ワークライフバランスとは?メリットや実現方法について解説

  • 投稿日:2019 - 8 - 7
  • 更新日:2023 - 3 - 22
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ワークライフバランスは企業や従業員にとって重要な意味を持つ考え方の一つです。

近年、さまざまな場所でワークライフバランスの実現を望む声が大きくなりました。今回の記事ではワークライフバランスの意味や、なぜこのような考え方が重要なのか、そして、具体的に実現する方法について解説します。

ワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」を意味する言葉です。

仕事をすることは生きていくために欠かせないことです。しかしそれだけではなく、生活の質の向上も生きていくうえでは大切な目標です。

このバランスを実現するためには、仕事と仕事以外の生活の調和を図る必要があり、その両方を充実させる考え方としてワークライフバランスという概念が生まれました。

つまり、仕事と生活のどちらか一つを重視するのではなく、両方が相互に良い影響を及ぼし合いながら相乗効果を生み出すことが、ワークライフバランスの本質です。

これまでの日本社会ではどちらかといえば仕事のみが重要視されがちだったので、見方によっては、その反動ともいえます。

ワークライフバランスの由来

ワークライフバランスという考え方は、女性の社会参画が叫ばれるようになった1980年代のアメリカで生まれたといわれています。女性が社会で活躍するのが当たり前になってくると、徐々に仕事と子育ての両立という課題が浮き彫りになってきました。そこで、企業は女性が無理なく働き続けるための対策を考えるように。これこそがワークライフバランスの実現に向けた動きの始まりです。

ワークライフバランスは、もともとは「ワーク・ファミリー・バランス」や「ワーク・ファミリー・プログラム」と表現されていました。このことからも、当初はワークライフバランスが仕事と子育ての両立を目指すためのものだったとうかがえます。その後、家族の在り方や働き方も多様化が進みました。それにより、子育てに限らず生活全般と仕事との調和をとることを目的として、ワークライフバランスが捉えられるようになっていきます。そして現在では、ワークライフバランスは男女ともに重要なものと考えられています。

ワークライフバランスの重要性が叫ばれる背景

日本が高い経済成長率を示していた時代には、生活よりも仕事を重要視する風潮がありました。それでは現代はなぜ、ワークライフバランスを重要視するようになったのでしょうか。

その背景として次の3つが考えられます。

長時間労働のまん延

内閣府の調査データによると、1980年代の日本の総実労働時間は年間2000時間を超えていたとされ、労働時間の短縮が国政の重要課題に位置付けられるようになりました。

その後、2000年頃には1800時間台になりましたが、長時間労働者と短時間労働者に二極化し、週60時間以上の労働者が増加。

長時間労働により、うつ病や過労死の増加が社会全体で取り沙汰されるようになり、ワークライフバランスを求める動きが活性化していったのです。

出典:

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)総括文書(内閣府)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

メンタルヘルス課題の深刻化

働く人のメンタルヘルスの課題が深刻化してきたことも、ワークライフバランスが注目されるようになった背景です。

仕事では、業務の量や質が自分に合っていなかったり、自分の知識や技術がうまく活かせなかったりといった理由でストレスを感じる場面は少なくありません。

また、人間関係がうまくいかなかったり、将来に不安を感じたりすることもあるでしょう。

メンタルヘルスを保ち、心身ともに健康に暮らすためには、仕事から離れ、家族との生活や趣味、地域活動、自己啓発などの時間をつくることが重要になるのです。

日本の少子化

最後に、日本国内で少子化が深刻化していったことが挙げられます。

1980年には、男性のみが働く世帯数は共働き世帯数の2倍近くありましたが、1990年には共働き世帯数が上回るように。しかし、女性が家庭のなかで大きな責任を担っている世帯が多いにもかかわらず、就業環境に柔軟性が乏しいという状況がありました。

結婚や子育てをする女性の就業継続や希望する形での再就職が難しく、これが少子化の要因のひとつになったと考えられています。

このような背景から、2007年に国民一人ひとりの希望を実現しやすい環境を実現するために、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されたのです。

出典:

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)総括文書(内閣府)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

ワークライフバランスが実現された社会が可能にするもの

ワークライフバランスが実現された社会とは、一体どのようなものなのでしょうか。

日本政府が示す指針「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」の内容にもとづいて、ワークライフバランスの実現によって可能になることを3つ紹介します。

