ゼロトラストセキュリティ導入に関するメリット・デメリットや主要技術を解説
- 投稿日:2025 - 11 - 19
- 更新日:2025 - 11 - 19

近年、サイバー攻撃はウイルス感染やマルウェア拡散といった単純な手口から進化し、組織の脆弱性や人為的な過ちを突く高度かつ巧妙な攻撃が増えています。クラウドサービスの普及やリモートワークの急速な拡大により、「社内ネットワークは安全、社外は危険」とする境界防御モデルはすでに限界を迎えています。代替策として注目を集めるのが、ゼロトラストセキュリティです。
ゼロトラストセキュリティは「何も信用しない」という前提を基盤に、あらゆるアクセスを継続的に検証し監視を行うことで、柔軟かつ強固な防御を実現します。本記事ではゼロトラストセキュリティの基本概念、導入によるメリット・デメリット、必要となる主要技術や国内外で進む最新動向を解説します。
さらに、レコモットが提供するmoconaviを活用した実践的アプローチについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
ゼロトラストセキュリティとは
ゼロトラストセキュリティは、NISTが2020年に策定した「SP 800-207 Zero Trust Architecture」で体系的に整理された概念です。基本思想は「すべての通信やアクセスを潜在的な脅威と見なす」点にあり、従来の境界防御のように内部ネットワークを全面的に信頼する前提を採りません。ユーザーや端末がどの場所から接続しても、認証や端末状態を逐次確認し、不審な挙動を監視します。
一度アクセスを許可した後も無条件に安全と判断せず、振る舞い分析やログ監視を通じてリスクを抑制する点が大きな特徴です。単一の製品導入では成り立たず、認証基盤・端末管理・ネットワーク制御、ログ解析といった複数の技術を統合的に扱う戦略的な枠組みであることを理解する必要があります。
ゼロトラストセキュリティの基本的な考え方や実施時の注意点は、こちらの記事でも解説しています。
ゼロトラストセキュリティ導入のメリット・デメリット
ゼロトラストセキュリティは強固なセキュリティ基盤を提供する一方で、導入にはコストや運用上の課題が伴います。
メリット
ゼロトラストセキュリティ導入によるメリットは、セキュリティ強化や利便性の維持、権限の最小化などが挙げられます。
| メリット | 詳細 |
| セキュリティ強化 | 端末検証やアクセス制御の徹底により、内部不正や情報漏えいを大幅に減らせる |
| 利便性の維持 | クラウドやリモートワークを前提とした設計で、ユーザーは安全に業務へ接続できる |
| 権限の最小化 | 最小権限の原則に基づき、不要な権限を削除してリスクを抑制できる |
| 早期検知と対応 | ログ監視やEDR活用で不審行動を早期に発見し、迅速に対応できる |
| 政策的後押し | 金融庁やIPA、デジタル庁が推奨し、実効性のある施策として位置付けている |
ゼロトラストセキュリティのメリットは、セキュリティ水準の向上です。アクセス制御や端末状態の確認を徹底することで侵入経路を減らし、内部不正や情報漏えいの被害を抑制できます。
クラウドやリモートワークを前提とした設計であるため、利用者は利便性を維持しながら業務システムに接続できます。加えて、最小権限の原則を基盤にした認証管理により不要な権限を排除でき、漏えいリスクの低減が可能です。
さらに、ログ監視やEDRを組み合わせることで不審な挙動を早期に検出し、迅速な対応を可能にします。IPAや金融庁も調査報告で導入を推奨しており、実効性の高い手法として評価されています。
なお、ゼロトラストネットワークの重要性や実現のポイントは、こちらの記事をご覧ください。
デメリット
一方で導入にはコストや運用のハードルも存在します。
| デメリット | 詳細 |
| 導入コスト | MFAやEDRの利用にライセンス費用や運用人件費がかかり、中小企業には負担が大きい |
