国税庁『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)』
この考え方を前提に、企業は自社の働き方や通信利用の実態に合った補助ルールを設計していくことが大切です。
出典:国税庁『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)』
端末代の負担の考え方
端末代については、企業が業務上必須の端末として購入や利用を求める場合、企業側が負担するのが基本的な考え方です。
一方でBYODは、従業員の私物を任意で業務に使う仕組みのため、端末代を企業が負担しない運用もあります。ただし負担が従業員側に偏りすぎると不公平感や不満につながり、制度が定着しにくくなります。
BYOD導入時は、従業員の負担が偏らないよう、端末維持費を支給するといった工夫が求められます。あわせて、利用できる端末の条件も現実的な範囲(例:サポート対象OS・バージョン、画面ロック必須など)で設定しておくと、運用の納得感を得やすくなります。
端末代の扱い(補助の有無、対象範囲、更新・故障時の考え方など)は、就業規則やBYOD規程に明記し、事前に十分説明したうえで同意を得て運用することが大切です。
労務管理の複雑化への対応
私物端末を業務利用できる環境は、端末が常に手元にある分、就業時間外でも業務連絡に対応しやすく、仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちです。その結果、本人に残業の自覚がないまま作業が積み上がったり、時間外の対応が常態化したりして、いわゆる隠れ残業につながる可能性があります。
こうしたリスクを抑えるには、実労働時間の記録・申告ルールを明確にしたうえで、時間外連絡の扱い(原則しない・緊急時のみ対応など)や通知の運用方針を整備して、働きすぎを防ぐ仕組みとして定着させることが重要です。
プライバシー保護について
BYODでは私物端末を業務に使うため、情報漏えい対策としてMDMを導入するケースがあります。ただしMDMは、端末の利用状況やインストールアプリ、機種情報、場合によってはGPSによる位置情報などを取得・管理できるため、私物端末に入れると従業員のプライベートな行動や情報が会社側に伝わるリスクがあります。
このリスクを抑えるには、会社が取得する情報の範囲と目的を事前に明確にし、就業規則やBYOD規程に明記したうえで従業員の同意を得て運用することが重要です。あわせて、業務アプリだけを管理するMAMの活用や、業務データを専用領域に分離する運用を取り入れることで、プライバシーへの影響を最小限にしやすくなります。
BYODを導入する際のセキュリティ対策のポイント
BYODでは私物端末で業務データを扱うため、端末内にデータが残ったり、企業側が端末の状態を十分に把握できなかったりするリスクが生じます。
安全にBYODを運用するには、以下のようなセキュリティ対策が必要です。
① 運用ルールを決める
BYODの導入にあたって、運用ルールを決める必要があります。
個人の端末をどこまで業務に使用するのか、従業員にヒアリングしたうえで「メッセージの受信のみ」「タスクの閲覧のみ」などの使用範囲を明確にすることがポイントです。また、情報の取り扱いに関するルールも定めておく必要があります。
▼運用ルールの例
- 機密情報や顧客情報は端末に保存しない
- セキュリティ機能があるUSBメモリや外付けハードディスクを利用する
- 個人所有のUSBメモリを使用しない、または使用時に相談する
BYODでは1台の端末内に公私の情報が混在することになるため、従業員に対しては業務中だけでなくプライベートでも端末の管理を徹底するように教育することも重要です。
② 情報セキュリティ対策のガイドラインを作成する
情報セキュリティ対策のガイドラインを作成して、従業員に遵守させることもポイントの一つです。ガイドラインに記載する内容には、以下が挙げられます。
▼情報セキュリティ対策のガイドラインの作成例
- USBメモリやSDカードなど外部ストレージに業務データを保存しない
- 端末を公共Wi-Fiや不審なアクセスポイントに接続しない
- 紛失や盗難が起きた際の対処方法(遠隔でのデバイスロックやデータ消去など)
発生しうるトラブルを事前に想定して、“トラブルを防ぐために守るルール”と“トラブル発生時の具体的な対処方法”について定めておくことが重要です。これにより、情報漏えいのトラブルを未然に防いだり、トラブル発生時の被害を最小限に食い止めたりすることが可能です。
③ 安全なテレワーク方式を選択する
BYODを導入して社外から業務を行う際は、安全なテレワーク方式を選択する必要があります。テレワーク方式にはいくつか種類があり、それぞれ接続方法やセキュリティ対策のレベルが異なります。
▼テレワーク方式の特徴
| 方式 | 特徴 |
| VPN方式 | テレワーク端末と社内ネットワークへのVPN接続を介して、社内サーバにアクセスして業務を行う |