就労による経済的自立

ワークライフバランスが実現された社会では、就労による経済的自立が可能になるといわれています。

就労による経済的自立が可能になると、たとえば、若い世代が今以上にいきいきと働くことができるでしょう。労働一辺倒の価値観では、なかなか自分の生活を振り返る余裕がなくなってしまうものです。

しかし、ワークライフバランスが実現された社会では、自立して仕事をしながら自分の生活に目を向けることもできるのです。このような社会が実現すれば、結婚や子育てなどの個々の希望の実現に向けて、誰もが暮らしの経済的基盤を確保できるということになります。

健康で豊かな生活のための時間の確保

健康で豊かな生活のための時間が確保できることも、ワークライフバランスが実現された社会の大きな特徴です。高度経済成長期には経済的な価値観が大きな割合を占めていましたが、現代は自分たちの生活の質にもこだわる人が増えています。

それは、健康を保つことはもちろん、家族や友人と過ごす時間なども含まれます。さらに、以前よりも時間に余裕ができるということは、自己啓発や地域活動に参加するための時間なども充実させられることを意味しています。これらはすべて、働く人々の豊かな生活につながっていくと考えられます。

多様な働き方・生き方の選択

ワークライフバランスが実現された社会では、多様な働き方や生き方も可能になるといわれています。

具体的には、性別や年齢などに関わらず、誰もがさまざまな働き方や生き方にチャレンジできる機会が提供される社会です。

また、人によっては子育てや介護などで忙しい人もいますが、そのような人々も自分らしい形で働くことができるようになります。そのためには、多様な働き方を選択できる社会環境整備と、働き方に関わらず公正な処遇が確保される環境を構築することが大切です。

ワークライフバランスを実現するメリット

ワークライフバランスの実現は従業員だけにメリットがあると考えられがちですが、企業にとっても良いことがあります。

ワークライフバランスが実現することによってもたらされる5つのメリットを、企業側の視点に立って具体的に解説していきます。

従業員の意欲・能力アップ

ワークライフバランスの実現により、働く人の意欲や能力を向上させることが期待できます。

なぜなら、従業員は仕事以外の時間が確保できることで、その時間を自己啓発やスキルアップに使えるからです。自己啓発やスキルアップによって従業員それぞれの能力が高まれば、企業にとっても大きな力となるでしょう。

また、仕事以外の時間が充実することで、仕事そのものへの意欲向上も期待できます。これは、オンとオフを切り替えられるようになるため、心に余裕が生まれ、仕事でもモチベーションを維持しやすいということです。

有能な人材の確保

ワークライフバランスの実現は有能な人材の確保につながります。

高い技術や経験値をもっている人は、「より良い環境で働きたい」と考えていることも多く、ワークライフバランスを実現している会社は魅力的に映る可能性が高いでしょう。

「個人の状況に合わせて柔軟に働けるかどうか」ということは、求職者が会社を選ぶうえで重要なポイント。そのため、労働環境の整備は、知識や技術、経験のある人などの離職を防ぐことにもつながります。

仕事の効率化

日本社会では長年、長時間残業が常態化してきました。しかし、長時間残業は従業員の健康はもちろん、仕事の効率化という意味でもマイナスになります。

ワークライフバランスを実現することで、このような問題の解消も期待できます。

残業を制限し、限られた時間内で仕事をすることが求められるため、業務の効率が上がります。業務の効率を上げるためには無駄な作業をしないという姿勢が重要であり、本当に必要な仕事の生産性が増していくのです。

企業イメージのアップ

企業のイメージは顧客や取引先、就労希望者に大きな影響を与えます。

企業イメージが良ければ信頼性のある企業として顧客が増える可能性も高まるとともに、新規取引の企業にも安心してもらうことができます。さらに、知識や経験を持った有能な人材も集まりやすいでしょう。

このように、ワークライフバランスを実現することによって社員を大切にする企業として認知され、企業イメージが向上するのです。

コスト削減

ワークライフバランスの実現は、長期的に見ると企業コスト削減にもつながります。具体的には、ワークライフバランスを実現することによって、人材の流出を防ぐことができます。人材の流出を防げるということは、代わりの人員を探す手間が減り、コストを抑えることにもなるのです。