| 既存システム統合 | レガシーシステムやオンプレミス環境との連携に追加開発が必要で、導入が長期化する恐れがある |
| 運用人材の不足 | 専門知識を備えた人材が必要だが、国内では不足が深刻 |
| 運用の複雑さ | 多層的なアクセス制御や監視のため、設計と運用が複雑になりがち |
| 投資回収の長期化 | 高い効果がある一方、成果が表れるまでに時間を要する |
既存の基幹システムやオンプレ環境と統合する際には追加開発や調整が必要で、プロジェクトの長期化を招く可能性があります。
また、多要素認証やEDRの利用にはライセンスや人件費が発生し、中小企業にとって負担が大きくなります。さらに、ゼロトラスト運用において必須である、専門知識を備えた人材が不足している点も導入における課題です。
経済産業省やIPAの調査でも、専門人材不足がセキュリティ強化やDX推進を阻害していると指摘されています。ゼロトラストは高い効果を発揮する反面、体制整備や投資計画を伴う中長期的な取り組みである点を理解することが重要です。
ゼロトラストセキュリティを支える主要技術
ゼロトラストセキュリティを成立させるには、複数の要素技術を組み合わせた仕組みづくりが欠かせません。特に、ユーザー認証やアクセス制御に加えて、端末やネットワークを守る仕組みが運用の成否を大きく左右します。
以下では、ゼロトラストセキュリティの基盤を支える技術要素について解説します
ID認証とアクセス制御
ゼロトラストセキュリティの中心にあるのは、正当な利用者のみが正当な権限で業務資源にアクセスできる環境の確立です。多要素認証(MFA)やシングルサインオン(SSO)は利便性と安全性の両立に寄与し、最小権限の原則に沿った付与が基本となります。
デジタル庁の指針では、認証強化と動的なアクセス制御が要件として示されていました。ポリシーエンジンがアクセス要求ごとに利用者属性や端末状態、接続環境を評価し、適切な可否を決定する仕組みが推奨されています。金融分野の調査でも、動的アクセス制御はサイバー攻撃の横展開を防ぐ中核的要素と位置付けられています。
従来の「一度認証すれば継続利用可能」という静的な前提を排し、常に再評価を行う仕組みこそがゼロトラストセキュリティに不可欠です。
出典:デジタル庁『ゼロトラストアーキテクチャ 適用方針』/金融庁『ゼロトラストの現状調査と
ゼロトラストとVPN・VDIの違いについては、こちらの記事をご参照ください。
エンドポイント・ネットワーク防御
ID認証と並行して重要になるのが、端末および通信経路の健全性を維持する仕組みです。エンドポイントではEDRによる挙動監視やパッチ適用状況の確認、コンプライアンス違反端末の隔離が求められます。
さらに、アンチウイルスや設定不備検出を組み合わせることで、利用端末の信頼性を高められるでしょう。ネットワーク面では、ZTNAやSDPの利用が拡大しており、VPNに依存しない柔軟なアクセス制御が広まりつつあります。
加えて、SIEMによるログ収集と分析は不可欠です。リアルタイムでアクセス可否を判断する仕組みと同時に、過去の履歴を用いた異常検知や迅速なインシデント対応を可能にします。
端末の健全性検証とネットワーク防御を多層的に組み合わせることにより、ゼロトラストの運用基盤が強固になります。
なお、VPNに依存しないセキュリティ環境の構築方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
国内外の最新動向と規制
ゼロトラストは理論的な概念にとどまらず、各国の政策や規制に組み込まれる段階へ進んでいます。米国では国家戦略として定義され、日本においても政府が行政や産業界に向けて導入の方針を示しました。
以下では、米国と日本におけるゼロトラストの最新動向を比較します。
なお、ゼロトラストと並行して注目度が高まっているSASE(Secure Access Service Edge)も、次世代セキュリティ戦略の一環として位置付けられています。
SASEの概念やゼロトラストとの関係性については、こちらの記事で解説しています。