| リモートデスクトップ方式 | 社内に設置されたデスクトップ端末にテレワーク端末からアクセスして、遠隔操作をして業務を行う |
| 仮想デスクトップ(VDI)方式 | テレワーク端末から仮想のデスクトップ環境にアクセスして、そこから遠隔操作をして業務を行う |
| セキュアコンテナ方式 | テレワーク端末に仮想的な環境を設けて、その環境からアプリケーションを操作して業務を行う |
| セキュアブラウザ方式 | テレワーク端末上に安全なインターネットブラウザの領域(セキュアブラウザ)を作成して、社内のシステムにアクセスして業務を行う |
| クラウドサービス方式 | インターネット上にあるクラウドサービスにテレワーク端末から直接アクセスして業務を行う |
| スタンドアロン方式 | 社内ネットワークに接続せずに、テレワーク端末や外部記録媒体にデータを保存して、オフラインで業務を行う |
自社の業務内容や環境に適したテレワーク方式を選ぶ際は、以下のフローチャートを活用することが有効です。
オフィスとは異なるネットワーク環境での作業となるため、BYOD利用のリスクを踏まえたテレワーク方式を選択することが重要です。
④ アカウントの認証管理を行う
BYODを導入して社内システムやクラウドサービスにアクセスする際は、従業員のアカウント認証を行い、アクセスを制御することが重要です。
▼アカウントの認証管理
- 社内システムやクラウドサービスへのアクセス時に、多要素認証や電子証明書を使用する
- 強固なパスワードポリシーを作成する(定期的な変更、使いまわしの禁止など)
- 人事異動や担当者の変更を把握して、アカウントの消去・権限変更を行う
多要素認証とは、パスワード入力や秘密の質問、SMS認証などの複数の要素を用いてアクセスの許可を認証する仕組みです。また、電子証明書とは、データのやり取りを行う際に、改変がされていないことを証明するものです。
⑤ ログの取得・保存を行う
サーバやシステムなどに誰がいつアクセスしたかを把握できるように、ログの取得・保存を行うこともポイントです。管理するログには、アクセスログ・認証ログ・操作ログ・特権ログ(管理者権限)などが挙げられます。
また、セキュリティリスクを速やかに把握するために、アクセス拒否が行われたログや、特権IDのログイン失敗の履歴などを定期的に確認しておくことが重要です。
⑥ MDMやMAMを導入する
より高度なセキュリティ対策を行うには、セキュリティ対策ツールの導入が必要になります。モバイル端末のセキュリティ対策に有効なのが、MDM(Mobile Device Management)やMAM(Mobile Application Management)です。
MDMとは、モバイル端末を一元的に管理・監視するためのツールです。事前に定めたBYODの運用ルールを破ったり、不正な操作をしたりすると、機能を利用できないように制限できます。各端末の状況を自動的に収集する機能もあるため、紛失時の第三者による使用状況を把握できます。
MAMとは、モバイル端末にインストールしたアプリを管理するツールです。業務用アプリを対象に絞ったうえで、データの制御や暗号化などを個別設定できます。MDMとは異なり、端末本体を管理するわけではないため、プライベート利用するBYODにも導入しやすいセキュリティ対策といえます。
なお、BYODに必要なセキュリティ対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
⑦ ゼロトラストでBYODを安全に運用する
BYODでは企業所有でない私物端末が業務システムにアクセスするため、端末を無条件に信頼しない“ゼロトラスト”の考え方が有効です。ゼロトラストでは社内外を問わず、アクセスのたびに利用者と端末の安全性を確認し、問題がない場合にのみ接続を許可します。
具体的には、端末のOS更新状況や不正改造の有無などをチェックして安全な端末だけ接続させ、多要素認証(MFA)や最小権限の付与と組み合わせることで被害範囲を抑えます。BYODを導入する企業にとって、ゼロトラストは私物端末利用のリスクを下げる前提となる考え方といえます。
レコモットのBYODの導入事例7選
ここからは、セキュリティ対策を取り入れてBYODを適切に運用している導入事例を7つ紹介します。
和歌山県
▼概要
和歌山県ではICTの活用を積極的に進めていて、全職員のパソコン約4000台にシンクライアントシステムを導入しています。しかし、システムを県外から使用できるのは、東京事務所に限定されており、その改善を図るために『moconavi』を活用してBYODを実現しました。
▼課題
県外からシンクライアントを使用できるのは東京事務所に限られていたため、職員の働き方が制限されていました。
▼課題解決方法
リモートアクセスサービスの『moconavi』を活用して、モバイル端末から安全にシンクライアントに接続できる環境を構築しました。
▼導入結果
- いつでもどこでも業務が行えるようになった