また、ワークライフバランスの実現で職場環境が良くなれば、残業などの長時間労働も減るでしょう。長時間労働が減ることで、光熱費や交通費などの削減効果も期待することができます。さらに、このような環境を積極的に構築していく企業には、政府や地方公共団体から経済的支援が行われることもあります。

ワークライフバランスを実現する方法

企業がワークライフバランスを実現するといっても、そのやり方にはさまざまな方法があります。

ここでは数ある方法のなかから5つを紹介します。最初はそれぞれの企業に合った形で、取り入れやすいものから実現していくと良いでしょう。また、長期的には、より良い環境構築のために複数の方法を併用していくことが重要です。

出産・育児・介護休暇取得の促進

従業員の出産や育児、介護休暇の取得は社会的にも大きな注目を集めています。出産・育児を理由とする離職の防止や従業員満足度の向上など企業にもメリットがあります。

出産などで従業員が離職した場合、代わりを探さなければなりませんが、制度を利用してもらうことによって、休暇期間が終わったら再び働いてもらうことも可能になります。また、育児休暇は女性が取得するイメージが強いですが、男性にも推奨することで男女共に働きやすい職場になるでしょう。

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短時間勤務制度の導入

短時間勤務制度とは、一般的に「時短勤務」と呼ばれることが多い制度です。たとえば、育児や介護に携わる従業員を対象に、勤務時間を短縮します。従業員としては、自分の家庭環境に合わせて働くことができ、短時間でもパフォーマンスを発揮しやすくなります。

また、時短勤務にもいくつか選択肢を用意すると、従業員がより柔軟な働き方を実現できるようになるでしょう。

こうしたモチベーションを高めて働ける環境整備は、企業側にとっても大きなメリットとなります。

フレックスタイム制度の導入

フレックスタイム制度とは、1ヶ月以内の期間で総労働時間を規定して、その枠のなかで従業員が始業時間と終業時間を決められる制度。就業の自由度が高まり、従業員の家庭環境や生活スタイルに合わせて働くことが可能になります。

「コアタイム」という1日のうちで必ず勤務する時間を設けたり、フルフレックスにしたり、様々なパターンがあります。企業の方針で決定すると良いでしょう。

長時間労働の是正

ワークライフバランスを意識することは、この長時間労働問題を是正することにもつながるのです。

ただ、長時間労働問題を是正するといっても、時間外労働を禁止したり、制限したりするだけでは根本的な解決になりません。禁止や制限だけでは、どこかにしわ寄せが生じる可能性が高いからです。是正のためには、業務フローを見直して無駄を削減することが重要です。業務フローを見直して根本的な部分から改善していけば、自然と長時間労働も改善されていくでしょう。

ハイブリッドワークの導入

最後におすすめしたいのが、「ハイブリッドワーク 」という働き方です。

昨今、コロナ禍の影響もあり、オフィスワークからリモートワークに移行する動きが加速しました。通勤の時間を省き、場所に捉われないリモートワークは、従業員のワークライフバランスを実現する働き方として注目が高まる一方、コミュニケーションの難しさや孤立によるメンタルヘルスが課題に。

オフィスワークとリモートワークを掛け合わせ、従業員が働く環境を選べるハイブリッドワークは、人と人がつながるオフィスの機能性と、リモートワークのそれぞれのメリットを享受できる働き方といえるでしょう。

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リモートワークにおすすめのサービス「moconavi」

前述したハイブリッドワークを実現するためには、まずリモートワークの環境を整える必要があります。

moconavi(モコナビ)」はそんな従業員のリモートワークを実現するためのサービスです。

moconaviを使えば、会社支給のPCやスマートフォンだけでなく、BYOD(私物端末の業務利用)でも社内のさまざまな業務システムにアクセスすることが可能になります。

端末にデータが残らないため、セキュリティ面でも安心。BYODの場合、一つの端末で個人用と業務用で環境を分けられるため、プライバシーも確保しながら快適に業務が行えます。

ワークライフバランスという言葉の使い方を理解して実現へ!

ワークライフバランスは仕事と生活の両方を充実させるための考え方であり、従業員、企業の双方にとってメリットが多いことが理解いただけたでしょうか。

各企業の現状に合わせて優先的に導入すべきもの、見直すきっかけにしてみてください。

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