PHSサービスの終了による病院や介護施設への影響は?代替できる5つの通信手段
- 投稿日:2021 - 9 - 30
- 更新日:2024 - 3 - 29
PHSとは、“Personal Handy-phone System”の略で、無線通信を用いて移動先で通話を行うシステムおよび機器を指します。現在の携帯電話が普及する以前に広く使用されていました。
事業者が提供する公衆PHSは、2023年3月でサービスが終了となりました。しかし、PHSが広く定着している病院・介護施設では、公衆PHSのサービス終了後も内線としてPHSを使い続けている場合があります。
病院や介護施設の担当者のなかには、「公衆PHSのサービス終了によって病院や介護施設内のPHSへ影響はあるのか」「PHSに替わる通信手段を知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、公衆PHSのサービス終了に関する内容や背景、病院・介護施設でPHSを使い続けることによる影響、PHSに替わる通信手段について解説します。
PHSのサービス終了について
PHSには、公衆PHSと構内PHSの2つがあります。
公衆PHSは、事業者が提供するPHSサービスを契約して利用する方式です。一方の構内PHSは、施設の拠点内に自営のPHSアンテナを設置して、事業者を介さずに内線で通話を行う方式です。
公衆PHSについては、以下の時期にサービスが終了しています。
▼公衆PHSサービスの終了状況
PHSサービスの分類 | 終了時期 |
個人向け | 2021年1月末 |
法人向け | 2023年3月末 |
構内PHSについては現在でも使用可能となっているため、病院や介護施設などでは構内PHSを使い続けているケースがあります。
PHSのサービス終了に至った背景
PHSは、持ち運びができる通信手段として1995年ごろから普及が進みました。しかし、2000年代になると携帯電話が安価に利用できるようになったことで、PHSの契約件数は減少しています。その後はスマートフォンの普及が進み、PHSのサービスを終了することが決定されました。
しかし、医療機関においては強い電波を発する携帯電話の使用が制限されるため、携帯電話が登場したあともPHSが主流となっています。
現在では、4G・5Gの通信規格の登場やWi-Fiの普及によって、高出力で電波干渉の少ない無線通信が可能となっています。
出典:総務省 情報通信統計データベース『携帯・PHSの加入契約数の推移(単純合算)(令和5年9月末時点)』
構内PHSを使い続けることによる病院や介護施設への影響
PHSの電波は微弱なため、電磁波に弱い医療機器への電波干渉を防ぐことが求められる病院や介護施設などで取り入れられています。
厚生労働省の『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き』によると、2020年度のアンケート調査で業務用端末としてPHSを導入している病院は83.9%となっています。
▼病院の業務用端末としてのPHSの導入状況
画像引用元:厚生労働省『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き』
ただし、公衆PHSがサービス終了した現在では、構内PHSを使い続けることで以下のリスクが懸念されます。
出典:厚生労働省『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き』
買い替えやメンテナンスが高額になる
公衆PHSのサービス終了に伴い、PHS端末やアンテナの製造規模が縮小して価格が高騰することが見込まれます。その結果、構内PHSに必要な端末や通信設備を買い替えたり、メンテナンスを行ったりする費用が高額になる可能性があります。
また、故障や不具合が発生した際に、修理・復旧のための設備機器が手に入らなくなるリスクも考えられます。
電波の安定性や音声品質が低下する
構内PHSを使用し続けると、電波の安定性や音声品質が低下するリスクがあります。
構内PHSは、公衆PHSの電波信号と同期することで音声品質を向上させていました。公衆PHSのサービスが終了すれば、電波の同期が安定しなくなり、音声品質が低下する可能性があります。
短期間で新たな通信環境への移行が必要になる可能性がある
古いPHSを構内PHSとして使用している場合には、将来的に新しい通信環境への移行が求められる可能性があります。
PHSの無線設備には、“スプリアス規格″と呼ばれる電波規格が規定されています。スプリアス規格には、2005年の電波法関連法令改正による新規格と、それ以前の旧規格があり、当初は2022年11月30日までの新規格への移行期限が設けられていました。
現在では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を理由に、旧規格から新規格への移行期限は“当分の間”に延長されています。
ただし、将来的に再設定された期限を過ぎた場合、旧スプリアス規格で製造された無線設備の使用は法令違反となります。新たな通信環境の整備には準備や予算が必要になるため、今のうちから代替案への移行を進めておくことが必要です。