- 庁外で働く職員の利便性が向上した
- 残業時間の削減に成功した
- ワーケーションの推進につながった
- 柔軟な働き方を実現した
和歌山県の一部職員は、「仕事をしながら海外旅行をする」という体験をしていて、観光の合間にスマートフォンで業務をするといった働き方を実現しています。
なお、BYODの課題であるセキュリティ対策に関しては、moconaviによる通信の暗号化や端末側に一切のデータを残さない仕組み、強固なアクセス認証、ウイルス対策といった機能でクリアしています。
セゾン投信株式会社
▼概要
資産総額3,000億円のファンドを運用するセゾン投信株式会社(2020年時点)は、テレワーク推進に際してBYOD導入を検討していました。『moconavi』の導入により、スムーズにテレワーク化を実現させました。
▼課題
従業員が社外で活動することが増えてきており、メールを見るためだけにパソコンを持ち歩いていました。また、顧客情報を社外で取り扱うセキュリティリスクに不安を抱えていました。
▼課題解決方法
2020年にリモートアクセスサービス『moconavi』を導入して、Office 365やパソコンを遠隔操作できるリモートデスクトップサービス『moconavi RDS by Splashtop』と連携しました。
▼導入結果
- スマートフォンを軸にしたBYOD環境を実現できた
- テレワークでも、社内パソコンにセキュアにアクセスできるようになった
- 顔認証との連携によってIDパスワード管理が容易になった
コロナ禍で緊急事態宣言が出た際には、外販活動を自粛するとともに、4割の従業員を在宅勤務に移行することができ、スムーズなテレワーク化を実現しました。
北國銀行
▼概要
北國銀行では、IT活用に積極的に取り組んでいて、全従業員にモバイルパソコンとスマートフォンを配布していましたが、セキュリティ対策や端末管理の効率化に向けて『moconavi』を採用しました。
▼課題
私物端末との2台持ちで荷物が増えることや、端末管理の煩雑さから、社内でのBYODへのニーズが高まっていました。また、データが端末に残ることに不安を感じていました。
▼課題解決方法
セキュリティ対策にMAMのなかでトップシェアを誇る『moconavi』を採用して、BYODを導入しました。業務に使用するMicrosoft365には、moconavi経由でのみログインできるように設定して、端末にデータを残さない仕様にしました。
▼導入結果
- 私物端末のアプリのみを管理する仕組みによって、業務とプライベートの領域を明確に分けて管理できるようになった
- ランニングコストを削減できた
- 2台持ちの解消によって従業員の利便性が向上した
通信料金と端末購入費の一部を補助するために、BYOD手当を支給しているものの、ランニングコストは約20%削減できているとのことです。
株式会社サーラビジネスソリューションズ
▼概要
株式会社サーラビジネスソリューションズでは、事業運営に関わる人材が5,000人を超えています。物流ドライバーや厨房スタッフなど日常的にパソコンを使わない職種もあり、業務用パソコンの数は約4,000台にとどまっていました。そこで、個人所有の端末を活用するBYODの導入を検討しました。
▼課題
予算の問題から従業員全員に端末を支給できず、情報格差が生じていました。「いずれは全員にパソコンやスマートフォンの支給を」と考えていた矢先、リモートワークが不可能なことで退職せざるを得ない従業員が現れました。
▼課題解決方法
『moconavi』を活用して、個人所有のスマートフォンを活用するBYODを採用しました。050電話サービスを契約することで、個人端末で業務通話ができる環境も整えました。
▼導入結果
- 私物端末から社内ポータルやワークフローが使えるようになった
- 外出が多い職種に携わる従業員の業務処理も滞りなく行うことができた
- 業務で使用した通話料金が従業員負担にならない管理ができるようになった
従業員の個人端末を利用して、従業員や関係者との情報共有が円滑になったことで、働き方改革の実現や生産性の向上につながっているとのことです。
あおぞら銀行
▼概要
1957年設立のあおぞら銀行では、行員への社給スマートフォンの配布数が約1,000台に達し、管理コストの増大やセキュリティリスクへの対応が課題となっていました。そこで、コスト削減と利便性向上を目指し、BYOD(私物端末の業務利用)への切り替えを決断。端末にデータを残さない仕組みを持つ『moconavi』を採用することで、セキュアかつ効率的なモバイルワーク環境を全行員向けに整備しました。
▼課題
社給スマートフォンの増加に伴い、端末の調達費用やキッティング等の管理工数が膨大になっていました。また、端末紛失時に内部データへのアクセス有無を完全に確認することが難しく、情報漏えいリスクへの懸念がありました。さらに、行員は個人用と社用の「スマホ2台持ち」を余儀なくされており、移動時の荷物が増えるなど利便性の面でも課題が生じていました。
▼課題解決方法