米国・NIST・政府戦略
米国連邦政府は2021年にゼロトラストを国家的な戦略として採用し、各省庁に対して段階的な導入を求めました。NISTが公開したSP 800-207はゼロトラストの概念を体系的に整理した基準であり、認証基盤の強化やエンドポイントの管理、ネットワークの分離といった要素を明確に示しています。
ホワイトハウスは2024年までに移行を完了させる方針を打ち出し、ゼロトラストセキュリティを国家インフラを守るための柱と位置づけました。こうした政策の進展により、民間分野でも金融や医療、製造など重要インフラ領域にゼロトラストセキュリティ対応が広がり、競争力確保に直結する状況が生まれているのです。
出典:NIST『SP 800-207: Zero Trust Architecture』
日本国内のガイドライン
日本ではデジタル庁が『ゼロトラストアーキテクチャ適用方針』を策定し、行政システムの整備に向けた方向性を示しました。また、政府CIOポータルでは境界防御の限界を指摘し、ゼロトラストに基づく運用を推進する考え方を整理しています。
さらに金融庁では『ゼロトラストの現状調査と事例分析に関する調査報告書』を公開し、企業が直面する課題を具体的に分析しました。人材不足や導入コストの問題が障壁として指摘され、組織的な対応の必要性が明確化されています。
国内においてもゼロトラストセキュリティは理論を超え、実際に政策や規制の中に組み込まれるテーマとして無視できない存在になりました。
出典:デジタル庁『ゼロトラストアーキテクチャ 適用方針』/金融庁『ゼロトラストの現状調査と
事例分析に関する調査報告書』/政府CIOポータル『政府情報システムにおけるゼロトラスト適用に向けた考え方』
moconaviで実現するゼロトラストセキュリティ
ゼロトラストセキュリティは「何も信用せず、常に検証を行う」という考え方を基盤にしています。ただし、この思想を実際のシステムに落とし込むには、多様な技術や運用体制が欠かせません。すべてを社内だけで構築するのは負担が大きいため、ゼロトラストセキュリティを具体的に支えるサービスを活用することが効果的です。
moconaviの特長
moconaviは「端末にデータを残さない」という発想を軸に据え、ゼロトラストセキュリティの導入を後押しします。社員がスマートフォンやPCから業務アプリを利用する際も、情報は端末に保存されずクラウド上で扱われます。そのため、紛失や不正アクセスによる漏えいリスクを大幅に抑えることが可能です。
加えて、多要素認証やシングルサインオンとの組み合わせにも対応しており、ゼロトラストセキュリティで重視される「継続的な検証」と「利便性の両立」を両方実現します。さらに、既存の業務システムやクラウドサービスとの親和性が高く、システム統合に伴う課題を軽減できる点も、企業にとってのメリットといえます。
導入メリット
moconaviを活用すれば、ゼロトラストセキュリティの導入に伴う複雑なシステム構築の負担を軽減しながら、安全で効率的な運用を実現できます。
▼moconaviの導入メリット
| メリット | 詳細 |
| セキュリティ強化 | 端末にデータを残さない設計により、情報漏えいリスクを大幅に抑制 |
| 利便性の向上 | 利用者は普段使っている端末から安全に業務システムへアクセス可能 |
| コスト削減 | 既存システムとの親和性が高く、大規模な追加投資を避けやすい |
| 運用のしやすさ | クラウドサービスとして提供されるため、専門人材が不足する企業でも安心して導入可能 |
moconaviは、ゼロトラストの理念を「実務で使えるセキュリティ基盤」として具現化するソリューションです。セキュリティ強化と利便性の両立を目指す企業にとって、信頼性の高い選択肢となるでしょう。
moconaviの導入を検討するにあたり、自社での活用イメージが知りたい方はこちらの資料もご確認ください。
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