出典:総務省『旧スプリアス規格の無線設備への対応について』『新スプリアス規格への移行期限の延長』
構内PHSに替わる5つの通信手段
公衆PHSのサービス終了による影響や、無線設備の新スプリアス規格への移行に対応するには、構内PHSに替わる通信手段を活用して病院・介護施設の通信環境を整備する必要があります。
①スマートフォンのIP無線アプリケーション
IP無線とは、インターネット回線を使って音声通話を行う仕組みです。IP無線アプリケーションをダウンロードすることで、スマートフォンをIP無線機として使用できます。
▼IP無線アプリのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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IP無線アプリケーションを病院・介護施設に導入することで、職員がスマートフォンを使って情報共有を円滑に行えます。
②sXGP
sXGP(エスエックスジーピー)は、構内PHSの後継として規格された通信システムです。施設内に独立したプライベートネットワークを構築することで、公衆回線が使えなくなっても通信環境を確保できるようになります。
▼sXGPのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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病院・介護施設においては、PHSの後継機としての通話だけでなく、ナースコールや電子カルテの連携にsXGPの活用が期待できます。
③クラウドPBX
クラウドPBXは、電話交換機の機能をクラウド上で利用できるサービスです。クラウドPBXを使うと、内線と外線を一つのスマートフォンで利用できるようになり、業務効率の向上につながります。
▼クラウドPBXのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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クラウドPBXを病院・介護施設で活用すると、職員間の情報共有や患者とのやり取りを記録できます。また、営業時間外でも緊急の対応がしやすくなることも期待できます。
なお、内線電話にスマートフォンを活用する方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
④IP-PBX
IP-PBXは、インターネット回線を使用した電話交換機です。
クラウドPBXがクラウド上にサーバを設置するのに対して、IP-PBXは施設内に専用の機器もしくはサーバを設置して運用します。
▼IP-PBXのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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病院・介護施設では、IP-PBXを内線通話に利用するだけでなく、ナースコールと連動させて迅速な対応を実現できます。
⑤FMC
FMCは、固定電話と携帯電話の機能を一つにまとめたサービスです。FMCサーバに固定電話と携帯電話の情報を登録すると、固定電話にかかってきた電話をスマートフォンで受けたり、スマートフォンを内線として使用したりできます。
▼FMCのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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FMCを病院・介護施設に導入すると、サービス事業者の携帯電話網を利用して電話番号を共有できるようになり、内線と外線を区別なく対応することが可能です。
PHSからの切り替えは音声通話・ビデオ通話が可能な『moconavi』がおすすめ
公衆PHSは既にサービスが終了しており、構内PHSについてもその影響を受けることが懸念されます。また、旧スプリアス規格の古いPHSの使用を続けることは、将来的な法令違反のリスクにもつながります。
構内PHSに替わる新たな通信手段をお探しの方は、機能性の高いスマートフォンがおすすめです。通話以外のコミュニケーションが可能なアプリケーションを使えば、業務効率の向上が期待できます。
PHSからスマートフォンへと切り替える際は『moconavi』の活用が有効です。moconaviには、テキスト・音声・ビデオの3つのコミュニケーション手段を使用できる機能が備わっており、状況に応じて効率的な情報共有や伝達を行えます。
また、グループウェアやストレージなどの情報共有に役立つ各種ツールとも連携ができるため、病院・介護施設のIT基盤として活用できます。
なお、人材不足の医療機関を救う院内コミュニケーション手段については、こちらの資料で解説しています。ぜひご活用ください。
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