個人所有のスマートフォンを業務利用するBYODを採用し、ツールとして『moconavi』を導入しました。端末本体にデータを残さない仕組みと、詳細なアクセスログ機能により、紛失時の情報漏えいリスクを最小化できる点を評価。また、直感的なUIで電話機能との親和性も高く、スムーズな移行が可能であることから採用に至りました。
▼導入結果
- BYOD化によりスマートフォンの「2台持ち」が解消され、行員の利便性が向上
- 端末にデータが残らずログ確認も可能なため、紛失時のセキュリティ対応が迅速・確実化
- 社給端末の調達や提供にかかるリードタイム、コスト、管理工数を大幅に削減
- 場所を選ばずワークフロー承認やチャットが可能になり、意思決定のスピードが向上
株式会社エフ・ディー・シー
▼概要
ITソリューションを提供する株式会社エフ・ディー・シーは、以前からBYODを導入していましたが、利用していたアプリの使い勝手が悪く、従業員から不満の声が上がっていました。セキュリティと利便性の両立を目指してツールの入れ替えを検討し、3ヶ月間の比較検証を実施。その結果、操作性と機能性に優れ、現場の課題を解決できる『moconavi』への移行を決定しました。
▼課題
以前利用していたアプリはセキュリティ設定が厳格すぎたため、毎回ID・パスワードの入力が必要で、メールのプッシュ通知も機能しないなど、利便性に大きな問題がありました。また、テキストのコピー&ペーストができない、パスワード付きファイルが開けないといった機能制限も多く、従業員の業務効率低下やストレスの原因となっていました。
▼課題解決方法
従業員の不満や要望を解消しつつ、高いセキュリティを維持できるツールとして『moconavi』を選定しました。Google Workspaceとの連携に加え、生体認証によるログインの簡略化、プッシュ通知機能、ファイル閲覧機能などを備えており、セキュリティを担保しながら「使いやすさ」を劇的に改善できる点が決め手となりました。
▼導入結果
- ログインの簡略化やプッシュ通知の実装により、従業員のストレスと不満を解消
- 操作性に関する問い合わせが激減し、管理部門の運用サポート負荷が軽減
- メールの即時確認やチャット、スケジュール共有が円滑になり、業務効率が向上
- 端末にデータを残さない仕組みにより、紛失時の情報漏えいリスクを低減
アイフル株式会社
▼概要
大手消費者金融のアイフル株式会社では、コロナ禍を機に在宅勤務の必要性が高まりましたが、リモートアクセス環境が未整備でした。PC持ち出しの制限や承認業務の停滞といった課題を解決するため、セキュアなBYOD環境を構築できる『moconavi』を導入。Microsoft 365などと連携し、場所を選ばずに業務ができる環境を整えることで、業務継続性の確保と働き方改革を推進しました。
▼課題
以前はリモートワーク用のPC台数が不足しており、持ち出しの申請手続きやデータ消去の手間も大きく、在宅勤務が浸透していませんでした。その結果、承認担当者が出社できない場合に業務が滞る事態が発生。また、個人スマホでの業務連絡はセキュリティや公私混同の観点からリスクがあり、安全に業務利用できるモバイル環境が求められていました。
▼課題解決方法
「端末にデータを残さない」という堅牢なセキュリティ機能と、Microsoft 365(Teams、メール、ワークフロー)とのスムーズな連携を評価し、『moconavi』を導入しました。役職者から順次利用を開始し、個人のスマートフォンから安全に承認業務やメール確認ができるBYOD環境を構築しました。
▼導入結果
- 場所を問わず承認業務やメール確認が可能になり、決裁スピードの停滞を解消
- 出社できない状況でも業務を継続でき、パンデミック等のBCP対策として機能
- 直感的な操作性でユーザーからの問い合わせが少なく、システム部門の運用負荷が低い
- セキュアな環境で業務ができるため、従業員の安心感とワークライフバランスが向上
「moconavi」ひとつでセキュアなBYOD環境を構築。コロナ禍を機に浸透したリモートアクセスで、承認業務と従業員の安心感を両立
セキュリティ対策をしてBYODを活用しよう
BYODは、従業員の柔軟な働き方を実現するために有効です。一方で、私物の端末を使用するため、情報漏えいやウイルス感染といったセキュリティリスクも伴います。安全にBYODを運用するには、業務用アプリの管理や制御を行えるMAMツールの活用が有効です。
リモートアクセスサービス『moconavi(モコナビ)』は、MAMのなかでトップシェアを誇ります。端末にデータを残さずウイルス感染のリスクも抑えられるため、紛失時の情報漏えいやセキュリティリスクのあるユーザー行動を未然に防げます。
また、各種クラウドサービスや社内ネットワークへすぐに接続できるため、快適なリモートアクセス環境を提供します。
こちらでは、BYOD運用のためのセキュリティ対策や運用ポイントをまとめたチェックリストを用意しております。ぜひご活用ください。



